自己肯定感の底上げ方法(朝の4時間)
私も自己肯定感はどん底からのスタートでした。人見知りで、何をやっても誇りを持って接することが難しい時期が長くあったものです。
とにかく自分が嫌い。自分のことが好きになれない時期がずっとありました。
それが考え方ひとつで、少しは上向いてきたのかも?と思えることが増えたのでまとめたいと思います。(カバーイラストは底上げといえば…という観点で使用させていただきました)
自分のことを好きになる、あるいは受け入れるというのは、一見シンプルなことのようでいて、実際にはとても難しいことのように思います。
たとえば、朝起きて最初に思うことが「今日もめんどくさい」とか昨日お酒を飲み過ぎたり、過去の失敗を思い出して「なんで自分はこうもダメなんだろう」といったネガティブな問いかけになってしまう人は、少なくないのではないでしょうか?
私もそうした朝を何度も迎えてきました。寝起きの頭の中に漂う、根拠のない不安や劣等感。あぁ、今日も世界は存在する…。何か大変なことが起きないかな…。その気持ちは一度起動してしまうと、1日の活動すべてを灰色がかったフィルター越しに眺めてしまう原因ともなってしまいます。
どうすればこのスパイラルから抜け出せるのか。長い間、私はその答えを探していました。海外に行ってみたり、自己啓発本を読んだり、セミナーに参加したり、オンラインサロンに複数入ってみたり。
自己肯定感という言葉は、近年よく耳にするようになりました。クロスカルチュラル心理学者のジョン・ヘイン(John Heine)が2010年代に行った研究(※1)によれば、日本人は欧米諸国の人々に比べて自己肯定感が低い傾向があるといいます。
その背景には、謙虚さや周囲との調和を美徳とする文化的な要因があると指摘されることも多いです。
しかし、自己肯定感の低さは決して「性格」や「民族性」といった固定的なものではないのではないでしょうか。自分自身への評価は、日々の行動パターンや価値観の変化によって、じわじわと変わっていくものだと思います。
私が気づいたのは「朝」という時間帯の重要性です。朝は1日の始まりであり、まだ何者にも影響されていない「まっさら」な時間帯です。
そこで一度、自分なりに「これだけやれば今日は100点だと思える」ためのルーティンをつくってみたのです。全然だいそれたことではなく、ごくごく基本的なことを朝に集中して行ってみようという趣旨です。
その時は小学生の娘が2人いたので、起きてくる前に自分の時間を確保しながら家事もやらなければ、という気持ちからでした。
そのとき私が始めたこと、それは本当に些細なものでした——「仏壇に線香を供える、お湯を沸かす、掃除、洗濯、皿洗い、ストレッチ、筋トレ、メール返信」。これらを朝一番に完了させることで、私は「今日を100点」だと思うようにしたのです。
どうしてこんな簡単なことで、気分が変わるのか。不思議に思うかもしれません。ただ、実際にやってみると、朝の時点で「これだけやった、私はやるべきことをやった」と思える感覚は驚くほど強烈な「達成感」として自分に返ってきます。
心理学では、達成感や自己効力感(self-efficacy)が自己肯定感を底支えすると言われています。
カナバ・バンデューラ(Albert Bandura)の自己効力感理論(※2)によれば、人は自分が何かを成し遂げたという経験に基づいて、「私はできる」という内的な感覚を積み重ねていくことで、新しい挑戦にも前向きになれるのです。
特におすすめしたいのが、これらの習慣を「自分にとってハードルが低いこと」から始めることです。
掃除といっても、家じゅうをピカピカにする必要はなく、机の上や洗面台を少し拭くだけでもいい。洗濯も、週末にまとめる人は、平日朝は靴下やハンカチ程度をさっと手洗いする程度でいい。ヨガや筋トレも5分で終わる短いルーティンからスタートする。メール返信も、たまっているもの全てを処理するのではなく、まずは1件だけ返してみる。ポイントは、とにかく「自分にもできそうだ」と思えるレベルから始めること。「できなかった」という事実は、それこそ自己肯定感を損ねてしまいます。
こうした行動は脳科学的にも効果が期待されています。
最近の神経科学研究(※3)によると、朝の規則正しい習慣的行為は、前頭前野の活性化を促し、自己コントロール力を強化する可能性があると報告されています。前頭前野は意思決定や計画、自己抑制などに関わる脳領域で、ここがうまく働くことで、「どうせ私はダメだ」というネガティブな自己評価に陥りにくくなるというのです。
