ポケットがあいで溢れる日まで
「あい」と聞いてわたしが思うこと。
わたしには差し出せるものがない。
与えてあげられるものがない。
渡し方も知らない。
受け取り方も知らない。
あの子の家と、それからあっちの子の家も。
あたたかく笑い合う声がする。
何でも言える許されてる空気が流れてる。
うちとはどこか違うことに気づいたとき、
驚いて、少し寂しくなった。
うちでは、静かな音が流れてる。
張り詰めた空気のなかで、
いつも怒られないように息をひそめていた。
外からだと良く見えるらしいこの場所は
本当はみんなが言うようなあたたかい場所じゃない。
でもそれを誰かに言うことは、
悪いことのような気がして黙ってた。
目の前のあなたへ、ちゃんと差し出したいのに、
何をどうやって、渡せばいいかわからない。
こういうときは、いつも声が出なくなる。
どこを探しても見つからない。
わたしはずっと、何も持っていないから。
せっかくあなたがくれた優しさも、手のひらで受け止める前に落としてしまう。
熱すぎるわけでも、冷たすぎるわけでもないのに。
受け取るポケットの底が抜けてるみたいに、するりと落ちていく。
わたしはずっと「あい」というものが
どんな形か、知らないまま、手ぶらで歩いてきた。
ポケットの奥はいつも空っぽなのに、
誰かがくれた優しさを入れる場所はどこにもなかった。
今は、その空白を埋めるように言葉を重ねて、
書くたびに、小さく灯る温度を拾っている。
わたしの言葉が、歩く道をそっと灯す。
もしかしたら、今立っているこの場所が
「あい」を知る入口なのかもしれない。
入口の向こうにはまだ何があるかわからないけれど。
それを知るために、見つけるために、
わたしは言葉を書いているのかもしれない。
わたしにとっての「あい」は
いつか欲しいもの。
ずっと探しているもの。
どこにあるのかな。
いつか見つけられるのかな。
わたしがずっと、ずっと欲しかった「あい」が。
安心できる場所。
存在ごと抱きしめられること。
そばにいてくれる空気。
それを探して歩いている。
欠片を拾い集めながら、自分の手で少しずつ育てて、
ポケットの奥を満たしていきたい。
いつかちゃんと差し出せるように。
真正面から受け取れるように。
その日が来るまで、
わたしは言葉で灯しながら歩いていく。
わたしの歩く先に「あい」がありますように。
テーマ あい
#モノカキングダム2025
最後までお読みいただきありがとうございました。
読んでくださることがわたしの力になってます。

いいなと思ったら応援しよう!
お読みいただきありがとうございます🕯
そのあたたかさが、また次のことばを灯す力、わたしの書く力になります。
これからも一緒に素敵なあかりを灯せたらうれしいです。