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ここで、小言をたっぷり加えます

「あれ?なんか”男の料理”って感じするねぇ」

妻が何か見つけたように、キッチンにいる僕に向かって言いました。

休日に、たっぷりと時間をかけ、こだわって料理する。この数年、そんなチャンスは殆どありませんでした。


僕がふだん作る料理は、ほんの数種類。たいてい、すぐに作ることができて、子どもたちが好きな料理に限られてしまいます。

すると、時短や簡単といった視点で調理することになり、慣れた手順で面倒を省いて、サッと終わらせたくなるものです。

でも、それが寂しいと思うこともあります。たまには、こだわって美味しい料理を作りたい!家族をあっと言わせたい!

そんなモヤモヤを、誰か解決してー!

ぐいっと腕まくりをするような気持ちで、一冊のレシピ本を購入しました。


水田の小言を熟読するほど
一生ものの自炊力が身につく
いちいちうるさい定番レシピ

3冊ではなく、1冊のタイトル

ワクワクしながら封を開けると、帯も”小言”に満ちていました。本を開くと、びっしりと並ぶ文字。筆者が喋っているのを文字にしたような、意気込みを余すことなく伝えようとしているような、“読ませるレシピ本”でした。

「うわぁ、うるさ…」

僕は、驚きと喜びを隠しきれず、思わずつぶやいてしまいました。

著者は、お笑いコンビ”和牛”だった芸人の水田信二さん。和牛といい、水田すいでんといい、何だかご飯が進みそうな名前です(読み方違う)。

水田さんは、関西の洋食屋で修行していた経験がある男です。技術も知識もある。だからこそ、小言がうるさい。


雑誌のような素敵写真を見ながら「最初に作る料理」を考えていたら、僕の2つの投稿を思い出しました。

たくさんの方に読んでいただいている、フランスの家庭料理「キッシュ」を紹介した投稿。

ぱたんぱたんを焼き続けている、朝の習慣の投稿。

どちらも卵を使っていました。そんなふうに、子どもにも食べられる、分かりやすくて美味しそうなもの…あった!


『卵とトマトの炒め物』

レシピが1ページ完結。調味料もシンプルに“塩”だけ。おまけに小言が少なく、彩りも鮮やか。卵もトマトも、子どもたちの好きな食材です。

これは…勝てる!そう思いました。

久しぶりにトマトを切った

奇しくも数日前、まな板とフライパンを新調したので、自信持って写真が撮れました。(そこじゃない)

小言は、準備や調理手順だけでなく、材料の大きさ(一口大よりちょっと大きめ)や、卵の焼き具合にも。調理中の不安や疑問に応えてくれる先回り型の小言が親切です。

トマトの角が取れるまで炒める

僕の幼い頃の記憶では、母が作ってくれたそれは、卵を入れてすぐにトマトも一緒に炒めていたのですが、このレシピでは別々に調理して、最後に合わせて味付けするやり方でした。確かにこうすれば、火の入り過ぎがなくなります。

完成!

シンプルな材料で、ささっとできて、晩ごはんに一品増えました。子どもたちも喜んで食べてくれました。(40代男性)

なんて妄想しながら、食卓に出してみると…
あれ?子どもたちの反応が薄い。トマトも苦手じゃないし、卵なのにどうして…?


「酸っぱい!」

ひとくち食べた子どもたちの声が聞こえました。

…ガーン…!

火を通したトマトは、甘味よりも酸味が立っており、子どもたちには酸っぱく感じられたようでした。

それを聞いた妻も箸をつけず、結局、僕がほとんど食べることに。


あぁ、美味しい、美味しい。なんて美味しいんだ。トマトが甘い時期になったら、また作るから、みんなを見返してやろうな。(40代男性)


初戦は「完敗」でした。


ならば!と次に選んだ食材は、「厚揚げ」。豚肉と炒めて、ザ・おかずに。子を持つ親あるあるの“青菜も入ってるから”彩りよく、新しい定番になったらいいんだけど…。


『厚揚げの炒め物』

レシピで指定されていた豚バラではなく小間切れに変更。イメージしていた厚揚げが売切だったので、小さな厚揚げが四つ入ったものに変更。冷蔵庫にあると思っていた小松菜がなく、ナスに変更。

