しゅうまつがやってくる。(0:0:2)
世界最後の日を、大好きな君と。
ジャンル:ヒューマンドラマ
上演時間:20分(推定)
登場人物:2人(不問×2)
アノ:不問。ユノがすき。
ユノ:不問。アノがすき。
0:
アノ:「さあ、行こう!」
0:走り出す
ユノ:「あっ」
アノ:「走って!走って!」
ユノ:「待って!待ってよ!」
0:追いかけるユノ
アノ:「待たなーい!」
ユノ:「危ないよ、アノ!」
アノ:「大丈夫だよ!ユノってば臆病だなあ」
ユノ:「でも、道が割れて標識は倒れてて、踏んづけたら転ぶかもしれないよ!」
アノ:「気をつければ大丈夫!」
ユノ:「違うよ、僕が転ぶかもしれないだろっ」
アノ:「ユノが?それは困ったなあ。それじゃあ」
ユノ:「?」
アノ:「手を繋ごう!」
ユノ:「わあ、急に引っ張らないでよ!」
アノ:「これで転ぶ時は一緒だから大丈夫!」
ユノ:「だからそう言う事じゃ…!」
アノ:「あはは!」
0:走る二人の息遣いと足音
ユノ:「しゅうまつがやってくる。」
アノ:(M)しゅうまつがやってきた。
アノ:みんなが楽しみに待っていたしゅうまつが、ついにやってきたのだ。
アノ:だから私達はお祝いをして喜んだ。
アノ:待ち望んでいた幸せな世界は、あと少し。
アノ:でも私は、思い出してしまった。
アノ:『どうしてここに、ユノがいないの?』
0:走る音
ユノ:「ねえ!ねえってば!どこまで行くの?」
アノ:「あの山の上まで!」
ユノ:「僕達の足で走って行くのは無理だよ!」
アノ:「大丈夫!あ、ほら来た。乗って!」
ユノ:「えっ、これって…!」
アノ:「早くー!」
ユノ:「でも勝手に乗ったら…っ」
アノ:「えいっ(引っ張り込む)」
ユノ:「うわあ!」
0:転がるように入る
アノ:「あはは、変なこえ!」
ユノ:「アノが急に引っ張るからだろ、いてて」
アノ:「ふふ」
ユノ:「わ、動いた。なんでまだロープウェイが動いてるんだろ…」
アノ:「私がお願いしたから!」
ユノ:「アノがお願いしただけで電気が動く筈ないよ」
アノ:「動くよ?」
ユノ:「はいはい、アノは神さまの子だもんな」
アノ:「ユノもコロニーで産まれたんだから神さまの子だよ」
ユノ:「そうだけど、今はもう違うよ」
アノ:「あ、そっか。ごめん」
ユノ:「いいよ」
アノ:「ねえ見て、町がどんどん小さくなってく」
ユノ:「ほんとだ…」
アノ:「あそこ、遊園地かな」
ユノ:「どうだろう?地震でほとんど崩れちゃったから分からないね」
アノ:「じゃあそう言うことにしよ」
ユノ:「うん」
アノ:「ユノは最近、なにしてたの?」
ユノ:「学校に通ってたよ」
アノ:「学校ってどんなところ?」
ユノ:「どんなって。勉強したり、友達と遊んだり…」
アノ:「友達と遊ぶは、私もしてるよ!勉強もしてる!なんだ、町でも同じような事をしてるんだ」
ユノ:「でもちょっと違うよ」
アノ:「何が違うの?」
ユノ:「町にはたくさんの人がいるんだ。先生も、友達も、びっくりするくらい沢山!」
アノ:「みんなの家にも沢山の人がいるよ?」
ユノ:「もっともっと沢山だよ」
アノ:「ユノは私と遊ぶより、その方が楽しい?」
ユノ:「そういう訳じゃないけど」
アノ:「じゃあ、私が遊んであげる!」
ユノ:「アノ…」
アノ:「だから一緒にいて」
ユノ:「それは無理だよ」
アノ:「どうして?」
ユノ:「パパが言ってたんだ。これから僕は、ママやアノと別々に暮らすんだよって」
アノ:「アノもママに言われたよ。パパとユノは遠くにいったって」
ユノ:「だから無理なんだよ」
アノ:「でも、パパはどこ?」
ユノ:「…分かんない。大きな地震のあと帰ってこなくて。探したけど、見つからないんだ」
