オリンピック期間特別編~「運動神経の良さ」は作れるか?~
皆さん、オリンピックはご覧になられていますでしょうか?
パリでは熱い試合が繰り広げられています。
日本の選手もメダルを獲得された選手がとても多いですね!
https://olympics.com/ja/news/paris-2024-olympic-games-japanese-medal-winners
子どもの頃から最前線で活躍されてきた選手も、なかなか芽が出なくても努力を続けてきて成果を上げた選手もいるでしょう。
ただ、幼い頃から競技に親しんできたとは思います。
実は最近、我が子もフットサルの短期レッスンに参加しており、自分の子も含めて子供たちが運動している様子をじっくり眺めることが増えました。
明らかに運動神経が良さそうだなぁ、と思う子や、少し苦手かもしれないな、と思う子もいたりします。
僕は理学療法士という立場から、「もう少しこうやったらうまく動けそうだな」と考えながら、我が子や他の子を見ていたりするのですが、運動神経の良さって先天的なもので全てが決まってしまうのか?と疑問に思いました。
そこでオリンピック期間中ということもあり、いつもとは違った内容の記事にはなりますが、
「運動神経の良さ」を後天的に獲得できるのか?つまり、知識や練習で養うことは出来そうか?ということを考えてみたので、それをこの場を借りて書いていこうと思います。
この記事の要約
①運動神経の良さは、感覚、統合、運動の3つの要素から成り立ち、後天的に向上可能です。
・感覚は周辺環境や自身の体の状態を正確に把握します。
・統合は情報を適切に取捨選択し、最適な動きを決定します。
・運動は力の大きさ、方向、タイミングを調整して動きを実行します。
②運動神経向上には、適切な環境とプログラムの提供が重要です。
・子供たちは外で体を動かし、運動に関するスキルを自然に習得しますが、個人差が出やすいです。
・知識を持った大人が適切な環境やプログラムを提供することで解決するかもしれません。
・実践だけでなく、運動に関する知識を学ぶことも運動神経の向上に役立つでしょう。
結論から言うと、「運動神経の良さは作ることができる」と僕は考えております。
今からこの仮説について述べていきますが、6000字超えてます。長くなって申し訳ありませんが、
・ご自身の運動神経をよくしたい人
・お子さんの運動神経が良くなってほしいと思う人
は、よろしければご覧ください!
「運動神経が良い」ってそもそもどういうこと?
皆さんは、運動ができる人ってどんな人をイメージしますか?
・足が速い、遠くに跳べるなど、身体機能が高い人
・どんな球技でもそこそこ上手にできる人
・初めてやった競技もすぐに出来る人
etc…
色々な人が想像できるかと思いますが、僕が考える「運動神経が良い人」の定義は、以下のとおりです。
「周辺の環境や自身の体の状態に合わせて、その場で最適な動きを選び、正確に実行できる人」
このような定義がしっくりくるなと感じています。
足が速いのに球技は苦手、という人もいるでしょうし、逆にボールの扱いは上手なのに足がとても遅い人もいると思います。
もちろん、元々は苦手で、常人では理解できないくらいのものすごい練習量で上手くなった人も。
ただ、皆さんのイメージする運動神経の良い人は、身体能力自体も高くて、割とどんな球技もできて、しかも最初から上手いような人、じゃないかなと思います。
これを網羅的に表現するには、先ほど書いたような定義がしっくりくるのではないかなと。
なのでここでは、「周辺の環境や自身の体の状態に合わせて、その場で最適な動きを選び、正確に実行できる人」が運動神経が良い人、と定義して話を進めたいと思います。
運動神経の良さを決める3つの要素
ここからが本題です。先程取り上げた運動神経の良い人の定義として、
「周辺の環境や自身の体の状態に合わせて、その場で最適な動きを選び、正確に実行できる人」
としましたが、この定義には3つの要素があると考えます。
①感覚(周辺環境や自身の体の状態に関する情報をできるだけ多く収集できる)
②統合(情報を適切に取捨選択し、その場で最適な動きを瞬時に決める)
③運動(脳で決めた最適な動きを正確に実行する)
この3つについて、例を挙げながら書いていきたいと思います。
①感覚(周辺環境や自身の体の状態に関する情報をできるだけ多く収集できる)

スポーツなどでは、周辺の環境(フィールドや相手、天候など)やその時の自分自身の状態(動きが硬い、バランスがとりにくい、緊張しているなど)を感じ取り、プレーをします。
試合や大会では、自身の状態も常に一定、いつも同じ環境でプレーできるスポーツはそうありません。自分の内側・外側の情報をより多く感じ取る能力はスポーツにおいてとても重要です。
内側の情報とは?