材料の変更が相次いだものの、味は変わらないはず。このレシピ本を信じて鍋を振いました。

肉を焼きつつ、厚揚げも焼くスタイル

焼けた肉を別皿に取り分ける指示でしたが、どうにも作業がしづらい…。鍋の左側に寄せ、さらに左側から皿に移そうとすると、左右の手がクロスしてしまうことに。

厚揚げを裏返しながら、サイドチェンジ

こうすれば、右側に皿を置き、右手で鍋から移せます。こんな単純な手順ですら気になるのですから、料理とは奥が深いのです。

ここでは、調理中の写真や著者の小言がなく、ちょっと書いておいてくれればいいのにね、と僕が“小言”を言いたくなりました。

完成!直接、作り置き容器に(弱気)

甘辛の味つけと、食べ応えのある厚揚げ、どうだ!と食卓に載せました。とはいえ、我が家の子どもたちは、炒め物があまり好きではありません。

(ちゃんと分かってたけど、奇跡ってやつをね、見たかったのです)

加えて5歳児からの、まさかの申告。

「ウチ、厚揚げ、好きじゃないんだよねー」

…ガーン…!(6時間ぶり2度目の登場)
なんだってー!

確かに、我が家では厚揚げを使った料理はほとんど食べません。なるほど、こんなに身近に厚揚げ苦手民が暮らしていたとは。思い出せ、買い物前の自分!

いいもん、いいもん。これはぼくの弁当のおかずにするもん。


美味しいのになぁ。結構たくさんできたから、今週は毎日お弁当に入れるかなぁ。美味しいのになぁ。(40代男性)


厚揚げの戦い「惨敗」


こうなったら最終手段、“挽肉”に登場してもらいましょう。ハンバーグ、ロールキャベツ、餃子…我が家の子どもたちの胃袋を掴んできた挽肉料理たち。

助けて!挽肉さーん!


『ミートソース』

幼い頃、母に作ってもらったそれは、ケチャップ味とコロコロした肉の食感が美味しくて、いくらでも食べたいご馳走でした。小学校の給食では、ソフト麺との相性も抜群、おかわり必至。あれを手作りするなんて、なんだか大人になったものです。

なんて感慨に耽りながらレシピを確認。所要時間74分20秒との記載。(どの料理にも所要時間が秒単位で記載されています。)ざっくり2時間くらいかかるのでは、と思っていたので意外と短くてホッとしました。

まずは野菜を黙々とみじん切り。かつて妻から「フードプロセッサー買ったのかと思った」と言われるほどに細かいみじん切りをしていたこともあり、職人のように玉ねぎと対峙。その時に、冒頭の言葉(男の料理って感じ)を妻が口にしたのでした。

身体が職人らしさをすっかり思い出して、にんじん、セロリは、かなり細かく切ることができました。

小さな成功もまた、料理の楽しさです。

みじん切り祭りを終え、ようやくフライパンと向き合います。

左上フライパン。右下は豆パン(調理中のおやつ)

レシピには赤ワイン。しかし、我が家には酒類がありません。ボトルで買っても誰も飲めないことから、必要最小限の紙パックで購入しました。便利。

ソフリット、と呼ぶらしい(優しく揚げる、の意)

職人が刻んだ野菜たちを、僕が炒めます。(同一人物)

とにかく混ぜます。

何十分も鍋の前に立ち続けられるなんて、なんて贅沢な!と、ちょっと感激したりしながら、こぼさないように、焦がさないように。

人参が多かったかなぁ、セロリは葉っぱいらなかったかなぁ…、あれやこれや考えを巡らしているうちに20分経って、気がつけばもとの半分くらいの量になっていました。

いよいよ真打ち登場。

バーン!気持ちいい大きさ。

相挽肉を少しこねて、大きなハンバーグを焼くイメージでフライパンへ。これは豪快!肉が焼ける音も心地よく、油がじゃぶじゃぶ出てきました。

焼き色をしっかり付けたいし、ほぐしたいし

レシピの指示は、焼き色を付けたら、裏返しながらほぐしていく…って、ほぐせない…。ミートソースって、こんなゴロゴロしてない気もするし、不安だなぁ。油ハネに注意しながらの作業は、なかなか捗りません。

弱気になっていたら、レシピには「ゴロゴロで大丈夫、その方が美味しい」との小言が。よし、小言水田を信じて、赤ワインを投入しよう。

ぎゃっ!

慌てて計量し、こぼしてしまった…凄惨な現場。(注:必要なのは120ml)

赤ワインを入れて、肉をほぐしつつ煮込みます。なんだか、肉に血液を戻しているみたいな気分。もちろん、美味しくなるって意味です。

美味しくなれー!美味しくなれー!祈りながら焼きます。

肉に火が通り、ワインも飛んだので、全ての素材を鍋に集合させました。赤・黄・茶の見事な組み合わせ。なんかもう美味しそう!