アノ:「それじゃあ、ユノが一人ぼっちになっちゃう」
0:繋いだ手をゆらす
アノ:「一人は寂しいよ、一緒にいよう?」
ユノ:「…」
アノ:「ママも心配してるよ。だから私が町に様子を見に行くことを特別に許してもらったの」
ユノ:「ママ…」
アノ:「ユノが帰ってきたらみんな喜ぶよ!」
ユノ:「でも、もしパパがまだ僕を探してたら?」
アノ:「……」
ユノ:「パパが一人ぼっちになっちゃう」
アノ:「…ユノは、ママや私よりパパが大事?」
ユノ:「そう言うわけじゃないよ。でも…」
アノ:「ユノはパパが心配だからついていったんだよね?ちゃんと謝れば、ぼくし様も許してくれるよ!」
ユノ:「違うんだ!ぼく、ぼくね。外に行きたかった。産まれてから一度もみんなの家から出た事がなかったから。…それでパパについて行ったんだよ」
アノ:「ユノ…」
ユノ:「ごめん」
アノ:「なんで?みんなの家を出ていくのは悪い事だって、ぼくし様が言ってたのに」
ユノ:「…一度でいいから、見てみたくて」
アノ:「なにを?」
ユノ:「空まで伸びるおおきなビルに、ホタルみたいな街明かり」
アノ:「見れた?」
ユノ:「うん、凄く綺麗だったよ。アノにも見せてあげたかった」
アノ:「地震でみんな壊れちゃったね」
ユノ:「…そう、だね…」
0:沈黙、どちらともなく歌う或いは呟くように
アノ:「もう直ぐ神様やってきて」
ユノ:「どんがらがっしゃん壊れてく」
アノ:「悪い人は皆(みな)死んで」
ユノ:「良い人たちだけ残りましょう」
アノ:「はこぶね浮かべて天の川」
ユノ:「天の国へと参りましょう」
アノ:「優しい正しい綺麗な世界」
ユノ:「さぁさ、みんなで行きましょう」
0:一拍
ユノ:「ねえ、僕たちはどこへ向かってるの?」
アノ:「みんなの所。あ、ついた。降りよう」
ユノ:「…」
アノ:「ユノ?どうしたの?」
ユノ:「僕、やっぱり町に戻らなきゃ」
アノ:「危ないからダメだよ」
ユノ:「でもお父さんが」
アノ:「ユノ。私達は子供だから許してもらえるかもしれない。でもパパは自分の意思で教えに背いた。だから見つけても許してもらえないよ」
ユノ:「でも僕はお父さんを悪い人だとは思えない。パパはいつも僕たちを庇ってくれたし…。あの場所は地震が多いから早く逃げなきゃって連れ出してくれたんだ」
アノ:「地震は最後の日が近い証拠だよ。みんなは喜んでたのになんで怖がるの?」
ユノ:「それは…」
アノ:「ユノはまだ子供だね」
ユノ:「え?」
アノ:「行こう?松の木の下に、秘密の入り口があるの」
ユノ:「秘密の入り口?」
アノ:「はこぶねの入り口だよ。天の国へ行く為の」
ユノ:「本当に完成したんだ…」
アノ:「うん。本体を山の中に隠してるんだって。だから全体は見た事はないけど、ぼくし様が完成したって言ってた。神様が地球におりてきた時、私達はこのはこぶねに乗って天の国へ行く」
ユノ:「…」
アノ:「町の人たちは『終末論なんてばかげてる』って散々私達をバカにしたけど。結局、私たちが正しかった。ざまぁみろ」
ユノ:「アノ…」
アノ:「今更、全員を乗せることは出来ない。でもユノは家族だから助けたいの。だって家族を愛すのは良い事だから」
ユノ:「……」
アノ:「さあ、行こう」
ユノ:「…うん」
0:手を繋いで歩き出す
ユノ:「アノは、疑った事はなかったの?」
アノ:「何を?」
ユノ:「ぼくし様のおはなし」
アノ:「あー…」
ユノ:「『もう直ぐ神様が地上に降りてきて悪人を滅ぼすから天の国に行けるように備えましょう』なんて、御伽話より嘘くさいと思わない?」
アノ:「本当に来るのかなぁと思ったことはあるよ。でも『みんなの家』で暮らす人達は全員その日が来る事を信じてた。だから私も信じることにしたの」
