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人妻コンセプトカフェ 《おかえり、あなた》 第1話

○○:やっと終わった…


就職から3年

初めて任された大きなプロジェクトが無事に終わって、残業続きだった日々もひとまずは終わって

何も考えずに街に繰り出してきた


○○:ご褒美…、なにかご褒美を…


ここまで頑張った自分に何かご褒美を与えたくて

でも高いものを買うのは流石に良くないような気がして


○○:…女の子に癒されに行こう


大学時代から実はコンカフェに行くことが好きだった

現実世界とは全く異なる世界観

そしてその世界観を可愛らしい女の子が全力で守っている

そんな空間が好きだった


○○:ひとまずぶらぶら探してみるか


ネットで探せば早いのは分かっているが、こういうのは自分の目で見て回るのが自分なりの流儀

メイド系はもちろん、異世界勇者や男装カフェなど、色々なコンセプトが鎮座している

そんな混沌の世界を歩いていると、とあるカフェに目が止まる


○○:人妻コンカフェ…?


視界に入ってきたのは人妻がコンセプトのカフェ

店名は"おかえり、あなた"

ぶっ飛んだ世界観が多い中で、最も現実に即したコンセプトで、その異質さにどこか興味が湧いてきて


○○:…ここだな


俺はこの人妻コンカフェに入ることを決心した








ボロボロなエレベーターに乗ってビルの4階へと向かう

人妻コンカフェのため、年齢層が高い人が多いんじゃないかと不安になったものの、ここまで来たら引き返せない

4階に着き、一旦深呼吸をして店の扉を開ける


○○:…失礼します


その瞬間、店内からは

"おかえり、あなた"

そう言われて、キャストの人に迎えられる

店内には人が居なくて、客は俺だけで


○○:…外したかこれ


せっかくのご褒美が無駄になってしまったのではないかと思っていたが


"おかえり!あなた、今日は仕事終わり?"


そう言って、話しかけてきてくれた人はものすごい美人で

胸元のネームプレートには"保乃"と書かれている


○○:はい、やっと大きな仕事が終わって…

保乃:お疲れ様やで、よう頑張ったなぁ…


そう言って頭を撫でてきてくれる保乃さん

しかもまさかの関西弁

こんな関西美女がこのカフェに眠っていたってことなのか…?

そう思えばめちゃくちゃ大当たりを引いた気がする


保乃:そや、名前だけ教えて貰ってもええ?

○○:あ、○○って言います


自分の名前を教えつつ、カフェの1番奥にあるテーブル席に案内される


保乃:○○はもうお腹すいた?

○○:ぺっこぺこです

保乃:ほな、○○の為に美味しいご飯作ってくるなっ!


そう言って、笑顔で店の奥に消えていく保乃さん

メニューとか無いのかと思って、机の上にある説明書的なものを読んでみる

どうやら、ここのお店ではキャストがお客様に合ったご飯や飲み物を提供してくれるらしく、メニューという概念がないらしい

しかも1番驚いたのが、どうやらここで働く人は全員本当の人妻で、ちゃんとお相手がいるらしい


○○:斬新だし、それはそれで面白いな…


お相手が許してくれたのか、それとも黙って働いているのかは分からないが、こんなコンカフェは初めてで

待ち時間、どこか携帯を見る訳でもなく店内の雰囲気を見渡してみる

キラキラしたコンカフェより落ち着いた雰囲気で、他にも一応キャストさんがいる


○○:…あの子めっちゃ小さいな


凄く大人っぽいキャストもいれば、ちんちくりんな可愛らしい女の子までいて


○○:え、あの子も人妻なの…?


自分よりも年下そうなのに彼女もおそらく人妻で


○○:まあ若くして結婚なんて普通に有り得るしな…


そう思いつつ、まだ相手もいない自分が何なのかと少しだけ悲観してしまう

そんな中、気を散らすために携帯を触って待っていると


保乃:待たせてごめん、○○の為に頑張ったで!

○○:おぉ…


目の前には味噌汁に焼き魚、ご飯に漬物

通常のコンカフェでは絶対に見ないような和定食が出てきた


保乃:その…、愛情とかいっぱい込めたから…///


人妻がまさかの目の前で照れていて

こっちもそんな姿ににやけてしまう


○○:じゃあいただきますっ…

保乃:うんっ…


不安そうな顔をしてこちらを見てくる保乃さん

味噌汁を1口飲んでみると、それは凄く優しい味がして


○○:おいしい…

保乃:ほんまにっ…!良かったぁ…


安堵したのか、顔の表情が緩まって、可愛らしい笑顔に戻る保乃さん

焼き魚も漬物も全部美味しくて、コンカフェ界隈で最も美味しいご飯を提供してくれた気がする


○○:どれも全部美味しい…!

保乃:そりゃ保乃がいっぱい○○への愛を込めて作ったんやから!

○○:今まで食べた中でいちばん美味しいです!

保乃:○○の奥さんなんやから、それぐらい当たり前やんっ!


そうだ、この世界観では俺の奥さんは保乃さんで


○○:やっぱり、保乃のご飯が1番美味しいね

保乃:っ…///


夫ならさん付けも敬語でも話さないだろうと思って、ちょっと格好つけて呼び捨てで話しかけてみる

すると目の前の保乃さんは顔を赤くして


○○:保乃…?

