Pearl Jam特集③アルバムレビュー(8)『Pearl Jam』(2006年) ~ 再起動のロックンロール

2006年発表の8作目『Pearl Jam』。
前作『Riot Act』でポリティカルな姿勢を打ち出したPearl Jam。反ブッシュという立場を明確にし、ブルース・スプリングスティーンが旗頭となったVote For Changeのツアーにも参加。しかし2004年の大統領選挙ではブッシュが再選。エディ・ヴェダーはベッドから起き上がれないほど打ちひしがれたという。
前後のロック・シーンの動きとして、2000年代という新しいディケイドの始まりとともに90sのグランジ/オルタナティヴは一区切り。2001年、The StrokesとThe White Stripesのブレイクを発火点として生きのいいニューカマーが続々登場。俗にいうロックンロール・リバイバルですね。
そんな活況を呈する当時のシーンで、Pearl Jamはなんとなく旧世代みたいなイメージを持たれていた気がします。というか白状しますが、僕自身がそう見てました。嗚呼、90sは遠くになりにけり・・・。
さらに数年経ったある日のこと。ふとFMラジオから聞こえてきた曲にハッと耳を奪われます。脈打つビートに被さるリフ、そして聞き覚えのある声で歌われるソリッドなロックンロール。それはPearl Jamの新曲"World Wide Suicide"でした。
「Pearl Jam、カッコいいな」と素直に思いました。その頃はPearl Jam熱がすっかり冷めきってたんですけど、"World Wide Suicide"がいつになくフレッシュな響きを持っていたので、これは久々に期待してみてもいいかなと。
前作『Riot Act』から4年を経ての仕切り直し。所属レーベルもソニーからJレコーズに移籍して心機一転。満を持しての8作目、表題は潔くセルフタイトルの『Pearl Jam』。
1曲目の"Life Wasted"でいきなりぶっ飛ばされた。まるで新人バンドみたいに前のめりで血の気の多いロックンロール。なんだよ、めちゃくちゃ元気じゃないか!
先行シングル"World Wide Suicide"は序の口に過ぎなかった。その後もハイテンションで遠慮なしに畳みかける。エディの歌もバンドの演奏もとにかく激しく、テンションが高い。こんなアグレッシヴなPearl Jamは一体いつ以来だ?
振り返れば前2作、『Binaural』と『Riot Act』は暗中模索期でした。何事もいろいろ考えすぎると話をややこしくしてしまうもの。それゆえにエネルギーが減じたように感じたのも事実。
転じて今作では余計なことは一切考えてない。シンプル・イズ・ベスト。荒々しくパンキッシュに疾走するバンドの勢い、エディの魂を震わせる絶唱も迫力十分。
前半はアッパーなテンションで快調に飛ばしつつ、要所ではテンポを落とした穏やかなスロウ・チューンで一息つく。そしてアルバム後半は腰を据えた歌をじっくり聴かせるという構成も見事。センチメンタルなんだけど前向きで風通しが良い。
そして僕は完全に目を覚ました。Pearl Jam、やっぱり凄いバンドだと。旧世代のバンドだなんて、とんでもない。こんなフレッシュで躍動感に溢れるロックンロールを前にすれば凡百のガレージ・バンドなぞ裸足で逃げ出す。
実際にThe StrokesやKings Of Leonといった新進気鋭の若手がPearl Jamからの影響を公言していたんですよね。そんな後輩達の声にPearl Jamは見事なアンサーで返してみせました。
復活、というよりは再起動という言葉の方がしっくりくるかもしれない。振り返れば、反ブッシュ活動にしろチケットマスターとの争いにしろ、果敢に戦いを挑んだもののあえなく敗北した。でもそのたびに彼らは立ち上がった。
負けたからって、それで終わりじゃない。その負けがまた俺を強くする。そうしてPearl Jamは何度でも立ち上がった。懲りない連中だと言いたい奴らには言わせておけ。人生で負けることなんていくらでもある。大事なのは、立ち上がれるかどうか。そこで人間の値打ちが問われると、Pearl Jamは僕に教えてくれた気がします。
Pearl Jam "World Wide Suicede"
Pearl Jam "Life Wasted"
Pearl Jam "Gone"
