大人になった私の「待ち遠しい」を連れてきた、1枚のタマゴサンド
私の待ち遠しい感情は、普段どこにいるのだろう。
仕事や日々の生活をこなすのに精一杯。束の間のコーヒータイムで、ホッと落ち着く時間を捻出するのがやっとだ。気がつけば、同じような毎日を過ごしていて「私の人生って、なんて平凡なんだろう」と頭を抱える。
毎日が決してつまらないわけではない。楽しくないわけではない。大人になって「待ち遠しい」という気持ちが文字通り「遠い」存在となっている。
「待ち遠しいな~!」というワクワクした感情が、まるで親戚のおじさんのように遠い存在なのだ。言うなれば、お年玉を貰う年齢ではなくなったから訪れることも無くなり、ますます会わなくなってしまった、そんな親戚のおじさん。
思えば、子供の頃は「待ち遠しいおじさん」が身近にいた。なんか毎日の中に「待ち遠しい」気持ちがあった。私は学校の給食を思い出す。
「この日、カレーだよ!」
「この日はデザートでプリンがある!」
月の始めに配られる給食の献立表を見て、何度胸を躍らせただろうか。絶対お代わりしてやる!と食い意地の張っていた私は、給食のカレーやプリンを食べるために学校に通っていたとも言える。
給食の後の長い休み時間、音楽の授業、プール開き、運動会、遠足、遠足の前の日に買う300円分のお菓子、書きだせばキリがない「待ち遠しい」と待ちわびた時間。子供の頃はとにかく全部が待ち遠しかった。
周囲の大人たちによって用意されていた「待ち遠しい」という時間は、もうない。大人になった今「待ち遠しい」時間を用意するのは、自分自身だ。冷蔵庫の中にケーキを忍ばせるのも自分。旅行の計画を立てるのも自分。子供の時のように「待ち遠しいおじさん」は、すぐ会える距離にはいない。
しかし、忘れ去られたおじさんは、ある日突然やってくる。
それは、夕食後、いつものように何気なくスレッズを下へ下へスクロールしていた時に起こった。なんと「待ち遠しいおじさん」が、急に私の心のドアをノックしたのだ。
!!!
私の指は止まり、1枚のイラストに釘付けとなったのである。それは、イラストレーターのキイロコさんの手により、リアルに描かれたタマゴサンドのイラストだった。厚切りトーストにたっぷりと挟まれた、とろっとろのマヨタマが2種類。それはそれはもう美味しそうで美味しそうで私の胃を刺激したのだ。
見てくれ、この夢のようなタマゴサンドを。(掲載の許可は頂いています)
なんとも温かみのあるおいしそうなタマゴサンドだろう。いや、食べなくても分かる。おいしいやつやん。
私は、食い入るように2種類のタマゴサンドを見比べた。いや、私の視線はもうタマゴサンドに食い込んでいた。そして思った。「食べたい」と。しかし、もう夕飯を食べ終えたばかりで、今から作るのは正直めんどくさい。だるい。
「そうだ、明日のランチでタマゴサンドを食べよう!!」
グーにした右手を、パーにした左手にポーンと乗せた。
タイミングよく、次の日は休日で予定もない。卵ある。薄切りだけど食パンある。よし、朝からマヨネーズたっぷりのマヨタマを作ろう。レタスもある。イラストにはないけど、シャキシャキレタスを一緒に挟もう。
あれ?
私、明日のランチ、待ち遠しいと思っている…?
私はキイロコさんへ「明日のお昼ご飯は絶対タマゴサンドにします。(カリとろ本格派がタイプです)」とコメントを残した。
その時から、タマゴサンドで頭がいっぱいになった。寝るときも、起きたときも、朝食の支度をしているときも、片隅にはタマゴサンド。なんなら朝食の支度をしながら卵4個ゆでていた。
朝食を食べ終えた私は、食後のコーヒーを後回しにして、マヨネーズたっぷりで、辛子が少しだけピリッときいたマヨタマを作っていた。朝食後で満腹なはずなのに、タマゴサンドの存在は大きくなっていた。まだ我慢である。
ランチ、待ち遠しい…。
午前中のやるべきことを終えた私は、さっそくタマゴサンド作りにとりかかった。具は完成している。あとは食パンにたっぷりのシャキシャキレタスとマヨタマをたっぷり乗せて、食パンで蓋をするだけ。
もうキッチンで立ったまま食べたい。
待ちに待ったタマゴサンド。私は大きく口を開け、ガブッと一口かじる。うんま~~~~~~!!!!!なんだこれ………。
なんだこれ、なんだこれ!!!おいしい!!!おいしすぎる!!!いつものタマゴサンドなのに、おいしさがいつも以上なのだ。
久しぶりに再会した待ち遠しいおじさんは、私のために一肌脱いでくれていたのだ。それは、「待ち遠しい」と思うだけで生まれるおいしくなる最高のスパイス。私のために特別にくれた「隠し味」だった。
タマゴサンドを食べるために用意するのも作るのも自分。だけど、この「待ち遠しい」という気持ちをくれたのは、私じゃない。画面越しでしか知らないイラストレーターさんが、疎遠になっていた「待ち遠しいおじさん」の存在を思い出させてくれたのである。
大人になると、おじさんは向こうからはやってこない。でも、誰かの素敵な発信に心を動かされたり、自分で小さな楽しみを仕込んだりすれば、おじさんは案外すぐそばまで遊びに来てくれるのだ。
さて、明日は何を「待ち遠しい」にしようか。それだけ少し心が踊った。
疎遠になっていた「待ち遠しいおじさん」を連れてきてくれた、キイロコさんのイラストに感謝!!

追記(2026/4/23)
キイロコさんのインスタ&スレッズで、素敵に紹介していただきました!
なんと、なんと、キイロコさんが桃もめんのエッセイを紹介してくれました。温かみのあるイラストだけではなく、文章からもキイロコさんの優しさが伝わってきます。
思いもよらず「コラボ」にしてくださったキイロコさんの行動力に、桃もめん、感動いたしました。
ぜひ、インスタやスレッズでキイロコさんのリアルで温かみのあるイラストの数々をご覧いただきたい。お腹すく。
いいなと思ったら応援しよう!
いただいたチップは、次の記事を書くための体験と本に使わせていただきます! 応援ありがとうございます。