恩人なのに、また恩をもらってしまった
「おお、ちゃんと原稿になっている!」
パソコンの画面に現れたのは、簿記の本の第二章の原稿案でした。
自分が公開講座で話した内容が、一つの原稿になっています。
「本当に、本になっていくんだな」
そこで初めて、少し実感が湧きました。
昨日、私の研究室に来てくれたのは、以前、私を今の大学に紹介してくれた人です。
私にとっては、今の仕事への道を開いてくれた恩人です。
彼はAIを使うのが得意で、簿記の入門本を作ろうとしている私に、いろいろなアドバイスをしてくれています。
少し前に、私は彼にこんな話をしました。
「6月に簿記の公開講座を行うんですが、その内容を本にしたいんですよ」
すると、講座を録音し、文字起こしのデータを作ることを勧めてくれました。
講義で実際に話した言葉を、AIを使って本の原稿にする。
それまでの私には、まったくなかった発想でした。
勧められた録音機器を購入し、公開講座を録音しました。
文字起こしも済ませました。
そして昨日、そのデータを本の原稿にする方法を、実際の作業をしながら教えてもらったのです。
「AIに向かって話せばいいです。書くよりも、ずっと効率がいいですよ。3倍くらいのスピードらしいです」
「プロンプトは、口で話せばいいんですね。へー。」
試しにマイクに向かって話してみると、「あー」とか「えー」とかを入れながら話していたはずなのに、画面には余計な言葉がほとんど残っていません。
「へー、頭いい!」
さらに、文字起こしだけでなく、WordやPowerPointの資料もAIに参照させられると教えてもらいました。
「そんなこともできるんだ」
教えてもらうことの一つひとつが、本当に的確でした。
公開講座の文字起こしやレジュメ、目次、すでに書いていた第一章の原稿をもとに、第二章の原稿を作るようAIに指示しました。
もちろん、それも教えてもらったとおり、口頭です。
そして、パソコンの画面に原稿案が現れました。
一人だったら、ここまでとてもたどり着けなかったでしょう。
講座を録音し、これまでの資料と組み合わせて原稿にするという発想は、私にはありませんでした。
自分だけではできなかったことを助けてもらい、今、私は実際に原稿案を手にしています。
それがこれほどうれしかったのは、彼が単にAIに詳しい人だからではありません。
彼は、私の講義の一番の理解者です。
私が自分でも、
「ここが、自分の一番かっこいいところだ」
と思っている、教壇に立つ姿を、節目ごとに見てくれてきました。
私が掲げている、
「感動するほどわかりやすい講義」
という考え方にも、心の底から賛同してくれています。
私を今の大学に紹介してくれた。
それだけでも、十分すぎるほどの恩があります。
それなのに今度は、私が講義で伝えてきたことを、本という形に残すための力まで貸してくれている。
「恩人なのに、また恩をもらっているな」
そう思いました。
昨日、私がうれしかったのは、第二章の原稿案ができたことだけではありません。
私の一番かっこいいところを知ってくれている人が、その先に進もうとする私を信じ、また力を貸してくれた。
そのことが、うれしかったのです。
