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Pearl Jam特集③アルバムレビュー(1)『Ten』(1991年) ~ 理解するまで時間を要した代表作


Pearl Jamの記念すべきデビュー・アルバム『Ten』(1991年発表)。全世界で1000万枚以上のセールスを記録し、同年リリースのNirvanaの『Nevermind』と並び称されるグランジ/オルタナティヴ・ロックを代表する名盤。

おそらくファンの間で最も人気のあるアルバムだと思います。なにしろ代表曲しか入ってない。収録された全11曲はいまもなおライヴの定番としてセットリストに組み込まれてます。Pearl Jamを聴くなら何はなくともまずこれ!というのが一般的な認識じゃないでしょうか。

とはいうものの、実は僕が初めて『Ten』を聴いたときの印象は「?」というものでした。なんか違和感があるというか、「えっ、これグランジ?ちょっと違う気がするんだけど・・・」という戸惑い。今にして思えば、最初に聴いたPearl Jamのアルバムが『Ten』だったらそんな違和感を覚えることはなかったのかもしれない。

前項でも書きましたが、僕にとってのPearl Jamの入り口は3作目『Vitalogy』。そこから遡って2作目『Vs.』を聴き、このバンドの魅力にハマったクチ。

『Vs.』と『Vitalogy』のプロデューサーを務めたのは、この時代のロックのサウンドを形作った名匠ブレンダン・オブライエン。まるで目の前で演奏しているかのようなラフでざらついた生々しい音像、そしてパンキッシュな疾走感に魅了されたわけです。

そこから満を持して『Ten』を聴くという、通常とは逆の順番を辿ったのがよくなかったのかも(でもそういう人も少なくない気はするけど)。『Vs.』や『Vitalogy』とは異なる、『Ten』のどこか抑制された整合感のあるサウンド・プロダクション(ちなみにプロデューサーを務めたのはリック・パラシャー)に馴染めなかったんですよね。

あと曲調やアレンジについても後の楽曲とはちょっと違う。ファンキーなギターソロがあったりして、グランジよりはハードロックと呼んだ方がしっくりくる。この頃のエディ・ヴェダーの歌い方も心なしかテストステロン高め。

グランジ・ブームが燃えさかる90sのあの頃、Nirvanaのカート・コバーンが(メディアにさんざん比較されることに嫌気がさして)Pearl Jamをことあるごとにディスってたのは有名な話。その際(どこの媒体のインタビューかは忘れたけど)カートがPearl Jamを「産業ロックとラジオロックと男根ロックのフュージョン」と揶揄した記事を読み、不覚にも「上手い事言うな」と感心してしまいました。たしかに、当時の僕には『Ten』はちょっとマッチョな感じがしたんです。

出世作にして代表作である『Ten』を『Vs.』や『Vitalogy』のように愛せないジレンマ。なんとか良さを理解したくて何度も繰り返し聴きました。でも、そういう音楽の聴き方って楽しくないんですよね。

結局、自分にとって『Ten』はわりと長いこと「微妙に距離のあるアルバム」というポジションのままでした。まぁ無理して好きにならなくてもいいか、と半分諦めた気持ちもあったりして。

そんな印象をガラッと変える出来事がありまして。2009年、リマスターや新ミックス、未発表曲を収録した『Ten』のスペシャル・エディションが発売されたんです。特に注目は新ミックス、手掛けたのはなんとブレンダン・オブライエン。


別名『Ten Redux』と呼ばれるバージョン、聴いて驚きました。オリジナルに比べて格段に音が直接的でダイナミックになり、ライヴ感が飛躍的に向上。スネア一つとってもオブライエンらしい生々しく乾いた響きで、ベースの音も太くなってグルーヴィーでめちゃくちゃカッコいい!

よく考えたら楽曲は申し分ないんですよね。ただ聴き手の耳と音の間に見えないフィルターを一枚挟んだようなモヤモヤしたプロダクションのせいで本来のダイナミズムが阻害されてるように感じてただけの話。

さっき曲調やアレンジ、エディの歌い方に文句つけちゃいましたが、『Ten Redux』の聴後の感想としてはどれも完璧に思えた。というか、最初からこのバージョンだったら一発で好きになれた気がする。

ことほどさように『Ten Redux』のおかげで(だいぶ時間はかかりましたが)この名盤の真の魅力をようやく理解することができました。
上にも書きましたけど、収録曲はすべて代表曲といっても過言じゃない。"Even Flow"や"Alive"、"Black"、"Jeremy"といった名曲の数々をぜひ食らってほしいです。個人的にはエディが亡き父に捧げた"Release"が大好きです。

あとさんざん文句を書いておいてなんですが、リック・パラシャーが手掛けたオリジナルの『Ten』も今は大好きなんですよね。あのもっさりした音もひとつの味と思えるようになりました。最後に余談ですが、日本盤CDにはシークレット・トラックとしてThe Beatlesの"I've Got a Feeling"のカヴァーが収録されてまして、これが恐ろしくカッコいいので機会があれば聴いてみてください。

Pearl Jam "Even Flow"


Pearl Jam "Alive"


Pearl Jam "Jeremy"

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