『世界の一流は「雑談」で何を話しているのか』ピョートル・フェリクス・グジバチ
はじめに
雑談。
そう聞くと、取りとめもない話と思えて、重要に思えませんが、この本を読むと、雑談はバカにできないなと思います。
公私ともに、生きていく上で、人とのコミュニケーションは避けて通れません。
特に仕事においては、本題に入る前の雑談で、人となりが分かったり、距離を詰めたりする効果があります。
本のこと
世界の一流は「雑談」で何を話しているのか
ピョートル・フェリクス・グジバチ
メモ
Google流の「雑談」は、オープンな情報交換
グーグルでは、「Let's chat!」 というフレーズが頻繁に飛び交っていました。 あえて直訳すれば、「雑談しましょう!」という意味になりますが、世間話や無駄話をするわけではありません。 アジェンダ(行動計画)が成立していない段階で、お互いのプランや課題をシェアして、「どんなプロジェクトができるのか?」、「どんなアウトプット(成果)を目指すのか?」、「どこに問題があるのか?」などについて、 オープンで「ざっくばらん」な情報交換をすることが目的 です。 グーグルは、全員がフレックスタイムで働いており、仕事をする場所も自宅であったり、カフェであったり、自由に選んでいますから、コミュニケーションの機会を意識的に増やしておかないと、仕事に支障が出る可能性があるのです。 これがグーグル流の「雑談」の正体です。
「dialogue」5つの目的
世界のビジネスシーンで、一流のビジネスマンが交わしているのは、日本的な雑談ではなく、「dialogue」 に近いものだと思います。 ダイアログとは、「対話」という意味ですが、単なる情報のやりとりだけでなく、話す側と聞く側がお互いに理解を深めながら、 行動や意識を変化させるような創造的なコミュニケーション……を目指した会話です。 具体的には、次のような5つの意図を持って、ビジネスの相手と対面しています。 ① 状況を「確認する」 ② 情報を「伝える」 ③ 情報を「得る」 ④ 信用を「作る」 ⑤ 意思を「決める」 彼らは明確な意図を持って目の前の相手と向き合い、「雑談」を武器としてフル活用することで、仕事のパフォーマンスを上げ、成果を出す ことを強く意識しています。
「明確な意図を持ち、そこに向かって深みのある会話をできる人」が、雑談の上手い人
多くの日本人ビジネスマンは、「雑談が上手い人=おしゃべりが上手で、面白い話をする人」 と考えているようですが、ビジネスの現場では、それだけでは不十分です。 世界基準のビジネスの最前線では、「明確な意図を持ち、そこに向かって深みのある会話ができる人」 こそが「雑談の上手い人」とされています。
自己開示の効果
自己開示とは、プライベートな情報を含めて、 自分の「思い」や「考え方」などを相手に素直に伝える ことです。 自己開示をすると、相手に「自分がどんな人物なのか?」を知ってもらえますから、警戒心を解きやすくなり、 お互いの心理的な距離を縮める ことができます。 自然と相手も自己開示しやすい雰囲気ができるため、一歩踏み込んだ関係性を生み出すことにつながります。 コミュニケーションにおける自己開示は、信頼関係を築くために欠かせない大事なポイントと考える必要があります。
明確な意図、目的を持って、雑談を武器として考える
世界の第一線で活躍するビジネスマンは、明確な意図や目的を持って、雑談を「武器」として活用しながらビジネスの相手と対峙しています。 思いつきの世間話でお茶を濁すのではなく、あらゆる角度から検討して、可能な限り「戦略的」に雑談を構成しているのです。 彼らが雑談を通して「手に入れたい」と考えているのは、次の3つのことです。 ① お互いに「信頼」できる関係を築く ② お互いが「信用」できることを確認する ③ お互いを「尊敬」できる関係を作る 雑談を通して、「信頼」と「信用」、「尊敬」のある関係を築いて、 心理学でいう「ラポール」を作る ことを目指しています。 ラポールとは、お互いの心が通じ合い、穏やかな気持ちで、リラックスして相手の言葉を受け入れられる関係性を指します。
「相手が何を大切にしているのか?」を意識する
