発達障害や知的障害の受刑者を集めた刑務所で講演させてもらって、感じたこと。
4月24日(金)、市原青年矯正センターで講演をさせていただきました。
市原青年矯正センターは、知的障害や発達障害などの特性を伴う、26歳未満の受刑者を対象とした刑務所です。
社会に戻った後にお金で困らないために大切なことを、私自身の実体験や、日々ファイナンシャルプランナーとして相談を受けている中で感じていることをもとに、お話しさせていただきました。
今回のきっかけは、私の著書
『発達障害かもだけど、お金のことちゃんとしたい人の本』
を読んでくださった、刑務所の支援員の方との出会いでした。
発達障害や知的障害のある方が、出所した後にお金とどう付き合っていけばいいのか。どう学べば、社会の中で再び困らずに暮らしていけるのか。
その方法を模索している中で、私の本を見つけてくださったとのことでした。
打ち合わせの中で言われたのは、
「お金でうまくいかなかった過去のある岩切さんだからこそ、話せることや伝えられることがあると思います」
ということでした。
お金の話は、知識だけの話ではないと日々感じています。
「なぜ自分はお金を使ってしまうのか」
「なぜ目の前のお金に飛びついてしまうのか」
「なぜ困った時に、危ない選択肢に手を伸ばしてしまうのか」
そこに向き合わなければ、本当の意味ではお金と付き合えるようになりません。
私自身も、お金でたくさん失敗してきました。
衝動的に使ってしまうことや、見栄でお金を使ったこともありました。節約なんてカッコ悪いと勘違いをしてお金を使っていました。
その結果が消費者金融200万円、リボ払い100万円、奨学金滞納で裁判所への出頭でした。
だからこそ今回の講演は、金融教育というよりは「お金で人生を崩さないために、どんな風にお金と付き合うか」という話にしたいと思っていました。
施設の方のお話では、収容されている方は、暴力事件よりも、詐欺の受け子やかけ子、薬物に関することで捕まった方が多いとのことでした。
被害者がいるので、犯罪は許されるものではありません。
ただ一方で、お金が回らなくなった結果、危ない話に手を出してしまったのも事実です。目の前のお金に困って、判断力が狭くなってしまった結果の人もいます。
だからこそ、お金の教育は本当に大切だと感じています。
貧すれば鈍するぐらいであればまだよくて、貧すれば法も犯すレベルになってしまうと、取り返しがつきません。
刑務所での講演
今回、人生で初めて刑務所の中に入りました。
正直、緊張感がすごかったです。
入り口では指紋認証。
どこのフロア、どこの棟に入るにも、厳重な鍵。
外部の人間である私は金属探知機を通ります。
施設内では刑務官の方が見回りをしています。
周囲にはフェンスがあります。(市原青年矯正センターは、元少年院の場所ということもあり、いわゆるコンクリートの高い塀ではないそうです。)
閉塞感がものすごくありました。
空気が重く感じました。
他の音がない空間なので、一つひとつの扉が閉まる音や鍵がかかる音が響きます。雑踏の真逆です。
ほんの少し施設の中に入っただけでも、勝手に緊張してしまってかなり消耗しました。
講演会場の体育館に、受刑者の方々が行進して入ってきたのも印象的でした。刑務官の方の掛け声と行進。テレビで見るのとは緊張感が全く異なりました。
普段、私はセミナーや講演でいろいろな場所に行かせてもらっていますが、経験したことのない種類の緊張感でした。
講演では、私自身の失敗談も交えながら話しました。
お金を使ってしまうのは、意志が弱いからだけではないこと、気合いだけでなく仕組みで守る必要があること。
身の丈に合った暮らしをすること、困った時に危ない話に乗らずに相談できる先を持つこと。他人に奢りがちな人は、そのお金が居場所代になっていないか、なども伝えました。
ありがたいことに、講演中は笑いもありメモもたくさん取ってくれていました。聞く姿勢も、とても真剣でした。
ただ、講演後の時間で強烈な違和感を覚えたのです。
違和感の正体
講演後の質問会でのことです。
有難いことに、たくさん質問の手があがりました。
ただ、頂いた質問の内容が、思っていたものとかなり違っていて、衝撃を受けました。
今回私が話したのは、主にお金の管理の話でした。
自分の欲望や衝動をどうカバーするか。日々のお金をどう守るか。危ない選択肢に近づかないための自衛としての知識や考え方など。
NISAの二の字も話していません。なぜなら、出所したらまずは生活を整えるのが最優先だからです。
ただ、実際にもらった質問は、
「日本経済は今後どうなりますか?」
「これから世界的に伸びるセクターは何ですか?」
「金は上がると思いますか?」
「配当投資はどこの株を買えばいいですか?」
「おススメの投資法は?」
といった内容でした。
