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日本の選挙カーを不審に思うスペイン人夫婦

日程には臨機応変に対応することが大事です。

「台風が来そうだから来週の用事はキャンセルしよう」
「昼間は熱中症の危険性があるから買い物は夕方にしよう」
「人身事故が起こって電車が動いていないから今日は家にいよう」

このように、私たちはその時その時の状況に応じて日常生活を送っています。

しかし、外国人旅行客の場合はそうはいきません。

旅行日は1ヶ月以上前から決まっています。到着便と帰国便があり、たとえば2週間というタイムリミットがあれば、そのリミット内で何としてもやりたいことをやりきらなければなりません。

ですが、誰しも偶然は避けられません。

旅行中に台風や地震に見舞われるかもしれません。人身事故が起こって移動不可能に陥ってしまうかもしれません。そうなれば、予定を変更しなければならなくなります。

もちろん、良い偶然に恵まれることもあります。

旅行期間中に大きな花火大会があったり、公園で音楽イベントをやっているかもしれません。

こうした滞在中の偶然の1つに『選挙』があります。

今回は、スペインから来日された60代のご夫婦の東京滞在が、日本の選挙期間と丸被りしたときのエピソードです。






選挙と被るかも?

ちょうどご夫婦の旅程が決まったときくらいに、ニュースで解散総選挙が行なわれるのではないかという報道が出ました。

観光と選挙が被っても、特に影響はありません。外国では、選挙の日は博物館が閉館になったり、スポーツイベントが延期になったりしますが、日本ではすべてが通常運転してくれるので助かります。

とはいえ、観光と選挙が被ったからといってメリットが産まれるわけでもありません。

むしろ、選挙カーや演説で街中がうるさくなるのと、演説周辺の人の流れが止まるので混雑します。なので、個人的には「できれば被らないでほしいなぁ」とは思っています。

しかし、私はあまりツキのない人間なもので、スペインからのお客様が到着される日から帰国されるまでの期間において、選挙が丸々と被ってしまいました。



「あんな騒がしい人に誰が投票するの?」

お客様のガイドをしている間、街のあちこちで選挙ポスターと選挙カーを見ました。

スペインには選挙カーというシステムがありません。そのため、「あれは何なのか?」「何を言っているのか?」「何を目的としているのか?」を、ご夫婦から積極的に質問されました。

私が、候補者が票を入れてくれとお願いしているのだと説明すると、奥様のほうがポカンとした顔でこう言いました。

「あんなに騒がしい人にいったい誰が投票するの?」

ごもっともです。

奥様は続けました。

「街中や繁華街でスピーカーを使って話すならまだしも、住宅街でやるのは理解できない。病気で寝ている人がいるかもしれない。昼寝をしている赤ちゃんがいるかもしれない。仕事をしている人の集中力を奪うことになるし、もしペットがいれば驚いてストレスを与えてしまう。そんな迷惑も考えられないような人が、社会を引っ張る立場に就いてはいけない

ごもっともです。



「だいたい嘘つきよ」

スペインには選挙ポスターという仕組みもほとんどありません。

そもそも、もしスペインで選挙ポスターを壁に貼ろうものなら、すべてビリビリに破られるとのこと。

私が、日本ではポスターを破るのが犯罪だから逮捕されると説明すると、

「でも、ポスターをはがした人が1万人もいれば逮捕なんてできませんよ。サッカーと同じ理論です。審判に抗議するときはチーム全員で行くんです。1人で行ったら退場になります。ですが、全員で行けば審判は全員を退場にできないので、ある特定の1人を退場にすることもできなくなります。それと同じことです」

と、旦那様は冗談っぽく教えてくれました。

お客様がポスターに書かれている内容を知りたいとのことだったので、訳してあげました。

何と書かれていたかは正確には覚えていません。おそらく『1人はみんなのために、みんなは1人のために』的なことだったと思います。

「そんなことを言っている政治家はだいたい嘘つきよ」

と、奥様はその候補者のことを鼻で笑いました。



雰囲気を大事にして

観光と選挙期間が被ったため、移動中の雑談などでは政治の話題が自然と多くなりました。ガイド期間を通じて頻繁に言われたのは「日本はスペインのようになってはいけない」ということでした。

ご夫婦によると、今のスペインは昔よりもはるかに雰囲気が悪くなってしまったそうです。

デモは多発し、治安も良くない。不法移民やホームレスが増え、政治も社会も言い争いばかり。人々の緊張感と警戒心が高まっており、どんよりとした空気が流れているとのことです。

そのような状況なので、多くの若者がスペインを出たがっているそうです。

実際、看護師として働いているご夫婦の娘さんは、大学在学期間中にベルギーに留学し、卒業直後にベルギーに戻って仕事を始め、今ではベルギー人の旦那さんと結婚して暮らしているとのことでした。

ご夫婦は「日本の政治のことは分からないし、何が良くて何が悪いのか知らないけれど」という前置きで、次のメッセージをくれました。

「日本はどうか社会の雰囲気を大事にしてほしい」


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