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考えてみた、6年目のアレ

夏が始まりそうな気配がする。ゴールデンウィークも、十分暑い日があって、そして5月は穏やかに過ぎていくのだろうか。いや、もう6月である。

夏が過ぎると秋になって、アレの季節がやってくる。あの場所の、今年で6年目になるアレ、楽しみに待つだけでなく、考えてみたい。

アレとは何か

僕が、何度も何度も書いているのは、愛する家族のことであったり、日々のちょっとした気づきであったり、楽しくて難しい仕事のことであったりする。しかし、僕の投稿の中で、もっとも象徴的と自他ともに認める存在がある。

それが、モンブランである。

例えば、僕のような40代男性が何の断りもなく「モンブランが好き」と口に出すと、少なくない方々が「あ、万年筆のメーカーかな?」と考えてくださる。まさか、栗を使ったケーキのことではないだろう、と思うらしい。

「いえいえ、ケーキの。あの栗のケーキのモンブランです。好きなんですよ」

僕のこの言葉に対して、多くの場合の返答は「あ、あぁ、あれですね。まぁ、美味しいですよね」である。肯定的ではあるものの共感まで至らない、モンブランへの大まかな理解を示すものだ。それはそれとしてありがたい。だが、

「そんなに、モンブラン食べますか?」

多くの人の顔には、そんな言葉が書いてある。確かに、甘いものの筆頭であるケーキは頻繁に食べないだろうし、まして男性が嬉々として話すものではないかもしれない。

しかし、である。

生ケーキ界隈で店ごとに形が違うとか、同じ店でさえも毎年形を変えるとか、挙句、同じ名前の期間限定品を出すとか、そういうケーキはかなり少ないはずだ。

モンブランは、作り手としても遊びたくなるケーキであり、遊んでも許容されるほどに安定した美味しさを誇るケーキなのである。

「好きなので、だいたい毎週のように食べてますよ」

嘘ではない、これは本当である。かつて数えてみたら、年間で50個以上食べていた。いまもペースは落ちていない。それを踏まえて、そのように答える。すると多くの人は驚き、慌てる。そんなに好きなの⁈と。

モンブランのもつ懐の深さの根源は、日本でそれが紹介された経緯に遡る。ある日本人パティシエが、フランスに行って、モンブラン・オ・マロンというケーキに出会った。

そのケーキに衝撃を受けたパティシエは、帰国して日本風にアレンジしたモンブランを発売した。ふつう、新商品には商標を登録して商品名やレシピを守るものだが、パティシエはそれをしなかったらしい。

もともと栗が好まれる国民性にあって、モンブランは人気を博し、いつしか全国各地のケーキ屋がそれぞれ独自のモンブランを生み出し、愛されていった。

日本にモンブランを広めた功労者であるパティシエが開いたケーキ屋は、東京・自由が丘にある、その名も「モンブラン」である。

そんなモンブラン、街なかで見かけると、つい食べたくなってくる。ケーキ屋だけではない。カフェの店先、コンビニやスーパーでも”モンブラン”と書いてあれば手に取ってしまう。

ファミレスでは、メニューに掲載された”ざるそば”をモンブランと見間違えてしまうほどだし、「モデルプラン」とか「モダンラブ」などという、ケーキとは何の関係もなさそうなポスターに並ぶ言葉でさえ、その字面に翻弄されては「えっ?まだ食べたことないヤツあった?」と緊張が走る。

誰も真似してくれないが、僕はモンブランのことを愛を込めて”モン”と表記することにしている。この投稿では、何度も書くことになるから、改めて書いておく。

余談だが、本家フランス語では、モンブラン(Mont Blanc)は”白い山”だが、モン(Mon)は”私の”という意味もある。だから何?ではあるが。

コーヒーショップとアレの関係

今から5年前の2020年秋、日本で絶大な人気を誇るコーヒーショップがついに”モン”を発売した。そのコーヒーショップが、スターバックス・コーヒー(スタバ)である。

1996年に東京・銀座に1号店をオープンさせて以来、コーヒーだけでなく、カフェラテ(スターバックス・ラテ)や、フラペチーノなどのドリンクを日本に紹介した代表的なコーヒーショップである。(諸説あり)

コーヒーのお供として、スイーツやフードを提供するお店はほかにもあったし、スタバ以外のコーヒーショップでは、当たり前のようにモンが提供されているお店もあった。

スタバが、ケーキのラインナップにモンを加えたのは、日本上陸から24年が経った2020年のことだった。以来、僕は毎年、モンの追っかけをしている。各年を振り返ってみたい。

2020年

初めて登場したモンは「焼き栗モンブラン」だった。

無造作に成形されたマロンクリームの表面に焼き色がつけられていて、中はホイップだけ。台は薄く、ココア味のスポンジだった。白餡を思わせるあっさりとしたマロンクリームの食感と、かなり淡白な栗の風味に、僕は愕然とした。