目の前の相手が、そもそも「どういう人で、何を大切にしているのか?」 を「exploration」(探査)することも雑談の大切な目的のひとつです。 例えば、「ご家族はいらっしゃいますか?」という質問をひとつするだけで、たくさんの情報を得ることができます。 相手が「妻と3歳の男の子がひとり」と答えたならば、「普段はご家族とどんな時間を過ごしているのですか?」と質問を重ねることで、これからの交渉の進め方の手がかりを入手することが可能になります。 相手が子供のことが大好きで、仕事が忙しいけれども、できるだけ早く帰って子供と一緒にいる時間を作りたい……と考えているのであれば、「この後、飲みに行きませんか?」と誘うのではなく、「できるだけ短時間で面談を終えて、早く帰れるようにしましょう」 と伝えることができます。
CtoC(個人対個人)の関係性が重要
相手が予算を含めて何かを決める立場にあるならば、「この人でいこう」とか、「この人たちに任せたい」と思わせるような「心の動き」を作る必要がある のです。 ・当社のことをしっかりと調べて理解している ・考え抜かれた面白いプランを持っている ・他社と違う視点があり、本質がわかっている 雑談によって、こうしたことを相手に伝え、相手がそれを納得することで、ようやく心の動きが始まります。 流動的で変化の激しい現代のビジネスでは、商談やプレゼンの場で効果を発揮するのは、マーケティング戦略でいう「BtoB」(Business to Business=会社対会社)の関係ではなく、あくまで「CtoC」(Consumer to Consumer=個人対個人)の関係性 です。
周到な準備をして、相手に照準を絞って提案する
欧米の一流ビジネスマンは、スライドやパワーポイントで作成したプレゼン資料を準備するだけでなく、相手企業に関する業界ニュースなどに目を通して現状を把握するのはもちろん、担当者の仕事との向き合い方や考え方、家族構成、趣味・趣向などを徹底的に調べ上げて事前準備を整えます。 その担当者にピンポイントで照準を合わせて、武器(雑談)を用意する のです。 ・どんな情報を求めているのか? ・何を知りたがっているのか? ・何を心配して、何を不安に思っているのか? ・どんなプロセスでプレゼンすれば納得するのか? ・相手はどのタイミングで意思決定をするのか? ・最終決定は誰がするのか? こうした視点から総合的に判断して、適切な雑談をスタートさせます。 「ご長男の太郎さんは来年には中学生になられるそうですが、受験はされるんですか? 最近の中学受験はこんなことがポイントになっているようですね。そのための準備としては……」 相手が最も関心を寄せている話題について、有益な情報を提供することで、「信頼」「信用」「尊敬」を得るための第一歩を踏み出しているのです。 僕が大切にしている英語の名言に「I'd like to finish my work before I start it」というものがあります。 「仕事を始める前に、それを終わらせるのが好き」 という意味ですが、世界で活躍するビジネスマンは確実に成果を得るために、周到な準備を整えて相手と向き合い、本題に入る前に仕事を終えてしまう……くらいの覚悟を持って雑談をしているのです。
雑談は学びの場
日本のビジネスマンは雑談を潤滑油と考え、その場の緊張感を解きほぐして相手との心理的な距離感を縮める効果を期待していますが、 世界のビジネスマンが雑談に求めているのは、「リベラルアーツ」 です。 リベラルアーツとは、日本語では「一般教養」と訳されていますが、元来の意味は、人間を束縛するものから開放するための知識とか、生きるためのチカラを身につけるための手法を指します。 世界のビジネスマンは、雑談を学びの場と考え、 お互いの人生を豊かにするための知識や情報を「やりとり」する時間 と捉えていますから、雑談を世間話や無駄話と考えている日本のビジネスマンとは、良くも悪くも、向き合い方に大きなギャップがあります。
テーマ
雑談で何を話すかを考える前に、「何のために相手に会うのか?」 という根本的なテーマを改めて確認する必要があります。 ・今日、相手に会う目的は何か? ・お互いに何が知りたいのか? ・どんな関係性を作りたいのか? ・その関係性は短期か長期なのか? ・相手は何を理解すれば納得するのか?