さらに、身体的な動きも大切です。ヨガや筋トレといった身体活動は、脳内でセロトニンやドーパミンといった神経伝達物質を増やし、気分を安定させる効果があるとされています(※4)。そうすると、朝一番に軽く体を動かすことが、その日の精神的基調を整える「スイッチオン」ボタンとして機能してくれるわけです。
筋トレといっても、腕立て伏せを5回やってみるとか、スクワットを10回してみるくらいでも十分。最初はそれすら苦痛なら、腕立て伏せ1回でも構わないのです。大切なのは、「やれた」という実績を1つ積み重ねること。
もちろん、これを毎日必ず行わなければならない、などと自分を縛りつける必要はありません。
私自身、最初は気合いを入れて毎朝やろうとして、3日目には挫折していました。しかし、そのとき気づいたのは、「完璧にやる必要はない」ということです。
週3回できれば上出来。それで、3週間経って「お、週に3日はちゃんとできるようになったな」と自分を褒めてあげる。そうすると、不思議なもので、いつのまにか週4日が可能になったりするものです。私はYouTubeのヨガ動画を流しながらやっていて、それだとタイマーの代わりにもなりますし、動きの見本が見えるのでオススメです。
また、自己肯定感をめぐる議論のなかで近年注目されるのは、その「持続的向上」よりも「一時的な肯定感」の積み重ねによる効果です。
2021年に発表されたJournal of Personality and Social Psychology(※5)の研究によると、自己肯定感は一朝一夕で劇的に変化するものではなく、小さな成功体験の反復が徐々に自己評価の土壌を豊かにするのだと報告されています。これは、まるで畑を耕すようなものだと思いました。
最初は固くて荒れた土壌かもしれませんが、ひと握りずつ、少しずつ栄養を与え、雑草を取り除いていくうちに、作物が育ちやすい環境が整う。
朝5分の掃除や1回の腕立て伏せは、その小さな一握りの肥料なのかもしれません。
ある時点で、自分でも「おや? 前より自分を責めなくなっているぞ」と気づく日がやってきます。
それは劇的なドラマティックな瞬間ではないかもしれません。むしろ、静かで穏やかな感覚です。例えば、仕事でちょっとしたミスをしたときに、「また私ってダメだな」と思わずに、「まあ、こういう日もあるよね」と自然に受け流せたり。
あるいは、友人との予定がキャンセルになっても、「嫌われているんじゃないか」と思い詰めず、「相手にも都合があるか」と考えられたり。そうした小さな思考の変化が、自己肯定感が底上げされている証拠なのだそうです。
私たちは、ついつい大きな成功や、周囲からの明確な称賛を自己肯定感の源泉に求めがちです。
「何か大きなことを成し遂げないと、自分は肯定できない」と思い込んでしまうと、それが逆に自己肯定感を落とす要因になってしまいます。しかし、実は自己肯定感とは、日々の中でこつこつと積み上げられる「小さな満足」を土台にして育まれるものだと実践をもとに気がつくことができました。
そのためには「朝のうちに100点にする」という発想が有効です。朝のうちに、掃除、洗濯、ヨガ(ストレッチ)、筋トレ、メール返信を軽く済ませてしまうと、その時点で「今日は満点!」と感じられる。
具体的には下記のタイムスケジュールです。今は週に5回この通りにやることが目標です。日曜日はサボりデーです。
4:30 起床・洗面・仏壇の水換え、線香、読経
4:40 ストレッチ、筋トレ(夏は猟友会で箱罠の見回り6:00過ぎまで)
5:10 掃除、洗濯、湯を沸かしてお茶をつくる(冬は薪ストーブ暖房)
5:30 朝食(納豆ごはん、味噌汁を中心に一汁一菜)
6:00 朝仕事(夏は草刈り、庭掃除)(冬は雪かき、薪割り)
7:00 洗濯物を干す
7:20 皿洗い
7:40 シャワーを浴びる
8:00 メール返信、ゴミ出し
8:30~仕事
朝の4時間が勝負の時間だと思って実施しています。もともとは猟友会の見回りが早すぎて4時半に起きる必要があったので、その習慣を冬場も保つために4時半起きを継続していたという経緯もあります。
ちなみに夜に寝るのは21時半を目安にしています。20時ころから寝るモードを作っていき、21時からは瞑想タイムも設けています。毎日7時間眠ることで、朝4時半でもスッキリと起きることができていますよ。
4時間の朝集中によって1日分の「やるべきこと」を、すでにやり終えたあとは、残りの時間はあくまで「オマケ」としての1日だと捉えることができます。
オマケの時間がうまくいけばラッキーだし、うまくいかなくても「今日はもう100点だからいいや」と思える。この「オマケ構造」は、自己肯定感をマイナス方向に引っ張る要因をかなり減らしてくれます。