保乃:いきなり名前呼びはずるいやんっ…///

○○:だって俺の奥さんだし…

保乃:そ、そうやけどっ…!///

保乃:ドキッとするやんか…///


俺はこうやってコンセプトに溶け込んでその世界を生きるのが1番楽しい

傍から見れば変人だろう、けどそれが許されるのがコンカフェなのだ


○○:ごめん、保乃、飲み物も欲しいなって思うんだけど

保乃:すぐ持ってくるなっ…!


そう言って保乃さんは颯爽と去っていく


○○:…楽しいなここ


美人な人が自分の奥さんとして振舞ってくれる

もちろんそれがお金を払った上で成り立つ関係だとしても、今まで味わったことの無い世界観に興奮してしまっている自分がいる


保乃:お茶でも良かった…?

○○:お茶が良かったんだよ、ありがとうね

保乃:えへへっ…///


保乃さんが持ってきてくれた飲み物を飲んで、落ち着いて

お腹もいっぱいで、最高のご褒美だ


保乃:満足してくれたっ…?

○○:もちろん、幸せすぎる

保乃:じゃあ思い出に写真とか撮らへん…?

○○:え、撮ろうよ

保乃:やったっ…


コンカフェたるもの、チェキは必須

しかも多くはチェキにコメントを書いてくれる、それを見るのも楽しくて


保乃:ほなこっち来てもらってもええ?

○○:分かった

保乃:○○と写真撮れるなんて幸せやなぁ…


写真を撮る用のエリアに移動して、保乃さんとツーショットを撮る準備をする

撮ってくれるのはさっき目に入ったちんちくりんな女の子


保乃:愛季ちゃん、ほなお願いしてもええ?

愛季:はいっ、任せてください!


カメラも準備万端で、2人横並びになる

基本こちら側からキャストへの接触は禁止なのが一般的だが、どこか保乃さんは距離が近くて


保乃:…もっと近づいてや

○○:いやでも…

保乃:ええから、思い出作ろ?

保乃:だって保乃は○○の奥さんなんやで?


その一言にやられて、肩が触れ合って

目の前の愛季さんも少し驚いた様子だったが、そのままカメラのシャッターは落とされた


保乃:ありがとうっ!

○○:いやいや、こちらこそ

保乃:もっとええ思い出になるようにメッセージ書くから、ちょっとまっててなっ!

○○:分かった、待ってるね

保乃:うんっ!


言われた通り元いたテーブルに戻って、メッセージ付きのチェキがやってくるのを待つ

すると、先ほど写真を撮ってくれたキャストの方がやって来て

愛季:あの…

○○:あ、えーっと、愛季さんでしたっけ?

愛季:そうです!

○○:あ、自分は○○って言います

愛季:○○さんですねっ!


目の前でにっこり笑う愛季さんは人妻だとは思えないほどのあどけなさが残っていて


愛季:○○さんはここのお店初めてなんですか?

○○:うん、ふと目に入って気になって来たって感じかな

愛季:…じ、じゃあ今度来てくれる時は愛季を奥さんにしてくれませんか?

愛季:その…、一目見て○○さんの奥さんになりたいなって思ったので…///


次も来て欲しいというセリフが、このお店では"奥さんにして欲しい"というセリフへと変わる

そのセリフの威力は十分で


○○:も、もちろん!次は愛季さんに奥さんになってもらおうかな

愛季:ほんとですかっ!やった…!


これが営業スマイルだとは分かっていても、簡単に気分が良くなってしまうのが男というもので


保乃:お待たせ〜!出来たで!

愛季:じゃあ私はここらへんで失礼しますね、また会いましょう!

○○:うん、またね


手を振りながら去っていき、さっきまで愛季さんがいた所に保乃さんがやってくる


保乃:私以外の女の人と仲良くしとったな〜?


頬を膨らませて、怒っているような表情を向けてくる保乃さん


○○:あ、あれは話しかけられたからつい…

保乃:うそうそっ!はい、これチェキ!


そう言って渡してくれたチェキには可愛らしい文字で

"本当に○○さんの奥さんになれたら嬉しいな?"

と書かれてあって


保乃:大事に持っといてな!

○○:うん、もちろん

保乃:無くしたら許さへんからな!


無くさないように、ひとまずチェキを財布の中にしまう


○○:じゃあ俺は帰ろうかな、そろそろ


時間帯的にも、家に帰ってゆっくりするにはちょうど良い時間で


保乃:そっかぁ…

保乃:寂しいなぁ…


名残惜しそうな顔をしている保乃さん

そりゃ居れるならもっと居たいけれど、時間もお金も飛んでしまうのは事実で


○○:また来るから!

保乃:絶対やで?ほの、○○に会えな寂しくなってまうから…

○○:約束する!

保乃:ほな、今日はしゃあない、会計して玄関まで見送るな?


カードで会計を済ませると、保乃さんは玄関までちゃんと見送ってくれて


保乃:ほなまたね、待ってるから!

○○:うん、ありがとう!


エレベーターが閉まるギリギリまで全力笑顔で手を振ってくれて


○○:…めちゃくちゃ可愛いし、当たりだったな


気付けば溜まっていたストレスは全て消え去っていて

帰り際、携帯で"コンカフェ  おかえり、あなた"と検索するとホームページがヒットする


○○:次は愛季さんに会いに行かないとな…