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[エッセイ] 思い出の肉まん
子供の頃の話だ。
保育園の帰り道、母はよく商店に立ち寄った。寒い日には肉まんを買ってくれる。それが私はたまらなく嬉しかった。
その日も湯気の立つケースを眺めていると、肉まんの隣に並ぶカレーまんが気になった。
どちらにするか迷っていると、弟が元気よく、 「僕、カレーまん!」 と叫んだ。
すると何故だか私も慌てて、 「じゃあ、私も!」 と言ってしまった。
ところがその直後、弟はころっと気を変えた。
「やっぱり肉まん!」
ずるい、と思ったが、今さら変えるのも悔しくて、私はそのままカレーまんを選んだ。
家に帰り、熱々のカレーまんを頬張る。 ちゃんと美味しい。
それなのに、向かいで肉まんを食べる弟を見ていると、肉まんのほうが何倍も美味しそうに見えてきた。
「半分こしよ?」
そう頼んでも、弟は首を横に振る。
「嫌だ」
何度頼んでも、「うん」とは言わなかった。
あの時の肉まんは、やけに輝いて見えた。