スポーツの試合だけでなく、初めてやる競技(遊びも含みます)や練習においても情報収集は重要です。
初めてでもそこそこできる人は、その空間でどうやって自身の身体が動けばいいのかを感じ取ることがとても上手です。
もう少し分かりやすい言い方としては、指導者が教えてくれる理想の形を模倣することがとてもうまい、ということです。
目や耳から情報を得て、何がどう動いたらそのフォームになるのか、を理解する力が優れていると考えられます。
外側の情報とは?
自分の体の中で生じている感覚だけではなく、周辺の情報を素早く、そしてより多く察知することも運動の中では必要です。

・グラウンドのコンディション(少し傾いている、ぬかるんでいるなど)
・風向き
・敵や味方の位置、動き(近づいている、動き始めている、など)
・相手と接触した際の力の向き(倒されそうな方向の察知)
これ以外にもとてもたくさんの情報を得ています。
運動、特に相手がいるようなスポーツで勝つためには、こういった情報をどれだけ集められるかが重要になってきます。
感覚、というのは視覚、聴覚、触覚(味覚・嗅覚はあまり影響を受けないかも)以外にも、体性感覚と呼ばれる、関節の位置や動きを知覚する感覚や、バランス調節に関わる前庭機能もとても重要であり、これらの感覚をフルに使いながら周辺の情報を感じ取っています。
また、今自分は緊張している、とか、身体が熱いとか、自己の状態に注意を向けることも大事です。そういった全ての情報に注意を向けられることはパフォーマンスに繋がります。
身体の調子を把握し、いち早く異常に気付ける

身体感覚に優れた人は、身体のコンディション異常やフォームの崩れなどなどもある程度自分で感じ取りながら対策することができるでしょう。
例えば、今日は股関節が硬い気がするから、ストレッチを多めにしておこう、とか、腕の上がりが悪いからいつもよりも意識して腕を上げよう、などのように自己修正することもできます。
ここまで述べてきたように、自身の状態や環境を的確に把握することは、その後の正確なアウトプットに繋がりますので、運動神経の重要な要素と言えます。
②統合(情報を適切に取捨選択し、その場で最適な動きを瞬時に決める)
今まで挙げてきた情報は、感覚器を通じて、常に入ってきます。
それらすべての情報にいちいち反応してしまうと、身体が疲弊してしまうのですが、それをコントロールしているのが脳です。そのコントロールセンターは、脳の「視床」、という場所にあります。
集まってきた情報に対して、
・情報の重み付け
・反応の優先順位
・適切な運動・行動の選択
をして、その指示を体に送っていきます。
これらは全ての人が行っていることではありますが、「運動神経の良い人」は、このプロセスが、とても早く、そして的確です。
逆に言うと、いらない情報を捨てること、そして自分が今やるべきことに集中できることがとても上手いということになります。
瞬時に判断し、対応する

例えば、何かの運動をしていてバランスを崩した時、そのまま踏みとどまるか、はたまたうまく負荷を逃がして受け身を取るか、などの選択肢の中から、その場に応じた最適解を瞬時に導けるのが、「運動神経の良い人」となります。
この時1番避けたいことは、転ぶこと、そして、怪我をすることです。
今自分と環境がどのような状態にあるか、を瞬時に把握して、「このように動け!」と指令を出し、避けるべき事故を避けることができます。
身体能力が高いのによくケガをしてしまう人は、もしかすると、この統合というプロセスに弱点があるのかもしれません。
役割の理解と順応性
別の例を出すと、多くの集団スポーツには、メンバーごとのポジションがありますが、どのポジションに配置してもうまくやれる選手がいます。この選手は、「このポジションで自分に科された役割は何か」を明確に理解して、それを実行するのに長けています。
自身の能力(その日のコンディションも含め)を理解し、敵味方などの状況も把握してプレーすることができます。
多くの情報を取り入れつつも、選択しながら必要な情報だけフォーカスして、そこに対して正確な指示を出していく、このような脳の機能もとても運動神経の良さには重要だと思います。
③運動(脳で決めた最適な動きを正確に実行する)
①感覚で情報収集し、②統合として、その情報を脳で取捨選択して最適な反応を選びました。
ここからようやく運動、ということになります。
この運動を構成する要素は大きく分けるとこの3つに分解できるのではないかと考えています。
・力の大きさ(強さ)
・力を出す方向性
・力を出すタイミング
この3つをコントロールできる人が「運動神経が良い人」だと考えます。
一つ一つ説明していきます。
力の大きさ(強さ)
ここで1番強調したいことは、単に力が強ければいい、というものではないということです。
もちろん、その人の出せる力の最大値が大きいということは重要ではありますが、5メートル先の相手に出すパスと30メートル先の相手に出すパスの力(パスの速度と置き換えてください)が同じでいいのか?というとそういうわけではありません。
