【生月島捕鯨】勇魚取絵詞(5)生月御崎浦 納屋場脊美鯨漕寄圖
『勇魚取絵詞』は、江戸時代後期の肥前国松浦郡生月島での捕鯨の様子を記した書物です。国立国会図書館デジタルコレクションに収蔵されている『勇魚取絵詞(全三巻)』をコツコツ読んでいきたいと思います。絵も文字もとても美しい作品です。
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生月御崎浦 納屋場脊美鯨漕寄圖

鯨を持双舩の間に挟み、濱近く引寄れば、轆轤綱を著て巻よせ、結付たる持双舩を觧放し、前左右に轆轤を用ひ、鯨を自由に振かへ、勝手よき方に向て網を取退、然て、脊美、座頭、兒鯨は、潮吹穴の際より、大骨と丸切の堺迄を量て、丈の長短を定め、長須は頭の端より尾先の三ツ合までを量て、丈幾尋と定る也。

それより魚切親父が指揮を受、本魚切五六人、大切包丁もて作法のごとく切初る也。濱辺に引寄ても、傳間舩より受取て、轆轤綱をつけざるほどは、持双舩を解放さず。

ウヲキリ 脊美鯨
脊美は性質穏なれど、長須などは、健剛ければ、綱に罹れる時も、万■(■は金+守)をば突ずして、直に手形を切、胴縄を通し、綱のまゝ榒て、持双舩に挟、結付、釼切の者、通躰を切、突て殺す也。
※ 「通躰」は、通体。からだ全体のこと。つうたい。

一種、白長須といふをば、例のごとく持双舩に結付、總舩を筏のごとく組合せ、鯨に引れながら、剣もて突殺す也。かく劔切間、静に死たる真似して、持双舩に結附し後、荒狂ひ、綱を破り、かゞす綱を引切、舩を害有。

或は、納屋場に引よせ、死了ぬと思ひて、持双舩を觧放時、ふと逃去こともありされば、古来、納屋場の轆轤綱して繋留ざる中は、捕得つとはいはざるよし也。
かく空死して人を欺るは鯨にも限ず。狐、狸、猿、猫、鼠をはじめ、鳥獣虫魚の生類に多かり。中には、余りにはやく空死して却て、人に捕るゝも有に、鯨魚の持双舩を觧放にて、苦患を忍たるは、こよなしと云べし。
※ 「こよなし」は、この上ない、各段にという意。

※ 参考:『日本科学古典全書 第11巻 第3部(生月御崎納屋場脊美鯨漕寄圖)』(国立国会図書館デジタルコレクション)
筆者注 ● は解読できなかった文字を意味しています。新しく解読できた文字や誤字・誤読に気づいたときは適宜更新します。詳しくは「自己紹介/免責事項」をお読みください。📖