実際、自己肯定感を研究する米国の心理学者、マーティン・セリグマン(Martin Seligman)は、2012年の著書「Flourish」において、「ポジティブな感情や達成感が感情的なレジリエンスを高める」と指摘しています。
朝に小さな成功を積み上げた人は、その後に起きるストレスフルな出来事に直面しても、自己評価を著しく下げることなく対処できる傾向がある、というのです。
つまり、朝に自分で自分を肯定してしまえば、他者からの評価や環境による不確定な揺らぎに対して、心の土台がしっかりと踏ん張れるようになる。
最初は週3回でいい、というのも大事なポイントです。毎日毎日、細かいルーティンを完璧にこなそうとすると、失敗したときの反動が大きい。結局は自分を責めるサイクルに逆戻りしてしまいます。「週3回」程度のゆるやかな目標なら、できたときの喜びはそのまま、できなかった日は「まあ、明日またやればいい」と軽やかな気分で過ごせます。
それが継続するうちに、やがて週4回、週5回と自然に増やしていければよいし、増えなくても構いません。自己肯定感を高めることは、生涯を通じて続く「自分づくり」の旅であり、ゴールのない、終わりなき成長のプロセスなのですから。
もし、今自己肯定感の低さで悩んでいる人がいるなら、ぜひ試してみてほしい。「どうせやっても無駄だ」という声が頭をよぎるかもしれない。でも、最初の一歩は「1回の腕立て伏せ」でもいいのです。そこで「できた!」と小さくガッツポーズをして、次の日の朝、また机をさっと拭いてみる。
そうして1日を100点でスタートさせる回数が増えていくと、気づけば自分という存在が、思っていたよりもずっと頑丈で、頼りがいのあるものに感じられてくるはずです。
自己肯定感という柔らかで温かな灯火が、あなたの日々を、ほんの少しずつでも明るく照らし始めることを願っています。
(参考文献)
Heine, J. (2010). Cultural Psychology. W.W. Norton & Company.
Bandura, A. (1997). Self-Efficacy: The Exercise of Control. W.H. Freeman.
McNab, F., & Klingberg, T. (2008). Prefrontal cortex and cognitive control. Trends in Cognitive Sciences, 12(4), 169-176.
Meeusen, R., & De Meirleir, K. (1995). Exercise and brain neurotransmission. Sports Medicine, 20(3), 160-188.
Neff, K. D., & Vonk, R. (2021). Self-Compassion and Psychological Resilience. Journal of Personality and Social Psychology, 121(4), 704-723.
Seligman, M. E. P. (2012). Flourish: A Visionary New Understanding of Happiness and Well-being. Free Press.
※1 ジョン・ヘインの研究については、彼の著書や論文において日本と西洋諸国の自己肯定感に関する比較が取り上げられています。
※2 アルバート・バンデューラの自己効力感理論は、個人が自分の能力を信じることで、目標達成に向けた行動を促進する理論です。
※3 前頭前野の活性化に関する神経科学的研究は、多くの文献で報告されています。例えば、McNab & Klingberg (2008) の研究では、前頭前野が認知制御に重要な役割を果たすことが示されています。
※4 ヨガや筋トレがセロトニンやドーパミンの分泌を促進し、気分を安定させる効果については、Meeusen & De Meirleir (1995) の研究が参考になります。
※5 Neff & Vonk (2021) の研究では、自己肯定感が小さな成功体験の積み重ねによって向上することが報告されています。
※6 マーティン・セリグマンの「Flourish」は、ポジティブ心理学の観点から幸福とウェルビーイングについて論じた著書です。
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