Pearl Jam特集③アルバムレビュー(5)『Yield』(1998年) ~ 重荷を捨てて再出発

1998年発表の5作目『Yield』。
アンチコマーシャルを貫いた前作『No Code』で狂乱の時代に自らピリオドを打ったPearl Jam。あの当時、「過度に敏感になってるけど大丈夫かな」と心配したんですけど、どうやら杞憂に終わった模様。それは結果的に彼らが望んだ場所へ導いたようです。
もう背負わされるのはまっぴらだ。全部捨ててしまえ。そうして身軽になった姿は一見すると「退いた」印象さえ受けました。ちょうど90sも後半に差し掛かってロック・シーン全体が次の方向性を模索していたタイミング。
そして5作目となるニュー・アルバム『Yield』は1998年2月にリリースされました。プロデューサーにおなじみのブレンダン・オブライエンを迎えて制作。
本作の1stシングル"Given to Fly”を聴いて、なんだか安堵しました。「ああ、吹っ切れたんだな」と。大空に飛び立とうとするかのような雄大なナンバー。エディの歌も肩の力が抜けてリラックスしてる様子。これは新たな代表曲になると直感的に思いましたね。
アルバム1曲目の"Brain of J"こそアグレッシヴなロックですが、全体を見渡すとファストな曲は少ない。ゆったりとしたミドルテンポが中心で、ちょっぴりビターで落ち着いたトーンが『Yield』という作品の色味。
前作ではフォークをやったりリズムに凝ったりといろいろ実験してましたが、今回は特に変わったことはしてない。どの曲もわりとシンプルというか簡潔な構成。ドラマチックな方向は意図的に避けてるのか、どこか淡々としてます。
初期3作のようなずっしりとした手ごたえはなく、良い意味であっさりした味わい。でもそれが逆に魅力になってます。何も気負ってない、リラックスした雰囲気が心地よい。エディの表情もなんだか柔和になった気がします。
こんな平常心というか、力みのないPearl Jamもなんだか新鮮ですね。かつてグランジの盟主と呼ばれた頃を思えば、この姿はちょっと想像できなかった。そして今作は佳曲が多い。"Wishlist"とか"Low Light"とか、「名曲」とか「アンセム」みたいな大上段に構えたものじゃなくて、さりげなく染みる佳曲。
あと"Do the Evolution"ではひさびさにMVを作りました。といっても全編アニメーションでメンバーは出演してませんけど。また『Yeild』の制作風景を収めた映像作品『Single Video Theory』もリリース。ほとぼりが冷めた頃合いを見計らって、彼らはまたちょっとずつ表に出るようになりました。
背負わされた重荷を地べたに置いたら身軽になった。自由になった彼らはまた旅に出ようとしている。もう誰の指図も受けない、自分たちが行きたい場所へ。アルバムのカバーアートがまさに象徴的な、文字通りの再出発作。
Pearl Jam "Given to Fly"
Pearl Jam "Wishlist"
Pearl Jam "Do the Evolution"
