インディフィニト・ノート 49話
<前話までのあらすじ>
安藤の車(代行運転)でミサを送る事になった。繁華街から外れた人通りの少ない場所でコンビニが見えてくると停車した。現ナマの力を使い運転手
を追い払うと安藤自身が運転席へと乗り込んで発進する事となった。ミサは
飲酒運転を疑ったが種明かしを聞いて納得したので、それ以上は追及しなかった。いつのまにか高速道路へ合流する事となり、安藤の本性が徐々に顔を出していく。とっておきの場所とは……。
1話は<1~5P>こちらから
48話は<236~240P>こちらから
49話<241~245P>
ミサは昔、車好きの父親と高速道路のトンネルで口論が始まり、コンクリートの壁ギリギリまで近付きそうになり、事故寸前を経験した事が脳裏によぎっていたのもあった。口論の理由は恋人にするなら、どんな人かであったがミサが中学生の頃に母親が若いホストに熱を上げて朝帰りが多くなった。
毎日喧嘩が耐えずに別居生活となったが身の回りの世話をしたのが姉で、
ミサは母親と住むようになっていた。姉よりも妹のミサには母親のようになって欲しくないという想いが強すぎて父親の前では結婚はおろか恋人の話までタブーとなっていたのだ。
正直、自分で改造(ステアリングとシフトレバー、足回りを中心に)した大好きな車での運転中なので無意識の内に返事をしてしまった感は否めなかった。ゆでダコみたいになった父親の表情は小学時代に社会見学で見た金剛力士像の阿形(あぎょう)像に酷似していた。阿吽の呼吸を表す2体で1組になっている事が多い。
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左右に設置されている有名な像である。社会の授業で習ったが阿形像は怒りの表情を顕わにし、吽形像は怒りを内に秘めた表情を表していた事を思い出した。父親が口を閉じていたのなら吽形像と記憶していたと思う。別に、運転している安藤に怒りの表情こそ無かったが普段大人しい人程、キレると恐いイメージがあったので余計に刺激を与えたくなかったのがミサの正直な気持ちだった。
もし話掛けるタイミングがあるとしたら高速道路を降りた一般道が望ましいと思っていた。給油するタイミングでも良いし万策尽きたという訳でもない状況なので悲観的になるのは止めようと強く感じた。
安藤はパッシングに応じない車の横に並走すると口を開く。
「ボンボンがスポーツカーに乗るのは10年早いって」
あっという間に差が開いて視界を遮る様に追い越し車線に戻った。
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この加速を体験したミサは、この車がチューンアップした改造車だと予感していた。父親の車とは比べ物にならない乗り心地の良さとスムーズな走りに感動してサスペンションもイジっていると判断した。高級なシートもそうだが父親は対照的に計量化にトコトン拘って運転席に至ってはシートも外す程、夢中になっていた。
満足行く改造が終わる度に、三重県の鈴鹿サーキットへ遠征に行くのを小
学生の頃に付き添いで駆り出されていたのが、最悪の思い出として残っていた。週末に呼び出されるので友達と楽しく遊んだ記憶がないのだ。その反動で中学の3年から反抗期が始まり、夜遊びするようになっていた。
年下には全く興味が持てなかったし父親と同年代の男性も嫌いになっていた。姉は同級世、年上、年下もストライクゾーンは広めであった。
「天海くん。ここから未だ掛かるからサービスエリアに寄って、お手洗いに行こう」
「はい。分かりました」
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安藤は、ルームミラーでミサの表情を確認すると通常運転に切り替えていた。少しでも怒っていたり、強張っていたりしていたら爆走を続けていた気がしていたミサだった。サービスエリアに着いて手洗いを済ませると飲み物を買って車に乗り込んだ。
安藤は、ブラックコーヒーの缶でミサはカルピスの苺味のペットボトルを購入していた。女子トイレから逃げて助けを呼ぶ選択肢は無かった。時間帯が悪かったのか飲食コーナーに数人居るくらいで駐車場で待機している人は居なかったから声を掛ける意味は無かった。
ガタイが良い男性が見当たらなかった事も理由に入っていた。下車して目がキョロキョロと泳いでいる事は安藤も分かっていたので完全に気を許している訳でもなかった。しかし、サービスエリアに居た女性と比較してみて改めてミサは美人だと思った。横並びで歩いてる時に、すっと手を握りながら秋田美人を思わせる雰囲気に対して優越感に浸っていた。
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可愛いと綺麗が合わさってる感じに得した気分になるのだ。服装を変えれば色っぽいお姉さんにも子供っぽく見せれるのは容易に想像できた。助手席を促されて座るミサ。
「天海くんって彼氏は居るの?」
「えっ。私ですかっ」
ミサは、頬を赤らめながら左右の人差し指を付けたり話したりしている。その反応に満足しながら会話を続ける安藤。
「もちろん。この車に乗っている天海は一人しか居ないと思うけど?」
「ですよねー。天然が出ちゃいました。彼氏は居ないです」
「えーっ。美人なのに絶対モテるでしょう」
「否定はしませんけど理想のタイプの人からは好かれないんですよね~」
「そっか。好きと言われても好きにならない側の人間だ」
「それって何か絶対に偏見入ってますよね!」
二人の会話が恋人同士の空気になっていく。
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