雑談と幸福感
グーグルでは、 社内のコミュニケーションを充実させることが、部下の幸福感の維持につながる……と考えています。 その象徴的な例が、毎週金曜日の午後に開かれている TGIF(Thanks Google It's Friday)という全社的なミーティング です。 ここでは、社長や経営幹部が壇上にあがり、会社の方向性や新規事業、新商品などについて、全社員に説明をします。
名前を呼ぶ
「あなた」や「きみ」ではなく、 きちんと名前を呼んでから雑談をすることが、どんな印象を与えて、相手がどんな気持ちになるのかを十分に知り尽くしている のです。 グーグルの経営幹部は、社員とのコミュニケーションを非常に大事に考えています。
マネージャーをマネジメント
海外の一流企業には、「Manage your manager!」 という考え方があります。 直訳すれば、「あなたのマネジャーをマネジメントしなさい」 となります。 異動してきたばかりの不慣れな管理職や、仕事のできない上司を相手にする時は、部下の方から積極的に働きかけて、管理職としての仕事をやらせるということです。 「困ったことがあったら、遠慮なく聞いてください」 このひと言があるだけで、お互いにストレスなく、仕事をすることができます。
雑談と確認作業
彼らが、雑談の最初のミッションと考えているのは「確認作業」 です。 初対面であれ、何度も顔を合わせている相手であれ、目の前の相手の立ち位置や役割、その日の体調や心構えなどを、雑談を通して確認しています。 主な注目ポイントは、次の3つです。 ① 相手の状況の確認 ② ビジネス状況の確認 ③ 新たに必要となる情報の確認
4つの目的
雑談をする際には、確認作業だけでなく、4つの大きな「目的」があることを知っておく必要があります。 しっかりと目的意識を持っていないと、雑談は細切れの会話になり、方向性を見失うことになる のです。 雑談には、次のような目的があります。 ①「つながる」 相手との距離を縮めて信用を作る ②「調べる」 最新の動向や現状に関する情報を収集する ③「伝える」 自社の意向や進捗状況などを報告する ④「共有する」 最新の情報を相互に認識する
ラポールの3原則
相手と信頼関係を築くには、雑談を通じてラポールを作ることが大切です。 ラポールを作るための「3原則」 は次のようになります。 ① 相手が「何を大切にしているか?」を知る ② 相手が「何を正しいと思っているか?」を知る ③ 相手が「何を求めているか?」を知る この3原則を知るための方法として、僕は「7つの質問」 を用意しています。 これは僕が主催しているビジネスマンやマネジャー向けのワークショップでも使っているものですが、何回かに分けながら、自然な雑談の流れで相手に質問をしていけば、相手のビジネスに対する本質に触れることができますから、ラポールを作りやすくなります。 質問 ① あなたは仕事を通じて何を得たいですか? 質問 ② それはなぜ必要ですか? 質問 ③ 何をもっていい仕事をしたと言えますか? 質問 ④ なぜ今の仕事を選んだのですか? 質問 ⑤ 去年と今年の仕事はどのようにつながっていますか? 質問 ⑥ あなたの一番の強みは何ですか? 質問 ⑦ あなたは今どんなサポートが必要ですか?
質問の仕方
僕がビジネスでエグゼクティブに会いに行く場合には、相手を「質問攻め」にすることにしています。 主な質問内容は、次のようになります。 質問 ① ビジネスを始めた(現在の仕事を選んだ)きっかけをお聞かせください 質問 ② 過去の挫折体験を教えてください 質問 ③ ブレイクスルー体験は、いつどんな時でしたか? 質問 ④ 現在のミッションは何ですか? 質問 ⑤ ビジネスに関して、どんな価値観をお持ちですか? 質問 ⑥ ビジネスに向き合う際の信念を教えてください
雑談の進め方
一流ビジネスマンは、話の「なりゆき」に任せて、どこに向かうのかわからないような雑談を「時間の無駄」と考えています。 彼らは、次のような手順をイメージしながら複数の相手との雑談を進めています。 ① 参加メンバー全員に発言の機会を作る ② 多様な意見を集めて瞬時に理解・整理する ③ 重要と思われるポイントを深掘りする ④ 話題を広げて、できる限り相手の情報を聞き出す ⑤ 集めた情報を合意形成のための材料として活用する
大切な4ポイント
相手を理解するための会話ができれば、表層的な会話に終始するような雑談を避けることができます。 いくら雑談をしても、 上っ面の表面的な会話ばかりを繰り返していたのでは、お互いの信頼関係が高まることはありません。 雑談の最中に会話が途切れたり、言葉に詰まったりするのは、こうした表面的な会話をしていることに理由があります。 ビジネスの場における雑談では、どんな話をする場合でも、次の4つのポイントを常に意識することが大切です。 ① 相手を驚かせないレベルの「自己開示」をして、自分という人間を知ってもらう ② 好奇心を持って、相手の「人間性」や「人となり」を知ろうとする ③「信頼関係」の構築が目的であることを忘れない ④ 相手と「ラポール」を作れているか、客観的な目で観察しながら話す こうした雑談を丁寧に積み重ねていくことが、ビジネスで成果を生み出すための「原動力」となるのです。
感想
「こんなことを話せば盛り上がる」的な本かと思いましたが、海外と日本の仕事における雑談への考え方の違いについての本。
大変参考になり、明日の仕事から試してみようと思える考え方が多くありました。
お茶を濁すような雑談ではなく、目的と意図を持って話したいと思います。
ありがとうございました!
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