当時ペアリングとして薦められていたコールドブリューコーヒーに合わせたのか、コクがほとんど感じられなかった。

満を持して登場したモンだけに、僕の期待値が高すぎたのか、すっかり落胆してしまった。あまりにもテキトーじゃないか、と。

当初から冷凍輸送し、店舗で解凍して出されることは予想していたから、台のスポンジが水分を吸っていたことは許容するとしても、栗の風味が薄いのは残念だった。だから、この年のモンについては、食べたことも明かさず、もちろん誰にも薦めることはなかった。

2021年

そして翌年のモンは「栗ずくめのモンブラン」になった。

モンが発売されているのは知っていたものの、僕は前年の残念感を引きずって、しばらくはスタバを見向きもしなかった。結局、僕が買わないのを心配したのか、妻が買ってきてくれた。

箱を開けて驚いた。だいぶモンの形が変わっていた。栗が、栗が見える…!ツヤッツヤの甘露煮、載ってるやん。(なぜか関西風)

台も厚くなって、中のホイップの水分に負けていなかった(タイミングにもよる)。肝心のマロンクリームは、前年に比べコクが出てザラッとした粒感があって、かすかに洋酒のような香りが鼻腔を駆け抜けた。なんと…!

よく見ると、クリームには渋皮らしき黒点が混ざっていた。観ても食べても、そうそうこれだよ、よっ!待ってました!、と嬉しくなる。

ホイップだけだった中は、マロンペーストを混ぜたクラム(焼いた生地を砕いたもの)が隠れていた。濃厚な外側に比べて、軽くても味に変化がある内側、これならコーヒーと合わせても美味しいだろう。

この変わりようったら…。前年のモンに落胆したのは僕だけじゃなかった、きっとそういうことだろう。栗の存在感を増したモン、やるやん、スタバ。

2022年

3年目となった期待のモンは「なめらか栗モンブラン」だった。

そして、モンは黄色くなった。モンの影の主役である「台」のインパクトが飛び抜けて、というかはみ出ている。多くのモンは、台とクリーム部分の大きさは同じか、台が隠れてしまう。しかし、これは台が主張している。

台だけを食べる。舌の上で軽く解ける口溶けに、ハッとする。前年とは明らかに違っていた。カステラみたいな食感だと思って、後でサイトを確認したら、カステラだった。やるやん、オレ

上のクリームは、前年の洋酒香るオトナ仕様から、はっきりと甘く、滑らかで栗の粒感はほとんどなかった。トップに飾られていたのは、幸せの黄色い甘露煮。伝統的な日本のモンは黄色い栗が主流だ。昨今流行の茶色いモンとの対比も粋である。

中には、トップにも載っているダイスカットの甘露煮。初登場の栗のムースは存在感たっぷりで、滑らかさに驚かされた。ひらがな表記の”なめらか”に並々ならぬ自信を感じる。

クリームとムースによる口溶けの良さを引き立てるなら、台はスポンジでも良さそうだが、水分でグズグズになってしまうのを避けるため、厚みの出せるカステラにしたのではないかと推察する。結果、皿に載せた時の安定感も抜群で、四角にしたことで、クリーム部分の丸みが対照的に浮き出して、造形の美しさが際立っていた。

2023年

ついに、「手しぼり栗のモンブラン」が登場する。

黒い小皿も特別感があるが、そこに細く大量に絞られたマロンクリームが印象的だった。細くて口溶けの良いクリームは限られた専門店だけ…なんて思っていたので、この年のスタバの心意気には感動すら覚えてしまう。

細いクリームは口溶けがよく、ひとくち目から嬉しくなる味だった。マロンクリームはちゃんと栗の味がした。それに合わせるように中のホイップはごく軽く、台はクランチという、サプライズな軽さだった。

口の中では、クリームの甘くてとろける感じとクランチがアクセントになって、ケーキというより、まるで”パフェのひと匙”のような”完璧な”バランス感があった。

商品名もちょっと気になった。あえて「栗の」と強調するあたり、ほかのモンが出る可能性が秘められていると思うのは僕だけだろうか。

商品名からも見た目からも、不揃い感がいい意味で手作りの雰囲気を演出しており、軽さという点では今までで一番食べやすいモンだった。これまでに比べて大きさが小ぶりだったのも高級感の演出に一役買っていた。

2024年

和の食材とコラボした「栗とほうじ茶のモンブラン」に。

スタバにもやってきた和とのコラボ波。ほうじた茶葉の香ばしさは、木の実である栗との相性がよいというのは、近年注目されている。和の食材との組み合わせでモンも進化させたのだろう。

