見出し画像

【日記】片付けとは、汚れゆく様

夏。


やかましい蝉の声
平和ボケした鳥の声。
ウォンウォンと一定のリズムを刻む扇風機。

汗をかきかき、縁側に座しキセルをくゆらせ空を見る。

天高く煙立ち昇る。なんてのはうそだ。
暑さに混じって目の前でモワモワ。

余計に暑さが倍増している気になってくる。


ふと、振り返って奥間を覗く。
散らかったわら半紙。机のうえに放り投げられたペン。食べかけのポテチ。梅純。お茶。数えだしたらキリがない自堕落の間。


キセルの火種をポンと捨て、着物をたくしあげる。

どうせ汗で湿ったこの体。今さらどうなろうと変わらないじゃない。


床に落ちてるわら半紙を拾い上げる。書いてるのはぐるぐる線と、書きかけで捨てた言葉たち。
何枚も何枚も拾い上げてはまた拾い。

机に座してるお菓子たち袋にまとめて、たまにひとつまみ。

ペン立てにペンをしまって、襖を開ける。

ウォンウォンと一定のリズムで回る扇風機を止め、山の風を畳に吸わせる。



はたきを手に取る。上から下にパタパタと羽根が舞う。埃がまるで鱗粉のように輝いて舞っている。なんて物書きのような表現で濁しているが、ようはゴミだ。

パタパタと畳を叩き、箒で目に沿って箒を払えば、光の筋の中に埃が舞い上がる。蝉の声に紛れて、パタパタという音だけが妙に響く。

書きかけの言葉たちを一枚ずつ検分する手間はもうしない。どうせ大したことは書いてない。
大事な事を書いてあったとするならば、いずれまた新しいわら半紙に紡がれるはずだから。

まあいい、それは明日の自分に任せよう。


雑巾を握って机を拭う。
何度も同じところを往復して、やっとピカピカと輝きを増す一枚板。
本来の姿を取り戻したそれは、感謝の言葉ではなく、きっと恨みつらみを吐き捨てていることだろう。

汗が一滴、畳に落ちる。
きれいになっていく部屋を見ながら、ふと思う。
この部屋がきれいなのは、今だけだと。




気付けば汗はダラダラ。

縁側に座し、キセルを吸ってる。
着物は汚れはだけているが、蝉の声と煙の前では遠慮はいらない。さて、風呂でも入ってさっぱりするか、畑に行って無駄に汚してみようか。


振り返って奥間を眺める。


何もない床。
綺麗に整った机。
風通しのよい襖。

夜にはわら半紙が床を染め上げているだろう。

そういえばあのペンどこにしまったっけかな。


片付けとは

心の掃除である。


片付けとは

元の姿に戻す行為である。


片付けとは

結局使い勝手が悪くて、汚れていく様である。



口から煙を吐き出しながら



天高く昇れ


紫煙よ


いいなと思ったら応援しよう!

佐伯由羅(伏見もなか) とても、とても嬉しく思います。