「学力低下」の定説を疑う。全国学力調査の結果から見えた、子どもたちの“新しい力”とは?
はじめに ― 全国学力調査の結果に、ドキッとしたあなたへ
先日発表された全国学力調査の結果を見て、胸がざわついた先生も多いのではないでしょうか。
「えっ、また平均点が下がってる?」
「本当に力が落ちているんだろうか?」
そんなふうに、焦りや不安を抱えた方も少なくないかもしれません。ベテランの先生から「昔はもっとできたのに」なんて声を聞いて、プレッシャーを感じた方もいるかもしれませんね。
でも、ちょっと立ち止まって考えてみませんか?
本当に、「学力が下がっている」と言えるのでしょうか。
もしかしたらこれは、社会が求める力が変わりつつあることのサインなのでは?
あるいは、学校で育ち始めている“新しい力”が、今のテストでは測れないだけなのかもしれません。
私は今、この平均点の「低下」を、教育の現場が経験している成長痛と捉えています。
そして同時に、「学力」という言葉そのものの意味が、大きく変わりはじめているのではないかと考えています。
「学力」って、そもそも何を指すの?
学力調査の平均点が下がると、「子どもの学力が落ちたのでは」と不安になる気持ちは、よくわかります。
でも、ここで改めて考えたいのが、「学力」とはそもそもどんな力を指すのか、ということです。
かつての学力テストは、主に教科書の内容の理解や、与えられたパターンの問題を正確に解く力を測るものでした。いわば、「正しい答えを、速く正確に出す力」を評価してきたのです。
ところが今、学校教育の現場ではこんな力が求められるようになっています。
自分で考え、判断し、表現する力
多様な視点から物事を見る力
仲間と協働しながら課題を解決する力
こうした「新しい力」は、従来のテストでは測りきれません。
つまり、子どもたちは確かに力をつけているのに、「測り方」が古いままだから、成長が数値に表れない――そんなミスマッチが起きている可能性があるのです。
テストで測れない力が、今まさに育っている
こんな例えで考えてみてください。
昔は「辞書を速く引く力」が求められていました。でも今の子どもたちは、「ネットで必要な情報を検索し、正しい情報かどうかを見極める力」を一生懸命身につけようとしています。
テストの点数だけを見れば「できなくなった」と映るかもしれません。でも実際には、より現代的で汎用的な力を育んでいる最中なのです。
日々の授業でも、こんな子どもたちの姿を見かけませんか?
テストは苦手でも、みんなの意見をまとめるのが得意な子
問題にすぐ答えが出なくても、あきらめずに考え続ける子
ちょっとした疑問から、独自のアイデアを生み出す子
そうした力こそ、今の社会が本当に必要としている力です。
「テストで見えない=存在しない」ではない。むしろ、見えにくい力こそが、これからの時代を生き抜くカギになるのではないでしょうか。
社会が求める「新しい学力」とは?
かつては「正しい答えを出す」ことが最優先とされてきました。
しかし今、求められているのは次のような力です。
共感と協働:他者の気持ちを理解し、対話しながら課題を解決する力
課題発見力:与えられた問題だけでなく、「なぜこれが起きているのか?」と自分で問いを立てる力
粘り強さ:すぐに答えが出なくても、最後まで考え抜く力
創造力:既存の知識を組み合わせて、新しい価値を生み出す力
これらは、いずれも従来型の学力テストでは測定が難しいものばかりです。
でも間違いなく、今の子どもたちは、アクティブ・ラーニングなどの実践を通じて、こうした力を着実に育てています。
平均点の低下は、未来への「羅針盤」
今回の平均点の低下を「問題」として終わらせるのは、実にもったいないことです。
むしろこれは、私たち教育に関わる者が、「今、本当に育てたい力は何か?」と立ち止まって考える絶好の機会なのです。
テストの点数は、子どもたちの学びのごく一部を切り取った「スナップショット」にすぎません。
私たちに必要なのは、評価の視野を広げること。点数だけでは見えない、子どもたちの豊かな学びのプロセスに光をあてることです。
おわりに ― いま、私たちにできること
今回の学力調査の結果を「低下」と捉えるか、「成長痛」と捉えるかで、教育の未来は大きく変わります。
大切なのは、
今の教育が育んでいる「新しい学力」は何か
それをどのように見取り、評価し、さらに伸ばしていくか
という問いに、私たち一人ひとりが向き合っていくことです。
