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【習慣化する技術5−1】不完全主義と「2日ルール」

はじめに


習慣化の技術を身につけ、日々のルーティンが順調に回り始めたとしても、私たちの前には常に巨大な罠が待ち受けています。
それこそが「完璧主義」という名の罠です。

多くの人は、物事をきっちりと完璧にこなすことこそが継続の秘訣だと信じて疑いません。
しかし、500日以上noteを書き続け、様々な習慣を維持している私の実感から言えば、完璧主義こそが習慣化を最も冷酷に破壊する天敵です。

今回は、なぜ完璧を目指すことが危険なのか、そして私たちが身につけるべき「不完全主義」の知性について解説します。




「どうにでもなれ効果」という心理の恐怖


完璧主義者が最も陥りやすい心理現象に、行動経済学や心理学で「どうにでもなれ効果(What the Hell Effect)」と呼ばれるものがあります。
これは、あらかじめ自分が決めていたルールをたった1度破ってしまった途端、「もうすべてが台無しになった。どうにでもなれ」と自暴自棄になり、それまでの努力をすべて放棄してしまう心理状態を指します。

例えば、ダイエット中に「毎日糖質を制限する」と決めていた人が、付き合いでうっかりケーキを1個食べてしまったとします。
ここで不完全主義者であれば「まあ、こんな日もあるか」で済ませるのですが、完璧主義者は違います。
「ルールを破ってしまった。私の計画は汚れてしまった」と感じ、その日の夜にラーメンや揚げ物をドカ食いしてしまうのです。

冷静に科学的な事実を見つめてみれば、たった1回の暴飲暴食くらいでは、人間の体重が劇的に増えることはありません。
本当に影響が大きいのは、その1回のミスではなく、「どうにでもなれ」となってその後も複数回にわたって暴飲暴食を続けてしまうことです。

これは筋トレや勉強でも全く同じことが言えます。
仕事が忙しくて筋トレを数日休んでしまったとしても、人間の筋肉が数日程度で目に見えて落ちることは科学的にあり得ません。
むしろ、日頃の疲労が抜けて超回復が起き、次に再開したときには以前より筋力がアップしている可能性すらあるのです。

たった1回の「未達成」を人生の終わりのように捉えてしまう完璧主義の認知の歪みこそが、真の敵なのです。


自分に厳しい人ほど挫折する理由


心理学の研究において、自分に対して過度に厳しく、失敗したときに激しく自己批判をする人ほど、習慣化の成功率が低いことが分かっています。
ここで重要になるのが「自己受容」や「セルフコンパッション(自分への慈悲)」という考え方です。

失敗したときに「なんて自分はだめな人間なんだ」と責め立てると、脳は強いストレスを感じます。
すると、脳はそのストレスから逃れるために、さらに手軽な快楽(スマホゲーム、過食、飲酒など)を求めるようになり、結果として習慣の崩壊を加速させてしまいます。

不完全な自分をそのまま受け入れ、失敗したときこそ「人間だからそんなこともある」「疲れていたんだから仕方ない」と親しい友人のように声をかけてあげること。
このセルフコンパッションの精神こそが、挫折のダメージを最小限に抑える防波堤となります。


0か100かの思考から脱却し、複利を生み出す


完璧主義の本質は「0か100か」のデジタルな思考です。
100点じゃないなら0点と同じ、という極端なマインドセットです。
しかし、習慣化という地味な営みにおいて、100点の日などそうそうありません。

大切なのは、100点の日を増やすことではなく、0点の日を作らないことです。
たとえ体調が悪くて10点しかできない日があっても、その10点を積み重ねることが、長期的に巨大な複利を生み出します。

私の過去記事「習慣と超高等数学」で語った通り、完全なゼロにさえしなければ、私たちは現状維持かそれ以上の場所に留まり続けることができるのです。


最強にして至強の「知らんぷり」ルール


完璧主義の硬い殻を破り、しなやかに習慣を続けるために必要なのは、柳のような柔軟性(フレキシビリティ)です。
強い風が吹いても、硬い大木はポキリと折れてしまいますが、しなやかな柳は風を受け流して折れません。

ここで、私がお気に入りのキーワードとして愛用しているのが「知らんぷり」というルールです。

もし自分で決めたルールを破って数日間サボってしまったとしたら、そこであれこれ反省したり、自分を責めたりしてはいけません。
ただ、何事もなかったかのように「知らんぷり」をして、次の日に再開すればいいのです。
あるいは、今の自分にとってそのルールが厳しすぎるのだと判断したなら、その場で「知らんぷり」してルール自体を書き換えてしまっても構いません。

さらに言えば、長年続けてきた特定の習慣が完全に途切れてしまい、どうしても再開する気になれないことだってあります。
そんな時も、過去の未練に囚われる必要はありません。
その習慣が途切れた事実に「知らんぷり」を決め込み、また新しくやりたくなった次の習慣に淡々と取り組めばいいのです。

私たちの人生は完璧な数式ではありません。
途切れ、崩れ、修正を繰り返す泥臭いプロセスそのものです。
ルールを破った自分すら知らんぷりをして受け流す。
その圧倒的な図太さこそが、不完全主義者が持つ最強の武器なのです。


後編では、この不完全主義をシステムとして具現化した「2日ルール」と、最悪の状況を生き延びるための「ミニマルな防衛線」について詳しくお話しします。


参考:「不完全主義」について

こちらの記事も是非お読み下さい。




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