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LegalAlpha Vol.188.5|英国モーターファイナンス|6月30日|争われるのは「賠償額」ではなく「訴訟の配管」

※本記事は、訴訟ファンドおよびその関連制度について、筆者の個人的見解を含む一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の投資対象の取得・売買・勧誘・推奨等を意図したものではありません。


来週火曜(6月30日)午前10時半、英国控訴院が一つの判決を言い渡す。Angel v Black Horse 控訴審——事件番号 CA-2025-001011。

CA-2025-001011 判決へ

注目すべきは、これが賠償金の額を決める裁判ではないという点だ。争点は徹底して手続論にある。約5,800人の原告の請求を、CPR 7.3 のオムニバス・クレームフォーム(複数原告を一通の訴状に束ねる方式)でまとめて提訴できるか。一審のリッチー判事はこれを認めた。被告側(貸し手)が控訴し、その判断が下る。

地味に見えて、ここが本丸である。

(1) Patrick Giltinane and others v Startline Motor Finance Ltd
(2) Sharif & Others v MotoNovo Finance Limited
(3) Hallsor & Others v Aldermore Bank PLC
(4) Thomas And Others v Volkswagen Financial Services (UK) Limited
(5) Bateson & Others v BMW Financial Services (GB) Limited
(6) Angel And Others v Black Horse Limited
(7) Barlow & Others v Vauxhall Finance Plc and another
(8) Green and Others v Close Brothers Limited

もし上記オムニバス方式が維持されれば、数千件の請求を一本に束ねられる。1件あたりの訴訟コストが劇的に下がり、これまで割に合わなかった少額請求が「経済的に成立する」。司法アクセスの扉が一段開く。逆に銀行・系列金融からすれば、ここを潰せば将来のコミッション訴訟全体の入口を狭められる。死に物狂いで争う理由はそこにある。

文脈も効いている。昨夏の最高裁(Johnson)が fiduciary duty・bribery ルートを封じた結果、生き残った主戦場は消費者信用法 s.140A の「不公正関係」——最も事実依存的なルートになった。被告はこれを逆手に取り、「個別事情に依存する請求を束ねて一括処理などできない」と主張する。Johnson 後、この論法はむしろ強まっている。手続論なのに勝敗が読めない理由だ。

さらに射程は motor finance にとどまらない。英国には米国型のクラスアクションが(競争法分野を除き)存在せず、マスクレームの器は GLO・CAT・オムニバスの三択しかない。控訴院がオムニバスを是認すれば、住宅ローンや保険を含む仲介型コミッション案件全般へ波及する構造的なイネーブラーとなる。

そしてもう一つ——FCA の補償スキーム(PS26/3)とは別の回収ルートが開くという意味で、訴訟ファイナンスの観点からは「プラスアルファ」がある。スキーム範囲外、あるいはスキームを超える回収を狙う層にとって、束ね方式の経済性こそが第三者資金の成否を分ける。

6月30日。賠償の話ではない。だが、英国マスクレーム・ファンディングの「配管」が開くか閉じるかが決まる日である。

結びに代えて

ところで——この手の判決こそ、弁護士限定の Yes/No 予測市場・ポリマーケットにかけてみたいなと思った。「控訴院はオムニバス方式を維持するか? Yes / No」。訴状を読み込んだ実務家ほどエッジを持つ手続論は、群衆の知恵より玄人の知恵が効く領域だ。賠償額の当てっこより、こちらの板のほうが、よほど価格が締まるはずだ。


※本記事は、訴訟ファンドおよびその関連制度について、筆者の個人的見解を含む一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品または投資対象の売買、取得、勧誘、推奨等を意図したものではありません。また、本記事は特定の法的助言を提供するものでもありません。記載内容の正確性や完全性について保証するものではなく、今後変更される可能性があります。投資判断や法的判断を行う際は、必ずご自身でご確認のうえ、専門家にご相談ください。

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中田 憲太郎 Monterey Capital Management Pte. Ltd. チップ不要。お気持ちだけで結構です。