【原油を日本に優先販売:INPEX方針】実態を試算してみた
ホルムズ封鎖を受け、INPEXが中央アジア2油田の原油を日本企業に優先販売する方針を表明した。「中東依存9割からの多角化」と報じられているが、具体的に何バレルの話なのか。
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— Yahoo!ニュース (@YahooNewsTopics) March 28, 2026
INPEXの持分は日量約6.5万バレル
INPEXが権益を持つのは以下の2油田だ。
カシャガン油田(カザフスタン):生産能力日量43万バレル、INPEX権益7.56% → 持分約3.2万バレル
ACG油田(アゼルバイジャン):生産能力日量35万バレル、INPEX権益9.31% → 持分約3.3万バレル
合計で日量約6.5万バレル。これがINPEX単体で動かせる理論上の上限だ。
「優先」の中身
両油田の原油はこれまで主に欧州向けに販売されてきた。長期契約分は簡単には動かせないため、日本に回せるのはスポット契約の一部になる。
また、輸送面でも制約がある。欧州向けタンカーの動線はジェイハン港から地中海を西へ向かうルートだ。日本はその逆方向にあり、出発時点から欧州向けとは完全に別の船・別の契約で動かす必要がある。「スポット分を振り向ける」という表現が示唆する「同じ流れの中で配分を変える」話ではなく、日本向けには独立した輸送オペレーションを組む必要がある。INPEXはこれを「最大限検討した」としており、実現に向けた意思は示されている。
試算
日本の原油需要は日量232万バレル(2024年度)これを分母に置くと:
シナリオ日量対輸入量比持分 6.5万バレル
スポット50%転用(楽観的)3.2万バレル 約1.4%
スポット30%転用(現実的)2万バレル 約0.9%
楽観シナリオでも2%が天井。現実的には1%前後に収まる可能性が高い。量としては小さいが、中東一択だった調達先に別の選択肢が加わること自体には意味がある。
輸送ルートの問題
日本向けには、スエズ運河を経由する紅海ルートか、アフリカ最南端を回る喜望峰ルートのいずれかを取ることになる。
紅海ルートはバブ・エル・マンデブ海峡を通過する。フーシ派はこの海域で2年間に180隻近くの商船を攻撃しており、2026年初め時点でスエズ運河の通航量は2023年比で約6割減。つまり本来は輸出できた量の半分以下にされている。 このフーシ派に攻撃された時点で日本に来るはずだった石油は絶たれる。
喜望峰ルートを選べばフーシ派リスクは回避できるが、ジェイハンから日本まで推定70〜80日規模になる。 用船料は1日あたり数万ドル規模であり、日数分のコストが調達価格に上乗せされる。安全を取るとコストが跳ね上がる。
まとめ
今回の発表は、既存権益の販売先を日本向けに組み直すという実のある施策だ。危機時に頼れる調達先を一つ持つことの価値はある。
ただし、日本に届くのは最短でも4ヶ月後であり、日本の需要に対して約1〜2%でしかない点は留意するべき。
輸送コスト・ルートリスク・物流の再設計といった課題も残る。 数量・価格・契約形態の具体的な条件が出てくるにつれ、この施策の実力が見えてくるだろう。
※日本の原油輸入量:2024年度財務省統計「日量232万バレル」 石油製品の輸入も含めたら「日量300万バレル」になりますが、IPEXは原油の輸送船なので今回は省かせていただきました。

