Pearl Jam特集③アルバムレビュー(10)『Lightning Bolt』(2013年) ~ 年相応も悪くない

2013年発表の10作目『Lightning Bolt』。
2006年の前々作『Pearl Jam』、そして2009年の前作『Backspacer』が評価とセールスの両面で大成功を収め、Pearl Jamここにありを全世界のファンに示してみせました。
その後、疲弊したバンドは一時的にライヴ活動を休止するなどして充電期間をおき、満を持して2013年10月に通算10作目『Lightning Bolt』をリリースしました。
今作のリリースのタイミングで、アメリカの人気司会者ジミー・ファロンのTV番組で一週間に渡って特集が組まれました。彼の地の音楽シーンにおけるPearl Jamのスペシャルな存在感を示すトピックともいえます。
そんな大きな期待を背負った本作は力強いロック・チューン"Getaway"で幕を開けます。もはや王者の風格さえ漂う、しかし守りの入るのではなく果敢に前に出るアグレッシヴさに胸が高鳴る。
さらに1stシングルにもなったパンキッシュな"Mind Your Manners"とテンション高く畳みかける。前半に積極的に仕掛けてペースを掴みにいく展開は前2作と同じ。
しかし、4曲目"Sirens"、ここが本作の最大の山場。ゆったりとしたイントロで始まり、哀愁を湛えた旋律が心に染み入るスケールの大きなバラッド。ここまでドラマチックな曲は過去にありそうでなかった。
ここから中盤~後半戦にかけてテンポをやや落とし、曲そのものの力でじっくり聴かせる戦法に変えてきます。ソングライティングはもはや円熟の域、それをさらに年季の入った歌と演奏で表現するのだから説得力は十分。
聴き終えてみると、意外と落ち着いた内容だなというのが当時の僕の感想。爽快なまでにアッパーだった前2作に比べると、随分アダルトに感じたものです。それゆえ少々物足りなさを覚えたんですが、今改めて聴き直してみると結構印象が変わりました。
当時のメンバーの年齢は50代に差し掛かった頃。実際に衰えを感じていたかはわかりませんが、これまでと同じやり方では続かないと考えたのかもしれない。というのも、歌や演奏のアプローチの方法が変わったように思えたからです。
前作までに比べると微妙に出力が下がったように感じます。エディの歌にしても相変わらず上手いんだけど、かつての絞り出すような絶唱はもうしなくなってる。
ただこれ、決してネガティヴには捉えてないです。当たり前ですが、人間は誰だって年を取る。スピードやパワーといったフィジカルの部分は落ちていくのが必然。だからPearl Jamの5人はそれに頼らない戦い方にシフトしたんじゃないか。
サッカーに例えると、クリスティアーノ・ロナウドは若い頃はドリブラーでしたが、年齢を重ねるうちにプレーエリアを最前線に移し、効率よくゴールを量産するストライカーに変貌した。そして不惑になっても現役バリバリですよね。
本作におけるPearl Jamもまたフィジカルに頼るのをやめ、培った技と経験を生かした試合巧者らしい立ち回りを演じました。こういうのをベテランの味というんでしょう。改めて聴き直すと、なかなか発見の多い秀作です。
Pearl Jam "MInd Your Manners"
Pearl Jam "Sirens"
Pearl Jam "Lightning Bolt"
