夜中に目が覚めて、1時間眠れない|睡眠薬より先に試してほしいこと
夜はすぐ眠れるのに、途中で目が覚めると、そのあと眠れない。いわゆる中途覚醒です。目が覚めて30分、1時間と眠れない夜が続けば、翌日の眠気や集中力にも響きます。
今回、メンバーの方からこんな質問をいただきましたが、当てはまる人は多いと思います。
睡眠薬より先に、0円で試せる方法がある
年齢とともに深い眠りは減るので、夜中に目が覚めやすくなるのは本当です¹⁾。ただ、 目が覚めて1時間眠れず、翌日に響いているなら「歳のせい」で片付けないほうが良いと思います。
ここで、ぜひおすすめしたいのが 不眠の認知行動療法(CBT-I)です。
認知行動療法という名前から、なんだか大変なことをしなければいけないと思われがちです。実際にこの記事で扱うのは、布団で過ごす時間と、眠れないときの行動を変えること。サプリも器具も要りません。 0円で始められます。
自分もときどき夜中に起きちゃって眠れない時がありますが、そんなときはこのあと紹介する刺激制御法をやっています。少なくとも自分には、効果抜群です。
何より 「眠れなかったらこれ(CBT-I)をやればいいや」 とわかっているだけで、眠れないことへの焦りが減ります。その安心感で、かえって眠りやすくなる気もしています。
大げさではなく、自分はこれを全人類に知識として持っておいてほしいと思っています。
外来では、「とりあえず眠れる薬をください」と言われることが少なくありません。眠れない日が続けば薬が欲しくなる気持ちはわかります。
ただ、 慢性不眠の第一選択は、睡眠薬ではなくCBT-Iです。 米国内科学会と米国睡眠医学会のガイドラインが、どちらも最初に勧めています²⁾³⁾。
数字にすると、かなり効きます。
20本の比較試験、1,162人をまとめた解析では、平均して次の変化がありました⁵⁾。
寝つくまでの時間:19分短縮
夜中に起きている時間:26分減少
睡眠効率:約10ポイント改善

睡眠効率とは、布団にいた時間のうち実際に眠れていた割合です。地味に見えるかもしれませんけど、睡眠薬なしでこれだけ改善したらコスパは最高だと思います。
総睡眠時間は、治療直後では約8分しか増えず、統計的にははっきりしませんでした⁵⁾。ここがCBT-Iのおもしろいところです。 いきなり睡眠時間を長くするのではありません。まず、布団の中で眠れずにいる時間を減らします。
費用対効果をまとめた2026年のレビューでも、CBT-Iは不眠治療の中で、費用対効果の根拠が最もそろっていました⁶⁾。
慢性不眠でCBT-Iを一度も試さず、睡眠薬だけを続けるのはかなりもったいない と思っています。
この記事で紹介するのは、CBT-Iの中心にある2つです。
布団にいる時間を、短くする
眠れないときは、布団から出る
1つ目は、布団にいる時間の長さを変える方法。2つ目は、目が覚めてしまったときの動き方を変える方法です。
いちばんの盲点は、眠くないのに布団にいる時間
あまり知られていませんが、 布団で過ごす時間を必要以上に長くすると、かえって眠れない時間が増え、不眠が長引きやすくなります。
寝不足を取り返そうと、いつもより早く布団に入る。朝も長く横になる。ところが、その時間に眠れていなければ、布団の中で起きている時間が増えるだけです。早く布団に入りすぎると、十分に眠くなる前から横になることになります。
たとえば、布団に8時間半いるのに、眠れているのは6時間半。残りの2時間は、布団の中で起きています。この人がさらに早く寝ると、眠れない時間がもっと増えるかもしれません。
布団の中で1時間も眠れず、焦ったり考えごとをしたりする夜が続くと、脳は 「布団=眠る場所」ではなく「布団=起きて考えごとをする場所」 と学習してしまいます⁷⁾。
さきほどの2つは、どちらも布団で起きている時間を減らします。ただ、効き方は少し違います。片方は夜の眠気そのものを強め、もう片方はこの結びつきをほどきにいきます。
布団にいる時間を、眠れている時間に近づける|睡眠制限療法
布団にいる時間のわりに眠れている時間が短い人に使うのが、1つ目の「睡眠制限療法」です。
やることは、大きく3つです⁸⁾。
朝起きる時刻を固定する
起きる時刻から、いま実際に眠れている平均時間を引いて、布団に入る時刻を決める
1週間続けて、布団にいた時間の85%以上眠れていたら、布団にいる時間を15分増やす
さきほどの、布団に8時間半いて眠れているのが6時間半という人なら、朝の起床時刻は動かさずに、夜、布団に入る時刻を遅らせます。短くしすぎないよう、5時間を下限にします⁸⁾。
名前は強く聞こえますが、 目的は睡眠時間を削り続けることではありません。布団の中で起きている時間を減らすことです。 布団にいる時間を調整すると、夜の眠気(睡眠圧)が高まり、眠りがギュッとまとまりやすくなります。

