Pearl Jam特集③アルバムレビュー(2)『Vs.』(1993年) ~ 出会い頭のインパクトとわかりやすさ

前作『Ten』の大ヒットで一気に時代の寵児に上りつめたPearl Jam。1993年に発表した2作目『Vs.』は上昇気流に乗るバンドの破竹の勢い、その最大瞬間風速を捉えた傑作。
本作『Vs.』の有名な逸話として、アメリカ国内で発売第1週目に95万枚を売り上げて当時の最高記録を樹立しました。ものすごい勢いで売れるために「レジクラッシャー」という異名をつけられたほど。
今作のプロデューサーを務めたのは名匠ブレンダン・オブライエン。本作以降、彼とは長い付き合いになります。オブライエンの仕事の特徴である臨場感たっぷりのドライで生々しい音像、つまり本作で示したサウンドが90sのロックの一つの指標となりました。
進む方向性自体は前作『Ten』からの延長線上にありますが、とにかくこの頃のバンドはやることなすこと全てが前向きに転がるという確変状態。オブライエンの助力を得て当時のバンドの持てる力が限界以上まで引き出され、その熱量の凄まじさにやられること請け合い。
アルバムの1曲目"Go"から強烈な幕開け。まるで竜巻に巻き込まれたかのような怒涛のエネルギーに圧倒される。続く2曲目"Animal"、The Whoの曲の邦題じゃないが、これぞまさに不死身のハードロック。この問答無用の冒頭2曲の時点でこのアルバムが普通じゃないことがわかるはず。
アルバム全体を通じて、ソングライティングの成長には目を見張るものがあります。曲毎の静と動の振れ幅が大きくなり、表現のバリエーションもグッと広がりました。特に「静」の部分でいうと"Daughter"や"Elderly Woman Behind the Counter in a Small Town"といった前作にはなかったアコースティックな曲が存在感を放っています。
演奏のテンションは終始ずっと高い状態をキープ。そのうえで時にはトライバルなリズムを刻んだり、地に足つけたアーシーなロックで心地よい風を運んだり、ワウをかました血管ぶち切れパンクで阿鼻叫喚したりと新しい引き出しを次々に開ける大盤振る舞い。
本作の白眉は"Rearviewmirror"。イントロから徐々にギアを一速ずつ上げていき、とうとう最高速に突入して溜め込んだエネルギーが一気に吐き出される瞬間のカタルシスは筆舌に尽くしがたい。喉を震わせて絶唱するエディの鬼気迫るヴォーカルは圧巻。
といった具合にとにかく聴きどころ満載なわけですが、『Vs.』はPearl Jamのディスコグラフィで最もインパクトが強い、言い換えればわかりやすいアルバムだと思います。ゆえにPearl Jamをよく知らない方にとっての入門用にも最適(個人的には『Ten』よりもこっちだと思います)。とにかく曲がわかりやすいし、歌や演奏のテンションもべらぼうに高い。理屈抜きに楽しめる一枚です。
Pearl Jam "Go"
Pearl Jam "Daughter"
Pearl Jam "Rearviewmirror"
