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インディフィニト・ノート 38話

<前話までのあらすじ>

 奥島の攻撃を何とか防いだ鶴居だったが西田へ交代して関節技(サブミッション)に掴まってしまう。そんな中、黒崎が実況席へと歩いていく。

 
1話は<1~5P>こちらから
37話は<181~185>こちらから

         38話<186~190P>

 西田はできるだけ口を開けながら息を吐き出して完全再現に近付けていく。大好きな選手なので中途半端なモノマネは出来ない。その間、痛みに
耐えているだけしか出来ない鶴居は苦悶の表情を浮かべている。

「山里さん。鶴居は必至に耐えてますね」
「そうですね。本物のヤンキーは絶滅したと言われている時代に根性を前面に出してますね」
「観てる我々の方がシンドイ時間かもしれません」

 黒崎はプロレスを実況している二人を通り過ぎるとタオルを取ってリングサイドに方向変換した。
「こ、これは……」
「島谷さん。これはレフリー不在において必要だろうと細川が用意した物資の一つですね」

「はいっ。その通りです。私が持ってきた物です」
 目頭が熱くなっている島谷。まさか本当に使う時が来るんだろうかと疑問に思っていた物だったが試合の権利が無い第三者(セコンドならば別だが)がタオルを投げ込む事は、ここまで盛り上げてきた試合に水を差す事になりかねない。

     186

「黒崎は、白のタオルを左手に握りしめて自軍のコーナーへ向かって歩いて行きます」
「黒崎ーっ黒崎ーっ黒崎っ……」
「黒崎コールが、この会場全体に響き渡っております。率直な感想をお願いします。山里さん」

「異様な雰囲気ですね! 勝負の分かれ目という状況では全くないにも関わらず、黒崎の決断を何か後押ししているように私は思います」
 言い終わると目に涙を浮かべている山里。実況席の映像も録画されているとしたら、このシーンで、もらい泣きしている人も続出しているかもしれないと感じた奥島。

 場外を使った乱闘を無しに、ここまで試合を盛り上げる事が出来たのは奇跡に近いかもしれない。どこまで彼らのプロレスが伝わったのかは正確には分からないが最後まで見届けてやるんだという気持ちで黒崎の動向を見守っている。

 技を掛けている西田の視界に黒崎がこちら側に歩いて来るのが分かった。見えた上でも攻撃の手は一切緩めない。その気迫が黒崎にも伝わる。 

     187

「西田の額の汗が自身の両目を伝って首に流れ落ちているが瞼を閉じる事はありません」
「島谷さん。これはもう人間のレベルを超えている気がしてなりません」
「それは具体的にどういう意味でしょうか?」

 島谷は山里が何を言おうとしているのかを促す。
「表情こそ異なりますが私は鬼神が宿っているのではないかと感じております!」
「ふぅー。まさか、ここで鬼神というフレーズが飛び出してくるとは私も思いませんでしたが山里さんが言いたい事は充分に伝わりました」

「うぅーーーーーーっ」
 鶴居の我慢の限界の声が絞り出た所で黒崎が自軍のコーナーポストのエプロンサイドに上がる。瞬間、右手で振りの大きい荒々しい動きを決める。
「こ、これは黒崎が敬礼ポーズだ!」

「どういう意味があるんでしょうか?」
 会場が混乱しているのも構わずに黒崎は左手に握りしめていた白のタオルをリングに投入した。

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「黒崎より、タオルが投入されましたので試合終了とさせて頂きますっ」
 島谷がアナウンスと共に試合終了のゴングを鳴らしたのを受けて西田は、
技を解いて後ろに倒れ込んだ。
「あの野郎、本当に決めやがった」

 奥島は興奮を抑えることが出来ずにリングに入ると右肩を貸して上半身を起こしに掛かった。
「人使い荒いってー。もう少し寝かせてーや」
「悪い。我慢できんかった」

「奥やん。俺、カッコ良かったか?」
「あぁ、最高にカッコ良かったぜっ」
 二人が見詰め合い検討を称える証として奥島は左手で西田は右手を出してグータッチを重ねた。

 それに触発されたのか実況席でも島谷と山里がグータッチをする。
「パクるな~放送席、そこは握手じゃろうがぁー」
「ブゥーーーーっ」
 島谷と山里がリング内の二人の粋な行動を真似した事に対する強烈なブーイングが浴びせられた。

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 斑工業と暁海校の全員からではあったが本気で怒っているというよりは、イジリの側面が強かった。それを受けて改めて島谷と山里が握手を交わす。
「お前らも、お疲れ様!」
 ブーイングのきっかけを作った男が野太い声を響かせながら、何故かまとめに入るとブーイングは不思議と鳴りやんだ。

 実況席の二人はブーイングが収まってくれたので犯人探しをするつもりは
なかった。安堵のため息が漏れると黒崎がリングに入って鶴居を介抱していた。

「島谷、悪いけどスポーツ飲料を一本を投げてくれないか?」
「……」
 島谷は人数分しか運んでないので予備はなく、返答に困っている。それを見ていた山里は机の下から新品を取り出して口を開いた。

「これ、未だ飲んでないから渡してくれないか」
「逆に良いですか?」
「あぁ、母親から知らない人から貰った物は口にしないように教育を受けている。俺のは自販機だ」

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         38話<186~190P>  

39話は<191~195P>こちらから
1話は<1~5P>こちらから

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昌人っち(五十嵐 昌人) 父親(ドラクエマニア)から譲り受けた変速自転車(損傷)の部品交換代&おやつ代に当てたいと思います✨ あなたの応援が力になります! 

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