缶集めのおばあちゃん、なぜ、いずこ
カランコロン
静かでもなく うるさくもなく
ほんの少し聞こえる乾いた音。
リズムよくなるその音に
姿を見ずとも私の頭には
一人の女性が浮かぶ。
缶を集めているおばあちゃんだ。
自転車で現れる。
何回か姿を見たことがあるが
後ろの荷台に
サンタクロース以上の大袋を載せて
やってくる。
荷台の上だけでなく、サイドまで。
よくバランスが崩れないな
と後ろ姿をじっと見たこともある。
そのバランス感覚に、ある種の
サーカスを見ているような気にまで。
どこの地域をどう練り走ったら
こんなに缶が集まるのだろう
とおばあちゃんの
忍耐力?
経験値?
土地勘?
いずれかわからない能力に
何だか感心してしまうこともある。
おばあちゃんの中にはきっと
独自のマーケティングが
出来上がっているに違いない。
途中でいったん降ろせばいいのに
とも思うが
パンパンに入った袋の方が
音が軽減されるらしい。
また、缶1つ約15gなので
大量に運んだとしても
重さはしれている。
いったん降ろすよりも一気に運んで
そのまましかるべき施設へ行ったほうが
効率的なのだろう。
あなたは缶集めの人というと
どんな方をイメージするだろうか?
うちの近所に来るこのおばあちゃんは
あなたのイメージとは
少々違うかもしれない。
このおばあちゃん、
小綺麗で おっとりしていて
尚且つ しっかりしていて
物語から出てきたような雰囲気なのだ。
何でも受け入れてくれそうな
あたたかいおばあちゃん。
最寄りのリサイクルステーション
(近隣の住民が資源を放つ場所)で
数回鉢合わせたが
コミュ障の私を1ミリも不安にさせない
穏やかな挨拶をしてくれた。
私の脳は「?」で埋め尽くされる。
なぜこのおばあちゃんは缶集めしてるんだ?
大量に集めて換金しても数千円。
そのお金のためにしている雰囲気ではない。
だが、集めている理由を訊く勇気は
私にはなかった。
ある日、うちの前の道に
等間隔でアルミ缶が落ちていた。
おばあちゃん、
無意識のヘンゼルとグレーテル状態。
姿が近くにない。
あのおばあちゃんなら
きっとどこかで気づいて回収しに来るだろう
そう思ってしばらく放っておいた。
案の定、
少し経った頃にカランコロンの音とともに
それらは消えていた。
やはり しっかりしている。
落としたものを拾うまで缶を集める
モチベーションは何なんだ?
謎すぎる。
ここ数か月、
このおばあちゃんの音を聞くことも
姿を見ることも
全くなくなってしまった。
体調が優れないのだろうか?
誰かに嫌味や警告でも言われたのか?
もう集めることに飽きたのだろうか?
はたまた
物語の世界へ戻っていったのだろうか?
なんちゃって。
元気で今でも穏やかにしてらしたら何より。
ちなみに現時点(2024年度)では
名古屋市内ではアルミ缶を集めることは
罰せられないが
もうすぐで(2025年度)
アルミ缶も含めた
資源持ち去り禁止の条例が制定される。
もうこの街では
カランコロンの音が
聞こえなくなるのだろう。
↓参考
名古屋の資源の条例についてのニュース
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