厚生労働省の睡眠ガイドにも、ベッドで過ごす時間を短くすることで眠りがまとまり、寝つきや眠りの維持が良くなると書かれています¹⁾。
7時間という数字を追いかけて早めに布団へ入ると、かえって眠れない時間が増えることがあります。
一方、布団にいるのが7時間で、眠れているのが6時間なら、布団の中で起きているのは1時間です。 この数字だけで、さらに布団にいる時間を短くするとは決められません。 日中の眠気や起床時刻の制約を見て、そもそも睡眠時間が足りているのかを確かめます。
同じ「6時間台」でも、布団にいた時間まで見ると考え方が変わります。
実際に夜中に目が覚めてしまったときは、どうするか?
ここで登場するのが、刺激制御法です。
睡眠制限療法が布団にいる時間を調整して夜の眠気を強めるのに対して、刺激制御法は、さきほどの 「布団=起きて考えごとをする場所」 という結びつきを直接ほどきにいきます。
基本は4つです⁷⁾。
眠くなってから布団に入る
布団は原則、睡眠だけに使う
眠れなければ一度出る
朝は同じ時刻に起きる
中途覚醒でいちばん大事なのは、 眠れないまま布団で粘らないことです。 目が覚めていると気づき、焦り始めたら、いったん布団を出る。暗く静かな場所で過ごし、眠気が戻ってから布団に戻ります。

厚生労働省のガイドにも、眠れないときは寝床を離れ、静かで暗く安心できる場所で眠気を待つと書かれています¹⁾。
ここで必ず聞かれるのが、何分で出るのか、です。
原典には10分や15分という記載があります。ただ、この方法を作った本人は、時計で時間を測らないほうがいいと書いています⁷⁾。時計を確かめる行為そのものが、焦りにつながるからです。
実際、夜中に時計を繰り返し確かめる人は、眠るまでの時間が延び、心配ごとも増えることが実験で示されています⁹⁾。
自分の場合は、体感で15分くらい眠れなかったら布団を出ています。 時計を見て15分を測るわけではありません。「これはもう寝つけないな」と感じる頃が、そのくらいです。
ソファーに寝転がり、暗めの照明で読み慣れた紙の漫画を読みます。ハンターハンター、刃牙、ジョジョあたりが好きです。新しい本は脳が興奮してしまうかもしれないので、読んだことがある漫画にしています。眠気が戻ったら、また布団へ戻ります。
ここでスマホだけは見ないでください。自分も絶対に見ません。 画面の光に加え、通知やSNS、検索で頭が動き始めます。少なくとも自分は、一度開くと本当に眠気が飛びます。
ちなみに早朝に起きてしまった時ですが、起床時刻まで45分以上あるなら眠気が戻ったときにもう一度眠ってもよいし、45分未満ならそのまま起きてもよい、という目安もあります⁷⁾。全員に共通するルールではありませんけど、微妙な時間に起きちゃって迷ったときの目安の1つになりますね。
自己流で始めないほうがいい人
睡眠制限療法では、布団にいる時間を短くした直後に日中の眠気が強くなることがあります³⁾。次に当てはまる人は、自分だけで始めないほうが安全です。
運転や機械の操作をする人
てんかんや双極性障害のある人
すでに日中の眠気が強い人
交代勤務で、眠る時刻が日によって変わる人
すでに眠気が強い場合は、睡眠時間が足りていないのか。睡眠時無呼吸が隠れていないか。先に確かめます。
厚生労働省のガイドは、高齢者が自分で布団にいる時間を短くするときも、 6時間未満にはしない よう勧めています¹⁾。
刺激制御法にも注意点があります。高齢で転びやすい人や睡眠薬を使っている人は、夜中に移動すると転ぶ危険があります³⁾。無理に別室へ行かず、安全に過ごせる場所を確保するか、主治医へ相談してください。
🚩ここから先は、朝の光がかえって逆効果になる人の見分け方から始めます。そのあと、アップルウォッチの数字をどこまで信じるか。中途覚醒の裏にある7つの原因も、1つずつ切り分けます。メンバーシップ「Dr.もさりラボ」で読めます。過去記事も全部読み放題です。
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