ありさんと おおきなクッキー
朝の光が、草原をやさしく照らしていました。
草の葉には、まんまるな朝露がきらきらと輝いています。
小さなアリさんは、黄色いかばんを肩にかけて、元気よく歩いていました。
「なにか、おいしいものはないかな?」
草の間を、
とことこ、とことこ。
小さな花に挨拶しながら、細い道を進みます。

しばらく歩いていると、道の向こうから甘い香りがしてきました。
「くんくん。なんだろう?」
アリさんが香りをたどっていくと、道の真ん中に、とても大きなクッキーが落ちていました。
アリさんの体よりも、ずっとずっと大きなクッキーです。
「わあ、おおきい!」
アリさんは、クッキーに両手をつきました。
「これを持って帰ったら、みんな喜ぶだろうな」
さっそくクッキーを押してみます。
「よいしょ、よいしょ」
けれど、クッキーは少しも動きません。

アリさんは、もう一度、力いっぱい押しました。
「よいしょ、よいしょ!」
それでも、クッキーは動きません。
後ろから引っ張ってみました。
右から押してみました。
左からも押してみました。
けれど、クッキーは、ぴくりとも動きません。
「ぼくひとりでは、むりなのかな……」
アリさんが困っていると、遠くから声が聞こえてきました。
「どうしたの?」
振り向くと、仲間のアリさんたちが走ってきました。
「大きなクッキーを見つけたんだけど、ぼくひとりでは動かせないんだ」
すると、仲間たちは笑顔で言いました。
「だいじょうぶ!」
「みんなで運ぼう!」

アリさんたちは、クッキーのまわりに並びました。
前から引っ張るアリさん。
後ろから押すアリさん。
転がらないように、横で支えるアリさん。
黄色いかばんのアリさんが、大きな声を出しました。
「それじゃあ、いくよ!」
「せーの!」
「よいしょ、よいしょ!」
クッキーが、ほんの少し動きました。
「あっ、動いた!」
「もう一度!」
「せーの!」
「よいしょ、よいしょ!」
大きなクッキーは、ゆっくりと動き始めました。
ところが、道の先は小さな坂道です。
クッキーは少しずつ速くなり――
ころころ。
ころころ。
ころころ、ころん!
「わあ、待って〜!」
アリさんたちは、慌ててクッキーを追いかけました。

ころころ、ころん。
ころころ、ころん。
クッキーは草の間を転がり、小さな石をぴょこんと飛び越えました。
アリさんたちも、クッキーの後ろを一生懸命に走ります。
やがて坂道が終わると、クッキーはゆっくりになり、アリさんたちのお家の前で止まりました。
「ついた!」
「やったね!」
アリさんたちは顔を見合わせて、にっこり笑いました。
一人では少しも動かなかった大きなクッキー。
けれど、みんなで力を合わせたら、ここまで運ぶことができました。
アリさんたちは、大きな葉っぱを広げました。
その上にクッキーを並べ、仲良く分けることにしました。
「それでは、みんなで――」
「いただきます!」

さくっ。
ぽりぽり。
クッキーは甘くて、とてもおいしい味がしました。
「みんなで食べると、もっとおいしいね」
黄色いかばんのアリさんが言うと、仲間たちも大きくうなずきました。
「ひとりでできないことも、みんなと一緒ならできるんだね」
草原に、アリさんたちの楽しそうな笑い声が広がりました。
空には、やわらかな夕日の光。
おなかいっぱいになったアリさんたちは、仲良くお家へ帰ります。
とことこ、とことこ。
ころころ、ころん。
今日も草原には、やさしい音が響いていました。
おしまい。

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