【創作】相模の王子様《下書き再生工場》
本田すのうさんの企画に参加させていただきました。
noteの下書きに眠っていたネタを第三者が書いてみる、というなんとも面白そうな企画です。まだネタも書き手も募集されているとのことなので、興味のある方は是非!
僕が書いたテーマは、後ほど発表いたします。
ひとまず改悪?してしまった作品をどうぞ。
第1幕
夕方の混雑のピークを終え、トイレ清掃に向かおうとしていたアルバイト店員の山下の前に「王子様」が現れた。シマシマのカボチャのような半ズボンに赤いマント、どこからどうみても王子様であった。しばらく店内をうろついた後、山下を見つけるなり、話しかけてきた。
「お忙しいところ、誠に恐縮なのですが、このお店の責任者の方をよんでいただいてもよろしいでしょうか、すこしお話ししたいことがあるのです」
山下は大慌てで、店長のところへと向かった。
「店長大変です。王子様がよんでいます。」
「意味がわからないのだが」
「私だって分かりませんよ、とにかくきてください」
「その方が、この屋敷の主人か。」
「左様でございます。私がドラッグストアOKAMOTOの店長でございます」
「余は、このような場所に来るのが何せ初めて故、いたく感動した旨をお伝えしようと思った次第である。たくさんの商品が清潔に並んでおり、余は大変満足いたした。ところで、店長殿、余が本日参ったのは、買い物をしたいのだが、何せ初めてのことで全くわからんのだ。少し手伝ってはいただけないだろうか」
山下は、何が起きているのかさっぱりわからなかったのだが、店長は妙に落ち着いていたので、山下もそれに倣うことにした。
「ときに、殿下、とお呼びすればよろしいでしょうか、一体何をご所望でしょうか」
「コンドームだ」
「でしたら、こちらにございます、ご案内いたします、殿下」
陳列棚につくと、王子は店長にあれこれと尋ねていた。
「この0.01と0.02というのはなんだ」
「素材の薄さにございます」
「大した違いには思えないのだが」
「僭越ながら、オリンピックの100メートル走決勝戦をイメージしていただけると、分かりやすいかと」
「確かに。その差がメダルの明暗を分けるというからな」
店長はどうして、真顔で対応できるのか、後方で笑いを必死にこらえながら山下は考えていた。やはり店長になるにはそれくらいの資質が必要なことなのだろう、と思うようにした。
「それでは0.01を買うことにしよう。ん、店長殿、その隣にある赤い色のボーリングのピンのようなものはなんだ」
「殿下は、模擬戦はお好きですか?」
「ああ、もちろんだ、騎士団長のアレックスにさんざん鍛えられたからな。余の剣術は誰にも劣ることはあるまい」
「それでしたらぜひ殿下にもおすすめの一品でございます」
「そうかそうか、ではそれもいただくとしよう」
王子様は、満足そうにドラッグストアをさっていった。
「店長、あれはなんだったんですか?」
「まあいいじゃないか、コンドームだけじゃなく、TENGAも売れたのだから」
「そうっすね、てか店長よく笑わずに接客できましたね。まじ尊敬っすわ」
第2幕
王子が帰還した。築20年の1LDKのアパートだ。
「おかえり、ってその格好はどうしたの、ハロウィンにしては早すぎない」
最近同棲し始めた、付き合って半年になるミカが話しかけてきた。
「ああ、これね、ドン・キホーテで買ったコスプレ衣装だよ」
「そうじゃなくて、どうしてそんな格好をしているの」
「コンドームを買うためだよ」
「ちょっと理解が追いつかないわ。順を追って説明してもらってもいいかしら」
王子こと、小野寺誠は童貞だった。ミカは小野寺にとって初めての彼女だった。そしてとうとう一緒に暮らすことになった。小野寺は、相手を幻滅させないように童貞であることを隠していたのだが、先日、ついに決心をし、コンドームを買うことにしたのである。だが、コンドームをどうやって買ったら良いのかわからなかった。店で買えば良いことくらいはわかっている。だが、いざ避妊具コーナーでウロウロオドオドしていたら、あいつは童貞に違いない、と店員に思われるのを恐れていた。彼女に聞くわけにもいかないし、かといって今更友人に聞くのも恥ずかしかった小野寺は、Yahoo!知恵袋を利用することにした。
「今度初めて、コンドームを買います。童貞だと思われずに堂々と、かつスマートに買い物をするにはどうすればよいでしょうか。」
これに対するアンサーは2件きていた。ネットの民はなんて優しいのだ、と小野寺は感激した。
「レストランで食事をした後に、シェフを呼んでくれないか、というシチュエーションのように買い物をすれば、堂々、かつスマートに買い物ができます」(20代男性)
「やはり身なりや立ち振る舞いが大事です。騎士団長でも王子でもよいですが。私も初めてのときは騎士団長の気持ちになって購入しました。辻褄を合わせるために設定を作っておくのが良いと思われます。」(40代男性)
と、このような経緯があったのだと小野寺はミカに説明した。
「ちょっと、なにそれ、ああくるしい、息ができない、面白すぎるんだけど。あなたって本当に純粋ね。こんなの全部デタラメに決まってるじゃない。ああ、お腹痛い。」
「ミカ、流石に笑いすぎだよ、ひどいではないか」
「語尾が王子になってる」
「仕方ないではないか、じゃない、仕方ないだろ、だって王子になりきるために3日間練習したんだから、原稿も作ったし」といってスマホに書いた王子の原稿を見せたら、またミカが爆笑した。
——まあ、それで無事に購入できたのね。こんなに面白い人初めて。
——うん、だから、今夜。
——いいわよ。でもなんでTENGAもあるの。
——それは…あれなんでだっけ。
——そうだ、模擬戦だ。あの店長やけに頭の回転が早かったな。
——模擬戦?
——ううん、なんでもない。ねえ今からでも良い。
——それはダメ。また後で。
第3幕
舞台は、ふたたびドラッグストアOKAMOTOの店内へ。
アルバイト店員の山下と店長は、閉店作業をしていた。
「それにしても、今日は王子様のインパクトがデカすぎましたよ。もし俺が店長だったら、もう笑っちゃいますよ。」
「悪さをしたわけじゃないんだ。別に良いだろう。大切なお客様だ。」
「それにしても、店長まじ尊敬っすわ、あんなにすぐに相手のキャラに話を合わせられるなんて、TENGAのこと模擬戦とか言ってましたよね、あれはまじで痺れました、店長なに赤くなってるんすか、ほめてるんすよ。」
(了)
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ああ、とうとう下ネタを書いてしまった。私の文学的貞操があー!!!とムスカのような気持ちになったのですが、ZINEとかKindleでも下ネタ書いてたわ。はは。
ということで、 今回私が、再生したのは、三毛田さんからいただいたお題「コンドームを堂々と買いたい」でございました。
僕の文章力では、再生できたのかは分かりませんが、楽しんでいただければ幸いでございます。
誰かからお題を受け取って書くというのもなかなか面白いものですね。
あ、これフィクションですよ。念の為。
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