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霧のち、光

僕は、十二月のひんやりとした空気が、とても好きだった。吐く息が白く色づき、瞬く間に消えていく様子は、まるで僕の中の、誰にも言えない秘密みたいだったから。世界が凍りつくほどに透明になるこの季節は、僕の胸の奥で燃える小さな炎の輪郭を、より鮮明に際立たせてくれる。すべての硬質なものが、僕の内側の柔らかい熱を浮き彫りにするようだった。

しかし、その日、君の横顔には、いつものやわらかな光がなかった。

校舎の窓ガラスは、外の白い雪を鏡のように映していたが、君の瞳だけは深い霧に覆われているかのようだった。陽光は差し込んでいるのに、君の周りだけが色彩を失い、影の粒子がその睫毛の先に重く揺れていた。まるで、太陽の光を吸い込むために作られた、黒いベルベットの箱の中にいるみたいに。その静かで完璧な悲しみは、僕の胸に刺さった、冷たい氷の棘のように鋭く、僕の呼吸を少しだけ浅くさせた。

「ねえ、何かあったの?」

そう、無骨な言葉で尋ねてしまおうとした。それはあまりに簡単で、すぐに答えを求めてしまう、事務的な行為だ。けれど、硬い言葉は、このガラスのように張り詰めた冬の空気の中で、すぐに音を立てて割れてしまうだろう。そして、割れた破片は、今の君の心をさらに傷つけるだけだと直感で分かった。

僕は口を噤み、代わりに、もっと柔らかく、もっと確かなものを探った。鞄の底に忍ばせていた、昨日焼いたばかりの小さなクッキーの缶。ブリキの缶は手のひらの体温を少しだけ奪い、鈍い冷たさを伝えてきたが、その中には、真夜中の台所で僕が起こした小さな火の記憶が詰まっている。夜の静寂の中で、熱と匂いに集中して生地を混ぜた、あの瞬間の情熱だ。

缶の蓋をそっと開けた。

バターと砂糖の、焼きたてのパンのような、暖かくて甘い匂いが、冬の廊下の冷気をほんの少しだけ溶かした。それは、言葉ではなく、温度と優しさを運ぶ、目に見えない光の渦だった。匂いは君の鼻先をそっと撫で、君が纏っていた影の布を、端からゆっくりと持ち上げた。

君がその匂いに気がついて、伏せていた顔をゆっくりと上げた。

太陽の光が、再び君の瞳に反射し、黒かった影が、淡い青色へと変わる。そして、君の唇の隅に灯った微かな光。僕はその光を見たかった。僕の衝動のすべては、あの遠回りをして、真夜中にオーブンを覗き込んだ、あの火の熱に凝縮されていたのだ。

僕は缶を差し出した。

君は静かに一つだけ取り、小さな粒のように輝く砂糖を指先でなぞった。そのクッキーは、僕の衝動と、君の静けさの間の、最も詩的な言葉だった。その瞬間、僕の胸の奥で、無数の小さな火花が、静かに、そして熱く弾けた。その光があれば、この冬は、どこまでも透き通って、どこまでも歩いて行ける気がした。君の笑顔は、僕がこの硬質な世界で息をするための、唯一の柔らかい理由だった。


— 完 —


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