以前、印象的だった滑らかな食感のムースは”台のように”重要な支えになっていた。当時は栗のムースだったが、今作ではほうじ茶の香るムースだった。

さらに前年、珍しいと感じたクランチの台が、厚みを増していた。なめらかなクリームたちの中で、クランチのやや硬めな食感が良いアクセントになる。反省なのか反動なのか、前年に比べ、ケーキは倍くらいのボリュームがあった。これまでの中で最大だろう。

マロンクリームのザラ感を、クランチのザクザク感が追い越していくので、栗の感じは薄れてしまう印象だった。ただ、ボリュームは過去最高で、満足度は高かった。

2025年のアレを考える

ここまで5年分のモンを振り返ってきた。すると気になるのが、2025年、今年のモンだろう。一体、どうなるのだろうか。

当たり前すぎて恐縮だが、正直なところ僕には全くわからないのである。

僕自身は、スタバ関係者ではなく一介のモン好きである。スタバでのバイトはおろか、カフェで働いた経験もなければ、スイーツの商品開発のような業務など想像の世界でしかない。理論も分析もことごとく頼りないが、僕なりの考察をしてみたい。


まず参考にしたいのが、2023年から始まった「全国モンブラン大会」である。

「笠間の栗」のさらなるブランド力向上と、全国の栗産地と連携を深め、和栗文化の継承とともに全国の方に和栗の良さを知っていただくために企画しました。全国の栗産地からモンブランを集め、人気No.1のモンブランを決める大会です。

笠間市農政課 栗ブランド戦略室ホームページより

全国の栗産地の自慢のモンブランが集まり、人気No.1を決するイベントで、小布施堂や恵那川上屋などの栗菓子の老舗も参加している。(2023年は、茨城県笠間市のほか長野県や熊本県など合わせて6都市が参加)

栗の産地には、魅力的なモンを作っているお店がたくさんある。モンだけではなく、日頃から栗の扱いに慣れていることからも、美味しさを引き出す術を熟知した職人が多いはずだ。

大会のチラシを読んでいたら、思い出したことがある。23年当時、僕が都内の恵那川上屋で食べたモンが、この大会に出品されていたらしい。想像を絶するモンブランで、あまりの美味しさに震えたのを今でも覚えている。

初の開催であった2023年の優勝モンはこちら。

笠間市農政課 栗ブランド戦略室ホームページより

熊本県山鹿やまが市の”パティスリーのなか”による「山鹿栗バラのモンブラン」である。モンの造形は、作り手のセンスが大いに発揮されるところでもあるが、花びらのように絞り出したマロンクリームは、ひと目で心を掴まれてしまうだろう。

翌年、偶然かもしれないが、スタバではないコーヒーショップで、花のような造形のモンが売られていた…!

そして、新たに静岡県掛川市を加え、2回目の開催となった2024年の優勝モンはこちら。

恵那川上屋ホームページより

岐阜県恵那市の”恵那川上屋” による「栗和くりなごみ」である。写真の風格もすんごいが、もう名前からしてなんだか説得力がある。

原材料の“和栗”の、漢字の組み合わせを入れ替えた名前で勝負するなんて、誰が思いつくだろうか。前年、同店では「栗風」という名前のモンで勝負しており、その意気込みがうかがえる。

お店のホームページによると、大会のために開発された逸品で、表面は微細なマロンペーストで、中には栗あん、台には渋皮栗を入れたマドレーヌを採用しているのだとか。

職人パティシエは、商品名とは裏腹に”和み”など一切許されないストイックな環境で手を動かしていたのだろう。すさまじい…。

この結果も踏まえ、同年(2024年)に、あるコンビニで販売されていたモンが脳裏によぎる。栗の粉を使ったカップケーキタイプのモンである。クリームをたっぷり載せるタイプだけでなく、栗の粉で質感を出すモンが登場したのだ。

コンビニでできるなら、スタバでもできるのではないか。カップ入りのケーキは、その断面こそ目立つが、造形には気を使わなくていいし、何より多くの人がイメージするモンを払拭するビジュアルになる。

食べ応えという点ではクリームの重量感に敵わないが、優しい甘さを表現し、カフェラテなどに合わせるには適役ではないだろうか。


アレは企業努力の賜物

企業としてのスタバについても、少し考えてみたい。これまで見てきたように、毎年モンの形を、味を変えてきた。それは言わば、顧客への提案であり、モンへの愛情であり、モン好きを増やすための企業努力と言えるのではないか。

ホームページによれば、スターバックス・コーヒーのミッションは、「この一杯から広がる、心通わせる瞬間、それぞれのコミュニティとともに(後略)」となっている。例えば、お店の立地や店舗外観などに、地域への配慮が図られているのは有名である。

