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【習慣化の技術7−1】結果ではなく「行動」を愛する。目標設定の限界とドーパミン(理論編)

はじめに


これまで様々な行動の技術や時間管理の工夫について詳しくお話ししてきました。

ですが、習慣化のノウハウをどれだけ積み上げても最後に私たちの足を引っ張るのが脳の報酬系です。
多くの人は何かを始めるときにご褒美を用意したり高い目標を掲げたりします。
しかし実はこのアプローチこそが継続を妨げる最大の罠になっていることがあります。

今回は私たちが行動そのものを愛するための脳の仕組みを解説します。




外発的動機と内発的動機


習慣を維持しようとするときにアメとムチを使う手法は一般的です。
これを心理学の用語では外発的動機付けと呼びます。
例えばテストで良い点数を取ったらお小遣いがもらえるというような仕組みです。

この方法は短期的には非常に強い効果を発揮します。
しかしご褒美をもらうことが目的になるとそのご褒美がなくなった瞬いに行動は止まります。

さらに恐ろしいのは元々楽しんでやっていたことに対してご褒美を与えるとやる気が失われる現象です。
これをアンダーマイニング効果と呼びアメとムチによる習慣化が長続きしない科学的理由です。

本当に習慣を一生モノにするためには行動そのものが楽しくて仕方がないという状態を作る必要があります。

自分自身の内側から湧き出るワクワク感や知的好奇心を内発的動機付けと呼びます。
アメに頼るのではなく行動そのものをアメに変えていくことこそが本質的な解決策なのです。



目標という名の罠と遅延報酬


私たちはダイエットや貯金あるいは資格試験の合格という具体的な目標をよく設定します。
しかし脳の構造から見るとこれらの目標には非常に大きな罠が潜んでいるのです。

それは目標というものは、結果が出るまでに膨大な時間がかかるという遅延報酬の性質を持っている点です。
人間の脳は本来生き残るために目の前にある報酬を優先するように進化してきました。
そのため数ヶ月先や数年先にある大きなご褒美に対して脳はなかなか強い価値を感じられません。

私の場合を例に挙げると、ダイエットの遅延報酬には本当に耐えられません。
今日どれだけ食事制限を頑張っても明日の朝に体重が激減しているわけではないからです。

実は毎朝行っている筋トレの遅延報酬にも私の脳は全く耐えることができません。
筋肉がつくという未来の成果を待つのは退屈で耐え難い苦痛だからです。

ではなぜ私の筋トレが継続しているかというと認識をまるごと書き換えたからです。

私は筋トレを健康のための努力ではなくインクラインベンチを使ったおもしろい遊びと定義しました。
ゲームのレベリングのような遊びだと脳を誤魔化しながらスタートしたのです。
実際、ただ単に自重でトレーニングするよりも、ベンチを使ったほうが気分も上がるしけっこうおもしろいです。

その上で前編でお話しした通り毎朝やるとシステム化したことで結果として継続できています。


遅延報酬に関する余談


ところで、行動経済学では今すぐ1000円もらえるのと1年待って2000円もらえるのはどちらが良いかという問題があります。
この有名な問いに対して私は何のためらいもなく絶対に今すぐ1000円をもらうと断言します。

だいたい1年後にその約束が確実に履行されるという保証はどこにあるのでしょうか。
世界がどうなるかも分からないのに不確実な未来を待つのは合理的ではないと感じます。
それなら今すぐ1000円をもらってそれを有効活用したほうが倍以上になる可能性もあります。

こんなことばかり考えているから私は金持ちになれないのかもしれないとは自分でも思います。
しかしそれほど私の脳は遅延報酬というものが大嫌いで今すぐの快感を求めてしまうのです。


勉強、独学の場合


そんな私が長年勉強を続けて資格を取得できたのは別の思い込みを利用したからです。

私は勉強の内容そのものよりも勉強している自分はかっこいいと長年かけて思い込んできました。
図書館やマクドナルドで小難しいテキストを開いている自分の姿に酔うという、今すぐの報酬を用意したのです。

自分の脳の性質を理解し遅延報酬の退屈さをいかに今すぐの快感で埋めるかが勝負になります。



ドーパミンを味方につける脳のハック


脳の中で快感やモチベーションを生み出しているのがドーパミンという神経伝達物質です。
多くの人は目標を達成した瞬間にドーパミンが大量に分泌されると考えています。

しかし近年の脳科学の研究によってドーパミンは目標を達成した時ではなく期待した時に出ると分かっています。
つまり宝くじが当たった瞬間よりも宝くじを買って当選発表を待っている時に脳は最も興奮します。

この仕組みをうまく利用すれば日々の習慣化を劇的にラクにすることができます。

ただしここで注意しなければならないのはお金などの直接的な報酬を期待しすぎることです。
もしその期待が実現しなかった場合脳は激しい落胆を感じて行動を拒絶するようになります。
期待しすぎるアプローチは後々のダメージが大きすぎるため私はおすすめしません。

私たちが期待すべきなのは結果ではなく今日もやることやったという小さな達成感です。
自分の意志でやりたいことを今日も実行できたという自己コントロール感こそが最高の報酬です。

またこれに関連して根拠の薄いポジティブシンキングをするのも非常に危険です。
引き寄せの法則のように願っていれば絶対にうまくいくというような思考は、裏切られた時にショックが倍増します。

私も過去に根拠のない自信に頼って行動し後で現実とのギャップに絶望した経験があります。
ポジティブな幻想に逃げるのではなく淡々と目の前の行動を積み重ねる期待感こそが安全です。



プロセス自体を報酬にするフロー状態


習慣化の究極のゴールは行動すること自体が目的化するフロー状態に入ることにあります。
フローとは時間の感覚が消え去るほど目の前の作業に完全に没頭している心の状態です。
このフローに入ることができるとそれだけで脳にとっては極上の報酬になります。

ただしフローに入っている最中は気持ちいいとか悪いとかいう感情もなく、ほとんど目の前の作業のこと以外何も考えていません。
完全に自己を忘れて作業と一体化しているため、余計な思考が停止している状態です。

正確には作業がすべて終わった後になってから振り返ってあれはフロー状態だったと気がつきます。
その瞬間に深い達成感と自分が一歩前進したという強烈な自己向上感が湧き上がってくるのです。

このプロセスそのものがご褒美になる感覚を一度でも味わうと習慣は完全に自動操縦モードに入ります。

結果のために走るのではなく走ることそのものが楽しいから明日もまた走りたくなるのです。



後編ではこの脳の仕組みを応用し人生を自動操縦するための具体的な報酬設計の実践編をお届けします。


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