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どこかにマイル、ひとりで参る

やっぱり、変だ。

このロッジに感じた違和感は、時を追うごとに確信に変わっていきました。

独特の訛りで標準語を話す従業員さんは、親切でにこやかだし、部屋はキレイに掃除されているし、ご飯もとても美味しかったし、お風呂も最高の温泉でした。

それなのに、なぜか、感じる違和感。


2年前の2月、僕はひとり旅をしました。1年に1回くらいはひとり旅への背中を押してくれる(許してくれる、とも言う)家族のおかげで、ずっと試したかった「どこかにマイル」。

JALのマイルを使ったサービスの1つで、旅行先が直前に決まるというものでした。日程や出発地などの条件を指定すると、4つの都市が提示されて、申込んで数日、通知が来ました。

候補は、高松、秋田、広島、富山だったと思いますが、メールには「秋田」の文字が。雪深い季節、ドライブがてらの移動はできそうにありませんでした。

慌てて「るるぶ」を買い、パラパラと眺めていると、秘湯と名高い温泉地を発見したのです。その名も、乳頭温泉郷。

空港から新幹線に乗り1時間、そこからバスでさらに山の中に1時間。真っ白な景色と、ありえない高さに積もった雪が、秘湯感を昂ぶらせました。

最奥の湯、蟹場温泉(がにば、と発音)につくと、お風呂は4時までとのことで、離れの浴場には間に合わない時間でした。取り急ぎ、入れるところに走り込んで、乳白色のお湯に浸かりました。

思いつきだけど、こんなに奥まで来られて、温泉に浸かれてよかったなぁー。しあわせー。

事前に予約していた宿は、温泉郷から戻った場所にありました。近くのバス停まで迎えに来てもらい、車に乗り込むと、温泉入りましたかー?とのあいさつ。

宿は、広いロッジのような建物でした。豪華ではないけれど、しっかりと掃除されたロビーや、部屋は居心地がよく、お腹が空いていたのですぐに夕食にしました。

一人用の鍋には、肉が盛られ、ツヤツヤのご飯も美味しかった。銀河高原ビールが気になったけれど、ひとりで赤くなるのもつまらないので、ジンジャーエールを。

部屋で少しのんびりしてから、本日2度目の温泉へ。大浴場もきれいで、貸し切り状態でした。湯船に浸かり、ぼんやりしていると、ある思いが湧いてきたのです。

ほかのお客さん、ぜんぜん姿が見えないな。

大規模とは言えない、3階建てのロッジ風の宿で、動線だって多くはないし、夜遅くにチェックインしたわけでもないのに。

周囲にはいくつも同じような宿が立ち並ぶエリアで、隣の宿の灯りだって見えました。

きっと、たまたまだよね。僕みたいな、ひとり旅の人が部屋にいるんだろう。

そう考えて自分の部屋に戻ると、いよいよ物音がしなくなりました。日付が変わる頃、ロビーからは明かりが消え、足音も物音もしない夜。

ひとり旅は、寂しくなるときがありますが、それは周りに人を感じるときなのかもしれません。その夜のシンとした静けさは、人や命の気配すら感じられず、途端に恐怖のような言いようのない不安が立ち込めてきました。

僕は、その夜、宿のたったひとりのお客さんだったのです。

確かに、レストランのサーブのタイミングが独特でしたし、温泉に入っても誰も使った形跡がありませんでした。

そして思い出した景色に、じわじわと感激がやってきました。

ロッジの入口や中庭に光っていたイルミネーションも、たったひとりの僕のために点けてくれていたのです。

怖さから、嬉しさに変わる、気配のない世界。

翌朝、僕はゆっくりと温泉に浸かりながら、この宿を選んで良かったなと思いました。

サムネイルは、infocus📷さんの作品。落ち着いた写真で、気持ちのこもった宿の雰囲気があります。ありがとうございました!良い旅の思い出でした。

#旅 #温泉 #ひとり旅 #乳頭温泉郷 #ひとり

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