【習慣化する技術2−1】 イフゼンプランニング 【やっぱりこれ最強】
はじめに
前回の記事では、人間の意志力には限界があり、気合や根性に頼る習慣化は長続きしないというお話をしました。
今回は、その有限な意志力を一切使わずに、脳を自動操縦モードへと切り替えるための最も強力で基礎的なテクニックである「イフゼンプランニング」の理論について解説します。
TODOリストが私たちを疲弊させる理由
心理学には「エゴ・デプリーション(自我消耗)」という概念があります。
これは、人間の脳は1日の中で決断を下すたびに疲労し、意志力のエネルギーがすり減っていくという考え方です。
私たちは朝起きてから夜眠るまで、無数の決断を繰り返しています。
今日のお昼ごはんに何を食べるか、どの服を着て出かけるか。
実は、こうした日常の些細な選択でさえ、脳のエネルギーを確実に消費しているのです。
著名な経営者たちが毎日同じ服を着て決断の回数を減らしていたというエピソードは有名ですが、これは脳のリソースを温存するための非常に理にかなった戦略だと言えます。
このエゴ・デプリーションの観点から見ると、多くの人が習慣化のために用いる「単なるTODOリストの羅列」がいかに危険かがわかります。
TODOリストに「本を読む」「勉強をする」と書いてあるだけでは、それを見るたびに「さて、今からどれをやろうか」という「選ぶ」という決断が毎回発生してしまいます。
仕事や日々のタスクで夕方にはすでに脳が疲労困憊している状態のとき、TODOリストから何かを一つ選んで実行に移すという行為は、想像以上に脳にとって重労働です。
結果として「選ぶのが面倒だから、今日はもういいや」と先延ばしにしてしまうことになります。
システム2からシステム1への移行
前回触れた人間の思考モードの理論を思い出してみて下さい。
人間の脳には、論理的で意識的な努力を必要とする「システム2」と、直感的で無意識に働く自動処理の「システム1」があります。
先ほどの「TODOリストから選んで実行する」という行為は、明らかにシステム2の領域です。
決断というエネルギーを大量に消費するため、毎日の継続には向きません。
習慣化を成功させるための最大の鍵は、いかにして意識的な努力であるシステム2の行動を、無意識の自動処理であるシステム1へと切り替えるかにあります。
そして、その切り替えを最もスムーズに、かつ強力に後押ししてくれるフレームワークこそが「イフゼンプランニング」なのです。
実行率を劇的に引き上げるイフゼンプランニングの科学
イフゼンプランニングとは、心理学者のピーター・ゴルヴィツァーらが提唱した手法です。
やり方は非常にシンプルで、「もしAが起きたら、Bをする(If A, Then B)」というように、あらかじめ状況と行動をセットにして決めておくだけです。
ゴルヴィツァーの研究をはじめ、数々の心理学実験において、このイフゼンプランニングを用いるだけで目標の実行率が跳ね上がることが実証されています。
なぜこれほどまでに効果があるのでしょうか。
それは、脳が「もしAが起きたら」という条件をあらかじめインプットしておくことで、その状況が訪れた瞬間に自動的に「Bをする」という行動のスイッチが入るからです。
つまり、行動する直前に「いつやろうか」「どれをやろうか」という決断をする必要が完全になくなるため、意志力をまったく消費せずにシステム1の自動操縦で動くことができるようになります。
脳に事前のプログラミングを施すようなものだと考えて下さい。
時間ではなく既存の行動をトリガーにするメリット
イフゼンプランニングを実践する際、条件となる「A(Ifの部分)」、つまりトリガーの設定には重要なコツがあります。
それは、時間をトリガーにしないことです。
「夜20時になったら、勉強をする」のように時間をトリガーにしてしまうと、予定の変更に極めて脆くなります。
もし急な用事で20時に間に合わなかった場合、「20時を過ぎてしまったから、今日はやめておこう」と挫折する原因になります。
あるいは「じゃあ21時からにしようか」と、計画を再構築するための決断が新たに発生してしまい、ここでまた脳のリソースを大きく消耗してしまうのです。
そこでおすすめしたいのが、時間ではなく「すでに毎日必ず行っている既存の行動」をトリガーにするメリットを活かす方法です。
例えば「朝、コーヒーメーカーのスイッチを押したら、ストレッチをする」「お風呂から上がったら、本を1ページ開く」といった設定です。
コーヒーを淹れる、お風呂から上がるという行動は、時間がずれたとしても毎日たいてい行われますよね。
こうした絶対に発生する行動に新しい習慣を紐付けることで、予定の変更に左右されにくくなります。
時間というあやふやなものではなく、確実に行われる自分自身の行動をスイッチにすることで、脳は迷うことなく次の行動へと移ることができるのです。

後編では、このイフゼンプランニングを自分の生活にどのように組み込んでいけばいいのか、具体的な実践のステップについて解説していきます。
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