インディフィニト・ノート 34話
<前話までのあらすじ>
鶴居は顔面パンチ禁止のルールを無視して右ストレートを放ったが奥島の
古武術で、あっさりと避けられてしまう。後手に回った鶴居は奥島の連続攻撃を受けてピンチを迎える。このタイミングで西田が合流しツープラトン技を鶴居と黒崎に見舞った。エプロンに居た黒崎は逃げる事も出来たが受ける決断をするのだった。
1話は<1~5P>こちらから
33話は<161~165>こちらから
34話<166~170P>
鶴居は過去に知人の大学のイベントでプロレス同好会の試合に黒崎とタッグで出場して舞い上がってしまい遠慮なく袈裟斬りチョップを叩きつけて、
相手が動かなくなってブチこわしてしまった事があった。その後一週間は、黒崎と口を聞く事もなく険悪になった事があったのを思い出した。
今回は、自分が流れを止める番になるパターンかもしれないので必死に眠らないように意識を保った。もし蹴りが顎に入っていたとしたら完全に試合は、そこで終わっていたと思う。奥島の先を読む力と盛り上がっている流れを途絶えさせない技量がヒシヒシと伝わってくるのを感じていた。
仲間だったら、どんなに頼もしい奴なんだと惚れそうになるのを抑えるのに必至だった。
黒崎は予想以上の攻撃力の蹴りに対してマットの受け身を取りそこなってマットが無い部分で後頭部を軽く打ってしまった。
足に力は、入ったので立ち上がると幸いにも試合続行不可能という深刻なダメージは感じられずにリングの周りを歩きながら入るタイミングを伺っていた。
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奥島の背中から降りた西田は、主導権が無いので試合の邪魔にならないように移動して黒崎の動きを注視している。相方の奥島はお互いのツープラトンが出終わった事でホッとしていた。各一回のルールで片側が出てないのでは観てる方も全力で楽しめないだろうと思っていたので、どのタイミングで出すか計算していたのだ。
一方的な戦いによって勝利する事は、一切考えていない。どうやって勝つか。勝ちに繋がる過程こそが大事だと奥島は常に考えていた。黒崎はリングに入って来ると額の血管が切れそうな表情で吠えた。
「奥島。ナメとったらアカンぞ、貴様!」
「……」
奥島は無防備な背中を見せ続けて聞こえないふりを続けた。これには、ちゃんとした理由があった。振り向かない事で、奥島の目の前にいる倒れていた鶴居を隠す事が出来ていたのだ。
「アックスボンバーじゃいっ」
某、バトル漫画の読み過ぎなのか技名を叫びながら突進してくる黒崎。
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腕を伸ばした状態で当てるラリアットとは違い、腕をL字に曲げた状態で当てる。別名、斧爆弾と呼ばれている。日本国内や海外でもラリアット(アメリカではクローズライン)が主流であり、多くの使い手が存在するがアックスボンバーに関しては元祖に経緯を評しているのか使い手は稀である。
奥島は背後から迫る来る黒崎の気配を感じながらカメラに写らない死角を使って右手で中指を突き立てるポーズを鶴居に見せた。流石に、そのポーズを間近で見せられて無視できる程、人間が出来てない鶴居は眠気を吹き飛ばす程のアドレナリンがドバドバと放出されて何とか立ち上がる事が出来た。
「ここまでコケにされたのは久しぶりだ!」
視界に入っていなかった相棒の声が突然聞こえた黒崎は急ブレーキをかける事も出来ずに突っ込んで行く。奥島は、そのタイミングでハイジャンプして鶴居の頭の位置に両太腿を挟んで体勢をキープしようと動く。
もちろん太腿のロックだけではバランスが取れないないのを考慮して相手の両腕の裏側を掴んで落下を防いでいた。
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とんでもない奥島の身体能力の高さを見せ付けられた鶴居と黒崎に待っていたのは誤爆というプロレスあるあるだった。しかもアックスボンバーのインパクトが当たる直前に鶴居から飛び降りる離れ業まで披露していた。
「黒崎、オマエ何しとんじゃボケっ」
強烈なアックスボンバーを喰らった鶴居は膝から崩れ落ちてしまう。
「違う。わっワザとじゃないんだ……」
トラックの死角から子供が飛び出したみたいに何が起こっているのか分からなく、その場を動けない黒崎だった。
悪気がないのは鶴居にも分かっていたのだがダメージは本物なので、やり場のない怒りを相棒に直接ぶつけてしまう。その混乱に乗じて奥島は黒崎に対して横から近付いて蟹挟(かにばさみ)を使った。黒崎のパンツを片側で掴んで自分の両脚で相手の足を挟みこんで倒すという柔道やサンボ、プロレスでも使用される事がある技を用いた。
ちなみに、柔道においては多くの大会で禁止技となっている現状がある。
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意識が別に行っている黒崎なので当然反応できる訳もなく、あっさりと体勢を崩してしまう。そこから西田の目を2秒強く見る奥島。言葉を交わさずとも意思疎通は取れるんだと言わんばかりに鶴居が居る方向へ向きを変えると気絶して倒れている足をリング中央へと引っ張って移動させた。
起き上がれるだけの体力は残っていない鶴居。西田は自分の役割を十分理解すると、うつ伏せに倒れている黒崎の髪の毛を掴んで起き上がらせると自軍のコーナー付近まで連れまわしてから相手の頭を抱える。
そこからブレンバスターの要領で垂直に抱え上げてからボディスラムのように背中から叩きつける技『ファルコンアロー』を放った。
「こ、これはファルコンアローだ!」
声がする方を奥島が見るとゴングを鳴らした長机に、いつの間にか実況さながらのマイクが設置されているのが分かった。
喋っているのは島谷だった。プロレスおたくだと初めて知ったが試合に集中したいので特に気に留める事もなく自分がすべき事の為に近くのコーナーポストへと移動する。
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