さらに、そこに相手がいるかどうかによってその速度は変わってくるはずです。ボール回しか、カウンターによる速攻かなどの状況によっても違いますね。
その場その場でパスのスピードを調節できる、言い換えると力の配分を調節できること。それが自分の出した脳からの指令にあっていること。これが1番大事だと言えます。
そしてその力を出すための筋力、可動域というのもここの要素に含まれると考えます。
自分自身がコントロールできる可動域で、出す力を調節できるとかなりパフォーマンスとしては上がりますよね。
力を出す方向性
先ほど述べた力の大きさも、その出力される方向がズレていると求めている結果に繋がらなくなります。
「走り幅跳び」と「走り高跳び」という競技を例にしてみるとわかりやすいかと思います。
いずれも、「助走をつけて、その勢いを生かして跳ぶ」という種目ですが、幅跳びは遠くに、そして高跳びは高く跳ばなければなりません。
どちらも、前・上方に跳ぶように力を出す必要がありますが、幅跳びは前方向の要素が強く、高跳びは上方向の要素が強いです。
このように本質的には「助走をつけて、その勢いを生かして跳ぶ」二つの競技ですが、方向性の違いによってやりたいことを分けているわけです。
この力を出す方向性をコントロールできることが、運動神経の良い人が持つ1つの条件と言えるのではないかと思います。
力を出すタイミング
ある動作を行う上で最適な力を、正しい方向に向かって伝えようとしているのにも関わらず、それがうまく結果に繋がらないケースは、その力を発揮するタイミングに問題がある可能性があります。リズムと言い換えることもできるかもしれません。
大抵の動作は、その動作のメイン(ボールを捉える競技で言えば、インパクトの瞬間)の前の予備動作(テークバックとか)がありますが、インパクト時に最大の力を伝えるためには、その前の予備動作では逆に脱力している必要があります。
テークバックから打ちに行く際に、常に同じ力を入れ続けていると、力の伝達効率が悪くなるだけでなく、それを何回も続けていれば怪我の原因ともなります。
運動神経の良い人は、脱力が上手、という言葉は良く聞かれることだと思いますが、この「力を出すタイミング」ということが良くわかっているのだと思います。
以上の3つのポイントを踏まえると、脳からの指令を適切に伝達するためには、「適切な大きさの力を、正しい方向に、ベストなタイミングで発揮できること」が必要であると言えます。
運動神経は後天的に向上させられるかも!
これまで、運動神経の良さを定義するための、感覚・統合・運動(入力・統合・出力とも言い換えられますね)についてお話してきましたが、これらの要素を一つずつ練習し、それらを実践で意識することによって確実に運動神経は良くなるのではないかと僕は思います。
子どもたちは、外で体を動かしながら、自然とこれを習得しているわけですが、そこには個人差が多く出てしまうように感じます。
「運動神経の良さ」をこのように分解してみると、運動神経を高めるプログラムも作っていけるのではないかと思います。
提供する側の大人が、知識を持ち、適切な環境やプログラムを提供すること、そしてそのプログラムを受ける子供たちが興味・関心を持って取り組んでくれることによって、運動神経を高めていけると考えます。
これらの知識を、子供たちにとってもわかりやすく、さらにその親御さんにとっても実践しやすい形でアイディアを提供することが必要です。
現状、運動関連の習い事においては、ほぼ実践が主体となっています。しかし、背景となる知識をしっかり学ぶ、ということも同じくらい重要なのでは?と考えます。
またその知識を得ることによって、子供たちだけでなく、親御さんの運動に対する興味、印象や考え方も変わってくるのではないかと思います。
まず、「体が動く」とはどのようなことかを理解する必要があり、体の動きをコントロールするために何を働かせているのかを知ってもらうことからスタートする必要があります。
それに加えて、運動に影響を与える環境因子はどのようなものかを理解してもらうことで、同じ動きでも環境によって変化することを知ってもらいます。
周囲の環境および自身の変化を知覚し、それに応じて動く。その結果をまたフィードバックして次の試行に生かす、というサイクルを回すことを理解してもらうことを最終的な目的とし、日常生活や普段の運動で試してもらう。そういったフォローができるカリキュラムを作成できると良いのではないかと。
このような座学で運動を学ぶことができるプログラムの作成も今後やっていきたいなと考えたりもしています。
まとめ
今までとはちょっと異なる内容の記事でしたが、いかがでしたでしょうか?
運動は苦手と感じている方や、苦手ではないけど自信をもって得意と言えない方、
もしかすると、アプローチの方法を変えるだけで、もしかすると運動神経が向上するかもしれません。
もしご興味がある方がいらっしゃいましたら、コメントください。
感覚・統合・運動それぞれのアプローチ方法についてもう少し具体的に聞きたい、という声がありましたら、書いてみようと思います。
以上です!
ここまで読んでいただきありがとうございました!