ここから、また没頭する時間に。

混ぜる。
混ぜます。
混ぜるとき。
混ぜよ。

恥ずかしながら。洗濯バサミも見える。

本は、コンロのそばに置いた圧力鍋の上に載せて、作っていました。流れは事前に読んでおいて、細かい指示(小言)は逐一確認しながら。

隣に先輩シェフ水田がいるみたいに、うるさくもありがたい小言が飛んでくる調理の時間でした。

完成!いい色!

30分近く煮込み続け、焦げないように混ぜ続けて、ついに完成!全体で90分程度の所要時間でした。気がつけば、レシピの指示よりも多くの時間と回数をかけて混ぜ続けていました。

僕の性格のなせる業です。とにかく真面目が生き方です。(何のことだ)

お腹が空いていたので、完成記念に白飯にオン!

作り手の特権、出来立ていただきまーす!

ミートソースご飯(これもレシピ本に収録)

!!

美味しいっ!早く妻や子どもたちにも食べてほしい。晩御飯は、スパゲッティを茹でよう。


レシピの写真とだいぶ違うけども

その日の夕方は、ミートソーススパゲッティ!!

実を言うと、この本を選んだのは、表紙のミートソースに一目惚れしたから。念願かなって、記念の1枚!

パルミジャーノやパセリは想像してください(笑)かなり庶民派な感じの絵面になっているけど、僕としては大満足。

子どもたちも喜んでくれました。

5歳児は「おかわり!」と皿を掲げ、2歳児は「あじみ!あじみ!」と、騒いでいました。妻が、最初のひとくちを「味見だよー」と言って与えてしまったために、2歳児は「あじみ」とインプットしました。

妻も「美味しいね!」と絶賛。

大団円…かと思いきや…あとひとり、いるね。


上の子は、スパゲッティが苦手。
「ミートソースも食べない!」とのこと。


…ガーン…!(1日ぶり3度目の登場)

(もう一度言う。ちゃんと分かってたけど、奇跡ってやつをね、見たかったのです)

いやはや、残念すぎる。

結局、妻の提案(命令?)により、一口だけ食べ、とりあえず家族全員が食べてくれました。

辛くも、勝ちを得ました…。

大量に出来上がったミートソースは、冷蔵庫で保存しつつ、先に作られたはずの”厚揚げ先輩”を追い抜いて、どんどん減っていきました。


翌朝、もはや僕だけが溺愛しているミートソースを、ひとり静かに食べました。

ミートソースうどん

香川うどん県に旅行したときに印象的だった、ミートソースうどん。麺つゆを足して、味を濃くしているので、うどんに負けないソースになりました。黄身の説得力も抜群。


憧れの自家製ミートソース、ついに実現!家族のためと言いつつ、結局自分のために作った料理って、美味しい。パスタだけでなく、ご飯にもうどんにも合う。また作りたい。(40代男性)


とにかく、著者があんなことこんなことを言ってきます。各作業の所要時間も「水田はもっと短い」とマウント気味。

こんなに小言がうるさいレシピ本、ほかにないでしょ。そう思って読んでいたら、いつの間にか細かいところまで気がつくようになったり、先へ先へと思考をめぐらせたりして、効率的に料理ができるようになっていた気がします。

このレシピ本には、子ども向けの料理は載っていないと思います。どれも、大人向けの凝った逸品という風情。

今更だけど、子どもに喜ばれたい!って人にはおすすめしにくいけれど、まさに”男の料理”って印象でした。(洗い物はちゃんとせえよ、と小言がある)

小言は調理を救う。

このレシピ本、調理することの隅々まで教えてもらえるような充実度でした。読み物としても楽しくて、悔しいけれど面白い。

小言を信じて。水田を信二しんじて。(やかましい)

我が家の家族の全員が「美味しい!」と言ってくれる料理に出会えるよう、あともう少し、小言に付き合ってあげてもいいかな…と思います。




かなこさんからのご指名をいただき、こちらの企画にも参加しています。かなこさん、ありがとうございました!今年は素通りせず、向き合うことができました。楽しかった!同じ本買った人と、小言に小言を言いたい。いやむしろ、水田さんにお礼の小言でも言ってやりたい。


最後まで、読んでいただきありがとうございました!

おまけ
(本を動かした9歳児の手、その奥の5歳児)


写真の加工やサムネイルは、infocusさんでした。ありがとうございます!

#このレシピが好き
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もつにこみ 最後まで読んでいただき、ありがとうございました! いただいたチップは、モンブラン研究費用や子どものおやつ代にします(笑)