夜を飼う水族館
深夜零時を過ぎると、街外れの古い水族館で開いているはずのない展示室が現れるらしい。
そこには魚はいない。
月光を閉じ込めた水槽。
夜空の欠片みたいな深海。
星屑のように漂う海月のようなもの。
そして、誰かが眠れなかった夜だけが静かに展示されている。
「夜を飼っているんです」
昔、誰かがそんなことを言っていた。
悲しみや孤独を消してしまうのではなく、綺麗なまま保存するための場所なのだと。
水槽越しに揺れる青い光を見ていると、自分の中にもまだ、名前の付いていない夜が残っていたことを思い出す。
ここは水族館なのか、誰かの記憶なのか、それとも夢の続きを集めた場所なのか。
たぶん、その境界はもう、曖昧なものになっている。
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