ユノ:「僕達がいなくなった事はなんて言われた?」
アノ:「ママはたくさん泣いてたよ。ぼくし様は『彼はあくまに負けて神の子を連れ去った』って皆に言ってた」
ユノ:「そっか…」
アノ:「でもそのおかげでママはみんなから可哀想って言ってもらえるの。ぼくし様にも特別に可愛がられてるんだって。それで余計にやる気が出たみたい」
ユノ:「…ねえ、アノ」
0:足を止める
ユノ:「僕達、本当にこれでいいのかな」
アノ:「どう言うこと?」
ユノ:「例えば、このまま船に乗って、かみさまにすくわれて天の国にいったら、そこにあるのかな」
アノ:「何が?」
ユノ:「しあわせ」
アノ:「…分かんない。私、見た事ないから」
ユノ:「僕もない。…でも多分、無いと思う」
アノ:「…」
ユノ:「それならさ、僕達だけで探そうよ」
アノ:「え?」
ユノ:「僕達の、僕達だけのしあわせ」
アノ:「私たちだけの…しあわせ…?」
ユノ:「うん」
アノ:「でも、どうやって?もう直ぐ世界は滅んでしまうのに」
ユノ:「今からでもまだ遅くないよ。アノは、何がしたい?何をしてる時が幸せ?」
アノ:「わかんない」
ユノ:「僕はね、もっとアノと遊びたい!」
アノ:「!」
ユノ:「世界のおわりも神様もどうでもいい。アノと二人で、たくさん遊びたい!」
アノ:「私も!私もユノと遊びたい。でも…」
ユノ:「アノ。どうせ世界は終わるんだ。もう誰も君に痛いことはしない。良い子じゃないからって殴られる事もない。殴られる君を見るのは本当に辛かったんだよ」
アノ:「ユノ…、」
ユノ:「いいじゃない、僕達ふたりで。二人でいようよ」
アノ:「…うん、そうだね。ユノがいればいい」
ユノ:「行こう!」
0:手を繋いで走りだす
アノ:「ちょっと、急に走らないで!」
ユノ:「あははっさっきと逆だね!」
アノ:「どこに行くの!」
ユノ:「どこに行きたい?」
アノ:「…どこでもっ」
ユノ:「あははっ」
アノ:「あははっ」
0:楽しそうに笑いながら走る
ユノ:「見て!空に星が走ってる!綺麗だね!」
アノ:「すごい、綺麗…!」
ユノ:「落ち葉の山!」
アノ:「ふんじゃえっ」
ユノ:「あははっ」
アノ:「川があるよ!」
ユノ:「えーいっ」
アノ:「ちょっと、いきなり水かけないでよ!」
ユノ:「あははっ」
アノ:「おかえし!」
ユノ:「うわっ」
0:
アノ:「ねぇ見て、こんな所にブランコがある!」
ユノ:「本当だ!誰が作ったんだろ」
アノ:「ちょっとぐらぐらしてるけど大丈夫かなぁ」
ユノ:「多分、大丈夫だよ!乗って!」
アノ:「うんっ」
0:ブランコを漕ぐ
アノ:「わぁ…」
ユノ:「押してあげるね、どう?楽しい?」
アノ:「うん、…楽し、…」
0:不意に俯く
ユノ:「アノ?どうして泣いてるの?」
アノ:「…ユノ、聞いて」
ユノ:「うん」
アノ:「私、悪い子なんだ。…良い子でも、神様の子でもない!」
ユノ:「…何があったの?」
アノ:「あのね、パパはもういないの。死んじゃったの。知ってるんだ私。だって私、私が、パパを」
ユノ:「アノ」
アノ:「パパが悪いんだよ!ユノを連れていっちゃうから!私、一人ぼっちになっちゃったんだよ?怖かったの…!寂しかった!…だからパパがいなくなったら、ユノが帰ってくるとおもって。ごめんなさい。ごめんなさい」
ユノ:「アノ!」
0:強く手を握る
ユノ:「もう、いいよ」
アノ:「…っ」
ユノ:「大丈夫。きっと生きてるよ、どこかでまだ僕を探してる。僕はそう信じる。…それでも僕は君と逃げる事を選んだ。だから、もうバイバイしなきゃ」
アノ:「うん…っ」
0:目を擦り顔をあげる
アノ:「分かった、もうごめんなさいは最後にする」
