かがみを見てごらん #創作大賞感想
僕の趣味、というべきなのか、旅先ではつい”役所”を探してしまう。単純に建物を見てみたいという気持ちもあるけれど、中に入って、働いている人たちの気配を感じたいというのがある。大抵、休日ではある。
「こんな場所にあるの?」
「この建物、歴史を感じるわぁ」
「ここで働きたいっ」
などなど、実際に目にすると、その町の暮らしを支えている役所への期待や、伝統が見えてくるような気がする。どの街でも、やっている仕事は変わらないかもしれないけれど、そこで働いている職員さんの表情を知りたい時がある。
アルロンさんの「公務員の加賀美」を読んだ。
主人公の名前が、タイトルに使われているのだけれど、この投稿を書くために改めて声に出してみて、その二つの意味に気がついた(遅い)。ほぉ、だからか…と、結末を知っているからわかる、納得感を噛み締めた。
公務員として採用された主人公の働きぶりは周囲から評価されているものの、本人は今ひとつ自分自身を信用していない節がある。自信がなくて、控えめで、ちょっと主人公には向かないタイプだ。
景色を描写する表現がいかにも秀逸で、公務員っぽさというのか、作品全体にやや重苦しさの漂う雰囲気がよかった。読み手によっては、それがストレスに感じてしまうかもしれないが、とにかく最後まで読んでみて、と声を大にして言いたい。
主人公の抱えている、人と比べてしまうことの弊害は、なかなかに苦しい。仕事はそもそもあるとして、子ども時代の経験や記憶は、本人にとってかなり重いものになる。それから解放されることを目標に生きているのもわかる気がする。
地方の自治体で働く職員は、実際のところ多岐にわたる仕事量だと思う。人口が少ない分、やることが減るのかというとそんなことはないだろうし、現場に行くといっても距離もあるはずだ。
言葉遊びのようだが、住民との距離はより近いものと想像する。しかし、公務員として求められている人物像は、あながち都市部と変わらないのかもしれない。
どうにもやりきれない、忙しさを抱えている様子やクレームへの対応、他部署への応援業務など、新人ならではの苦しみを思い出す。数年後に、「経験」という言葉に集約される、目の前の業務の数々に向かっていく勇気をくれる作品だった。
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最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
いただいたチップは、モンブラン研究費用や子どものおやつ代にします(笑)