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妄想:手袋っぽいものを買いに

今回の記事について、新美南吉先生の作品がお好きな方には、戸惑わせてしまう部分もあるかもしれませんが、落語のようなものと思って、気楽に楽しんでいただけたら幸いです。

実際、落語調に話してみたのはこちら💁


寝る前に、「手袋を買いに」を4歳の娘に聞かせたら、
「次は、ゾウさんが手袋を買いに行く話ね!」
と言われた。

ゾウ🐘…?
雪山に、ゾウがいるのか…?
それ、むしろマンモス🦣。
きっと、手袋いらないと思う。

てか、合う手袋がないと思う。
手袋屋さんも腰抜かすと思う。

「えー、ゾウさんがいい!ゾウさんがいい!ゾウさんがいい!」

狐をとりあえず、象🐘に置き換えて、お話ししたら満足して寝てくれました。

でも、私の頭の中では妄想が止まらず…


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ここは、とある町の帽子屋さん。
雪の降り積もる夜、トントンと戸が叩かれて、
「こんばんは」
と、子供の声。
帽子屋さんは、こんな時分にいったいどこの子かと訝しがりながら、戸を一寸ほどゴロリと開けました。
「このお手々にちょうどいい手袋下さい」
そう言って戸の隙から差し込まれたのは、狐の手でした。
帽子屋さんは、おやおやと思いました。これはきっとこの葉で買いに来たんだなと思いました。そこで、
「先にお金を下さい」と言いました。帽子屋さんは狐の出した白銅貨を人差指のさきにのっけて、カチ合せて見ると、チンチンとよい音がしましたので、これは木の葉じゃない、ほんとのお金だと思いましたので、棚から子供用の毛糸の手袋をとり出して来て子狐の手に持たせてやりました。
子狐は、お礼を言って帰っていきました。


しばらくすると、今度は、ガリガリと戸を引っ掻く音がしました。
「こんばんは」
と、大きな声。
帽子屋さんは、また狐の子が来たかと、戸をゴロゴロと開け、ハッとしてすぐ閉めようとしました。ところが、締め切る前にガッと戸が押さえられ、一本の手が捻り込まれたのです。
「このお手々にちょうどいい手袋下さい」
帽子屋さんはガタガタ震えました。
戸の隙から差し込まれたのは、恐ろしい虎の手でした。
「これ、お金。」
と白銅貨を帽子屋さんに渡そうとします。
ほんとのお金だとしても、お金を受け取る前に命を取られては大変だと思いましたので、帽子屋さんは戸がこれ以上開かないようにつっかえ棒をして、急いで棚から安全手袋を取り出しました。これは、本来、衝撃や指先を挟む危険性がある作業の時、事故対策に使われるもので、金属製の指先保護パーツが内蔵されています。帽子屋さんは、虎の鋭い爪を防ぐのにピッタリだと考えたのです。
虎は、お礼を言って帰っていきました。


またしばらくすると、今度は、パチパチと砂粒でも戸にぶつかるような、小さな音がしました。
「こんばんは、こんばんは」
と、これまたとても小さな声。
帽子屋さんは、念の為に用心しながら、わずかに戸に隙間を作って覗いてみました。
「このお手々にちょうどいい手袋下さい」
何もいないぞ、と思いきや、戸の下の方に小さな塊。隙からチョロっと差し込まれたのは、リスの手でした。
「あのね。これね。ドングリ。」
頬袋に入れていたツヤツヤしたドングリを、戸の隙間から押し込むと、つぶらな瞳で帽子屋さんを見るのです。
帽子屋さんは困ってしまいました。こんな小さな可愛いおててに合う手袋なんか、店にありません。考えた末、帽子屋さんはポケットに手を突っ込みました。取り出したのは、スマホ用指サック。指先の乾燥・手汗による誤タップを防ぎ、快適にスマホを操作できる優れ物で、帽子屋さんが店番中のスマホゲームで愛用している物でした。
子リスは、お礼を言って帰っていきました。


そのまたしばらくすると、今度は、戸が叩かれる前からズモッ、ズモッ…と重い何かがゆっくりと雪を踏む音。そして、ドン、ドンと戸が破れそうなくらいに叩かれました。
「こんばんは」
と、ラッパのような声。
帽子屋さんはヒヤヒヤしながら戸に手をかけました。すると、さっき叩かれた衝撃のせいか、バタンと戸は外れ落ちてしまいました。
そこには、戸口を塞ぐ程の大きな体。長い鼻の先に金貨をつまんだ象が立っていました。
「このお手々にちょうどいい手袋下さい」
帽子屋さんは、面食らいながら象の手を見ました。こんな大きな手にちょうど良い手袋なんて、ありません。しかし、ここは帽子屋。手袋よりは、帽子の方がたくさんありましたから、毛糸の帽子を2つ取り出してきて、持たせてやりました。
象は、お礼を言って帰っていきました。


さて、帽子屋さんは、外れた戸を入れ直し、頭を抱えておりました。
狐、虎、リス、そして象。
狐やリスは割に身近な存在でしたし、山には虎もいると聞いてはいました。しかし、象なんて、はるか遠い世界の生き物です。

金貨だって、一体どこの金貨なのか。
帽子屋さんは、象の置いて行った金貨を手に取ってみました。するとそれは駄菓子屋でよく見るコインチョコレートだったのです。

トントン、ゴロリ。と、今度は勝手に戸を開けて、女性が一人、入ってきました。
「ウチの坊やにちょうど良い手袋、いただけないかしら?…どうしたの?狐に摘まれたような顔をして。」
「奥さん、は、人間だよな?」
「当たり前じゃないの。あら、チョコレートもあるの?じゃ、それも下さいな。」
帽子屋さんはそっと帳面を閉じて値段を告げ、ふと思い出して聞きました。
「あれ?手袋は買ったばかりじゃなかったですか?」
「それがねぇ、木の上にかけてた古い巣箱を手袋つけたままで直してたらしくて、あちこち引っ掛けてボロボロにしちゃったのよ。…あら?物価高ね〜、まあ、いいわ。悪いわね、夜分に。お店開いてるみたいだったから。」
「ああ、いえ、今日は色々とお客がありまして。」
女性を見送って、帽子屋さんはゴロゴロっと戸を閉めてつぶやきました。
「ほんとうに人間はいいものだ。ほんとうに人間はいいものだ。」

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結局、象はいったいどこから来たのか。
そしてこれは、いったいなんのはなしですか。



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