また、主力商品であるフラペチーノを、都道府県ごとにフレーバーやトッピングを変えて販売(「47JIMOTOフラペチーノ」)し、注目が集まったのは2021年のことだった。

同じようにモンが都道府県で展開できると思いたいところではあるが、現実的に難しいのはわかる。しかし、一定の地域ごとの変化の可能性はあるのではないかと思う。栗の産地に関連した品種の採用や、造形の違い、さらには抹茶やほうじ茶、紅茶などの香りを組み合わせる展開も考えられる。

栗だけではない。チョコ、抹茶、さつまいも、かぼちゃ、をクリームに仕立てても良いのではないか。

モンの懐の深さ、日本が誇るアレンジ力はすでに書いた。スタバがその潜在能力を開花させる起爆剤となれば、スタバにおけるモンの存在は不動のものとなるだろう。(なりたいかどうかは分からない)

モンと名乗れるのは、栗が主体となっていなければならないのではないか、そんな意見が聞こえてきそうだが、栗以外のモンを作る発想そのものは、実は特別なものではない。

実際のところ、すでに全国各地で特産品を使ったモンは愛されているし、何より、世界で初めてモンを売り出したとされている、フランスの老舗サロン・ド・テ「アンジェリーナ」が日本に構えた店舗には、オリジナルの栗のモンのほかに、ショコラ、抹茶、塩キャラメルやほうじ茶、季節限定商品もある。(サロン・ド・テ:ティー・ルーム、または紅茶喫茶店のこと)

何度でも言うが、モンは懐の深いケーキである。アレンジしてこそ、その作り手の愛が試されるような、常に新しさを求めて進化するケーキなのだ。日本で愛されていると知ったからこそ、日本のためにアレンジを加えた「アンジェリーナ」のパティシエたちに拍手を送りたい。

2025年に食べたいアレ

かつて、とあるお店のモンについて、作り手の方に感想を伝えたら、とても喜んでくださったことがあった。

その方は、モンについては、開発段階で従業員同士の喧々諤々な議論が交わされたと教えてくださった。栗の甘露煮を載せるのか隠すのか、たったそれだけでも、お互いの主張がぶつかり合って何時間も話し合ったと笑っておられた。

勝手ながら、毎年その形を変えてきたモンを作っているであろう、スタバの商品開発の現場も、同じような状況であって欲しいと思ってしまう。

ある意味では、完璧なモンというのは元祖である「アンジェリーナ」がすでに作ってしまっていて、長年変わらないまま存在しているような気がする。

しかし、栗の甘露煮(グラッセ)を載せたり隠したりする発想は日本独自のものだ。栗を好む国民性そのものであろう。アンジェリーナのモンには、グラッセは一切入っていない。

パティスリー(ケーキ屋)のように、ケーキを専業として販売しているお店とは違う、コーヒーショップとして、一歩引いた位置でケーキの提案ができることは、いい意味であそびがあるような気がする。

視点を変えてみると、毎年変えていくことは、スタバがその年のモンを通じて、顧客をどのように捉えているのかを見せてくれているのかもしれない。

コーヒーのお供としてのモンは、濃厚であるほうが存在感はある。甘さもしっかりあると、深煎コーヒーとの相性はよさそうだ。流行も取り入れてモンの美味しさを知らしめた。さらに、和栗を超えた和風なモンも魅力的だった。

あれこれ考えてきたが、2025年のモンとして僕が食べたいモンを発表したい。


・カップで楽しむモンブランパフェ

透明なカップに、クランチ、ホイップ、ペーストを重ね、グラッセをトッピングして、粉を載せる。前述しているように、栗以外でも組み合わせることができる。

・モンブラン・フラペチーノ

飲むモンブラン。ほかの店やコンビニなどですでに似たようなモンはある。台の焼き菓子の要素をどう表現するのか難しいが、持ち運べるモンブランとして、暑い日に喉を潤してくれる存在になるといい。


これまでのスタバのモンを振り返ってみて、同じものを再度出すことはないだろう。それは失敗とか不足があったわけではなく、常に新しいものを提案していくスタバの姿勢と僕は捉えている。そして、僕の予想を超えてくることも織り込み済みである。

余談だが、モンと同じ時期に売られている栗のパウンドケーキに、ホイップクリームをトッピングすると、モンのような完成度になるので、これもオススメしたい。


ヘッダーの写真は、富山県の富岩運河環水公園にあるスタバ。「世界一美しいスタバ」として有名なお店だそう。

スタバが、果たしてどんな”6年目のモン”を提案してくれるのか、とても楽しみだ。

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もつにこみ 最後まで読んでいただき、ありがとうございました! いただいたチップは、モンブラン研究費用や子どものおやつ代にします(笑)