私はファイナンシャルプランナーで自分も資産運用しているので、ある程度は経済の話もできます。
投資の考え方や経済の見方、金の価格や配当投資についても、専門家として答えられる範囲で話しました。
ただ、実際かなり違和感はありました。
なぜなら、今回の場にいる人たちの中には、お金がうまく回らなくなり、詐欺に関わってしまった人もいると聞いていたからです。
それなのに関心が向かう先が、
「どう管理するか」
「どう生活を立て直すか」
「どう危ない話から距離を取るか」
ではなく、
「どう増やすか」
「何に投資すればいいか」
「どこにチャンスがあるか」
だったのでした。
誤解してほしくないのですが、受刑者の方が悪いとか、投資が悪いと言いたいわけではありません。株でも、投資信託でも、金でも、暗号資産でも、自分で理解してリスクを取れる人はやればいいと思いますし、その大切さも日々お客様にお伝えしています。
ただ、順番はあります。
お金を増やす前にまず身の丈に合った生活、投資の前に投資のためのお金を準備しなければなりません。
若いうちは特に、自分の技術に投資した方が配当よりもリターンが大きくなる可能性が高いです。
強い危機感を持ちました。
学校教育でも、金融教育が少しずつ広がっています。
でも、「投資を教えること」ばかりが金融教育ではないんじゃないか。
その前に教えるべきことがあるんじゃないかと。
例えば、
給料が入ったら、まず何に使うのか。
無理のない家賃をどう考えるか。
固定費はどう削減するか。
借金をしたらどうなるのか。
税金や年金はどういう仕組みなのか?
クレジットカードはどんな風に使っていくか。
誘われた副業や投資話の疑い方は?
困った時に、どこへ相談すればいいのか。
欲しいものがある時に、どう一呼吸置けばいいのか。
自分の衝動や特性と、どう付き合えばいいのか。
こういった「守りのお金の教育」が、教育現場で話されていないと感じました。
SNSでも流れてくるのは、「どう稼ぐか」の話ばかりです。確かに稼ぐ話は楽しいですし、僕も好きです。でもそれは、最低限のことができてから。
最低限のことができる前提で金融教育を進めている歪みが、特性のある人にしわ寄せとしていってるのではないか。
(当たり前にできる人にとっては、これらのことがつまらない話なのも分かります。)
もっと生活に近いお金の教育が必要だと思いました。
拙著「発達障害かもだけど、お金のことちゃんとしたい人の本」がニッチな内容ながら1.5万部売れているのも、もしかしたら、これまでお金のことが「当たり前」(世間一般の当たり前)にできない人へのアプローチが、きちんとされていなかったからではないか、と推測しています。
講演会を通して
質問会の最後に、私はそのことを少し話させてもらいました。
「欲望があるのは悪いことではない。欲望と上手に付き合う方法を知ることが大切。
そして自分の身の丈に合った生活をするということは、決してカッコ悪いことではなくて、素敵なことという価値観を持ってほしい。」
と伝えました。
今回の講演を通じて、私自身も大きな宿題をもらった気がしています。
これからも少年院でもお話しする機会をいただけるかもしれないとのことでした。
自分の仕事がもっと関われる余地があるのではないかと感じました。
お金の教育は、将来お金持ちになるためだけのものではありません。(なれたら嬉しいけど!)
幸せに暮らすための知恵です。
そして、誰かを被害者にしないためのものでもあると感じました。
また最後になりましたが、今回、刑務官の方々の仕事にも本当に圧倒されました。
受刑者の方が社会に戻った時に、ちゃんと暮らせるように、再犯を予防して市民の安全を守るために、この緊張感と閉塞感の中で、泊まり込みで仕事をされている。
本当にすごい仕事だと思いました。私は数時間、施設の中に入っただけでかなり消耗したので、なおさらをれを感じました。
頭が下がります。
今回の機会をいただけたことに、心から感謝しています。
最後に
今回の刑務所での講演は、私としても非常に学びが深かったです。
お金の話は、ちゃんとできる人だけのものでもありません。
むしろ、失敗した人、困っている人、人生を立て直したい人にこそ必要だと思いました。
私自身、お金でうまくいかなかった過去があります。
だからこそ、話せることがあると信じています。
これからも「お金を増やす話」だけではなく、「お金で人生を壊さない話」をしていきたいと思います。
市原青年矯正センターの皆さま、貴重な機会をありがとうございました。
そして、現場で日々働かれている刑務官の方々、支援員の方々に、心から敬意を表します。
いいなと思ったら応援しよう!
最後まで読んでいただきありがとうございます!
サポート頂いたお金は本の購入に充てます。
分かりやすくまとめていきます!