なぜ歯石取りは1回で終わらないの?歯科医師が教える「回数がかかる本当の理由」
こんにちは、福岡県の新宮町にあります「杜の宮かなだ歯科医院」です。
「せっかく予約を取って来院したのに、今日もまた歯石取りだけで終わってしまった…」 「一気に全部取ってくれれば楽なのに、どうして何回も通わなきゃいけないの?」
歯科医院に通っていて、このように感じたことはありませんか?実は、これにはお口の健康を守るための「医学的な根拠」と、日本の医療制度上の「ルール」という2つの大きな理由があります。
今回は、意外と知られていない「歯石取りの回数がかかる理由」について詳しく解説します。
1. 歯石取りは「お掃除」ではなく「治療」だから
まず知っておいていただきたいのは、歯科医院で行う歯石取り(スケーリング)は、単なるお口の清掃ではなく、「歯周病」という病気を治すための「治療」であるということです。
歯周病は、歯と歯ぐきの間に潜む細菌(プラークや歯石は細菌の塊です!)によって、歯を支える骨が溶かされてしまう病気です。この治療を進めるためには、段階を追ったプロセスが必要になります。
検査をせずに治療はできない
いきなり歯石を取るのではなく、まずは「歯周組織検査」を行います。
歯ぐきの腫れ具合
歯周ポケットの深さ
出血の有無 これらを数値化して現状を把握することで、どこにどれだけの歯石がついているかを正確に診断します。
2. 歯ぐきの「上」と「下」では落とし方が違う
歯石には、大きく分けて2つの種類があります。これらを一度に無理やり取ろうとすると、患者様の体に大きな負担がかかってしまいます。
縁上歯石(えんじょうしせき)
歯ぐきよりも上の、目に見える部分についている白い歯石です。まずはこれを除去して、歯ぐきの表面の炎症を抑えます。
縁下歯石(えんかしせき)
歯ぐきの中に隠れている、黒くて硬い歯石です。 歯ぐきが腫れた状態で奥深くの歯石を無理に取ろうとすると、激しい痛みや大量の出血を伴うことがあります。そのため、まずは表面の歯石を取り、歯ぐきが引き締まってから(通常1〜2週間後)奥の汚れにアプローチするのが、最も痛みが少なく安全な方法なのです。
3. 一気に進めると体に負担がかかる
お口の中全体には28本の歯(親知らずを除く)があります。これら全ての歯石を1回で完璧に除去しようとすると、1時間以上の時間がかかり、ずっと口を開けていなければなりません。
また、広範囲を一度に処置すると、術後に一時的な知覚過敏や歯ぐきの違和感が出やすくなります。患者様の負担を最小限に抑えるため、お口を数ブロックに分けて丁寧に処置を進めるのが一般的です。
4. 健康保険制度のルール(重要)
日本の健康保険制度では、歯周病治療の進め方が厳格に定められています。
厚生労働省のルールによる一般的な流れ:
1. 初診・検査
2. 歯ぐきより上の歯石除去(スケーリング)
3. 再評価の検査(歯ぐきが改善したかの確認)
4. 必要に応じて、歯ぐきの中の深い歯石除去(SRP)
このステップを飛ばして「1回で全部終わらせる」という行為は、保険診療のルール上、認められていないのが現状です。これは、「段階を踏んで経過を観察しながら進めることが、患者様にとって最も確実な治療結果につながる」と考えられているからです。
まとめ:回数がかかるのは「一生自分の歯で食べるため」
歯石取りに数回の通院が必要なのは、決して治療を長引かせているわけではありません。
正確な診断に基づいた治療を行うため
痛みや出血など、患者様の負担を減らすため
歯ぐきの回復を待ちながら、着実に治していくため
私たちは、今ある汚れを取るだけでなく、10年後、20年後も皆様がご自身の歯でおいしく食事ができる未来を目指しています。
「あと何回くらいかかるの?」と不安になった際は、いつでも担当の歯科衛生士や歯科医師にお尋ねください。ゴールが見えるよう、現在の進捗状況を丁寧にご説明させていただきます。
一緒に、健やかで美しいお口を目指していきましょう!