ユノ:「うん」
アノ:「…ねえ、ユノ。本当に世界は終わるのかな」
ユノ:「…多分ね」
アノ:「最後はどうなるのかな。宇宙に放り出されて離れ離れ?」
ユノ:「手をぎゅっと繋いでいたら大丈夫」
アノ:「ユノは怖く無いの?」
ユノ:「怖いよ。ううん、怖かった。少し前までね。でも今は君がいるから、怖くない」
アノ:「…宇宙にいる私達を、神様はすくいあげてくれるかな」
ユノ:「アノ…」
アノ:「私は人殺しだからさ、ユノだけでも」
ユノ:「神様が許してくれても、僕は君がいない世界にはいきたくないよ。もう二度と離れないで」
アノ:「うん」
ユノ:「ねえ、アノ。…もし次の世界があるなら」
0:話を遮るように、空を見て思わず声を上げるアノ
アノ:「あ。見て、ユノ。お空が虹色に光ってる」
ユノ:「…本当だ」
アノ:「綺麗、すごく綺麗だね」
ユノ:「うん。…綺麗だね」
0:2人、強く手を握り直す
ユノ:「…あのね、僕も君に言わなきゃいけないことがある」
アノ:「なぁに」
ユノ:「パパについていった本当の理由はね。外を見たいから、じゃないんだ」
0:驚いた顔にキスをするユノ
ユノ:「ぼく、君が好き」
アノ:「え…?」
ユノ:「君とはもう家族ではいられないと思うくらい、君が好きになってしまったの」
アノ:「…」
ユノ:「兄弟を好きになるなんていけない事だ。こんな事がバレたら君まで酷い目にあう。だから僕はあの家を出た。…だから今こうして最後の時間、君を独り占めできて、僕は本当に幸せだよ」
アノ:「…あの時、こうやって連れ出してくれたらよかったのに」
ユノ:「そうだね」
アノ:「ばかだなぁ、ユノ。…私があなたを拒絶するはずがないのに」
ユノ:「…そう、だね」
アノ:「もっと早く知りたかったなあ」
ユノ:「ごめん」
アノ:「ううん、もういいの」
ユノ:「…」
アノ:「ユノとまた遊べて楽しかった」
ユノ:「楽しかったね」
アノ:「もっと遊びたかった」
ユノ:「もっと遊びたかったね」
アノ:「ねえ、もし別の世界で生まれ変わる事があるならさ」
ユノ:「うん」
アノ:「きょうだいになんて、生まれないでね」
ユノ:「…うん」
アノ:「 …あ、ほら見て。 神様が来たよ」
0:暴風、轟音
ユノ:世界がきらりと輝いて、神様が空から落ちてきた。僕たちはつよく手を握りあって笑う。
アノ:「天国なんて、クソ喰らえ!」
ユノ:そして、世界に。
ユノ:しゅうまつがやってきた。
0:end
お疲れ様でした。
ものかき的、終末の物語でした。
物語を考え始めたきっかけは、Xで世界の終末の物語の企画を見て「いいなぁ私も書きたいなぁ」と思った事なのですが、今回も案の定、波に乗り遅れての完成でした…。
本当はもっと登場人物も多く、長くなる予定のお話でした。でも題材が題材なだけに重くなりすぎる。それならいっそ「アノ」と「ユノ」から見える世界だけを切り取ろうと思い、この形になりました。
書くことに葛藤した作品でもありますが、最後は特に、概ねイメージした光景が描けて満足。今回書かなかった部分の物語は、いずれ別の形で作品に出来たらな、と思っています。
どうでもいい小話。
名前の由来。
アノ→Unknown(アンノウン)
言葉の意味:未知の。知られていない。
外界から隔離され人に知られていない『みんなの家』にいるから。
ユノ→You know(ユーノウ)
言葉の意味:話の切り出しや相槌に使う言葉。
ユノがアノにずっと言えなかった事を切り出してるから。
「アンノウン」→「アンノゥン」→「アーノー」→「アノ」
「ユーノウ」→「ユーノー」→「ユノ」
かなり強引な音遊びでした。笑
それでは最後までお付き合いいただきありがとうございました。またどこかで。
