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医者の自分がフルーツを皮ごと食べまくって気づいたこと

家族にドン引きされた。

キウイをそのまま丸かじりしているのを見た妻が、
「えっ、皮ごと食べてるの……?本当に無理」とガチで引いていた。

コロナ禍の秋だったと思う。フルーツの皮に含まれる栄養素について調べていたら、思っていた以上にちゃんとしたエビデンスが出てきて、思った。

「これ、剥いて捨ててる場合じゃないな」

それ以来、キウイ、りんご、みかんを皮ごと食べるようにしている。

今回は「フルーツの皮」の話をする。皮ごと食べることで具体的に何が変わるのか、それぞれのフルーツの皮にどんな成分が入っているのかを、自分の体験と医学的な知見を交えてまとめてみる。

先に言っておくと、りんごの皮から始まった話が、最終的に今いちばん注目されている糖尿病の薬の発見史につながる。これが個人的にいちばん面白かったので、少し長めに書く。


キウイの皮は食物繊維の塊だった(フルーツの皮の栄養)

キウイの皮。見た目はたしかに食欲をそそるものではない。茶色くてモサモサしている。

でも食べてみたら、意外とイケた。

最初はゴールドキウイから試した。ゴールドは皮が薄くて毛も少ないから、抵抗が少ない。りんごの皮よりも薄いくらいで、ほとんど気にならなかった。グリーンキウイは毛があるぶん最初は少し気になったけど、水でこすって毛を落とせば問題ない。慣れたら丸かじりで普通に食べている。

で、肝心の栄養の話。

キウイは皮ごと食べると栄養価がかなり変わる。ゴールドキウイの場合、皮ごとだと食物繊維が約50%増、ビタミンEが約32%増、葉酸が約34%増になるというデータがある。抗酸化物質に至っては、皮は果肉の3〜5倍の濃度があるという報告もある。グリーンキウイでも傾向は同じで、皮に栄養が集中している。

食物繊維が50%増えるという数字、地味に見えるかもしれないけど、キウイを毎日食べるなら結構な差になる。自分は結構な頻度で夜に1〜2個食べているので、皮を剥くか剥かないかで1日あたり1g以上の食物繊維の差が出る。月に換算すると30g。これを捨てていたと思うと、けっこうもったいない。

自分が皮ごと食べ始めて最初に感じた変化は腸の調子だった。便通がよくなった、という直接的な話。キウイの食物繊維は水溶性と不溶性の両方を含んでいて、不溶性食物繊維が腸の蠕動運動を促す。皮にはこの不溶性食物繊維が特に多い。

ただし、これは自分の体感の話であって、「キウイの皮を食べたから便通が改善した」と因果関係を断定できるわけではない。同時期に食事の他の部分も変えていたし、そもそもN=1の体験。とはいえ、食物繊維の摂取量が増えれば腸の動きが変わるという話自体は、複数の研究で一貫して報告されている。ちなみにキウイと睡眠の話は別の有料記事で書いた。


みかんの皮は漢方薬だった(陳皮とヘスペリジン)

みかんの皮を初めて食べたのは、医学部の実習中だった。

ポリクリ(臨床実習)にコソコソみかんを食べていたら、講師の先生が入ってきた。見つかったら怒られる。咄嗟に皮ごと口に押し込んだ。

噛んだら音でバレる。舌で上顎に押しつぶして黙って飲み込もうとしたら、舌が攣った。

健康目的でも何でもない、ただの証拠隠滅。でもそのときに「あれ、皮って食べられるんだ」と気づいたのが、自分のみかんの皮体験の原点になっている。

とはいえ外皮は今でも微妙な気持ちで食べている。やっぱり苦い。薄皮と白いスジは全然いける。というか白いスジを取る方が面倒なので、最初から取らなくていいと思ったら楽になった。

みかんの皮を乾燥させたものは「陳皮(ちんぴ)」と呼ばれる生薬で、漢方では胃腸薬として昔から使われている。補中益気湯、六君子湯、平胃散。消化器系の漢方処方にはだいたい陳皮が入っている。この辺りの漢方は患者さんに処方することも多いけれど、「みかんの皮っすよ」というと割と安心して飲んでくれる。

主要成分はヘスペリジン。ポリフェノールの一種で、毛細血管を強化して血流を改善する作用がある。果肉より皮やスジ、袋の部分に圧倒的に多く含まれている。

もうひとつ面白い成分がノビレチン。脂溶性のポリメトキシフラボンで、動物実験ではアルツハイマー病のモデルマウスに対する認知機能改善効果やアミロイド沈着の抑制が報告されている。ただしこれもマウスの話で、ヒトでの実証は限定的。


りんごの皮から「1835年の薬」の話(フロリジンとSGLT2阻害薬)

りんごの皮には、ポリフェノールが果肉の2〜6倍含まれている。りんごを剥いて食べるということは、栄養の半分以上を捨てているようなものだと言ったら言いすぎかもしれないけど、まあ結構な量を捨てている。

なぜ皮にこんなにポリフェノールが集中しているのか。答えは、ポリフェノールが植物にとっての「防御物質」だから。紫外線、虫、病原菌。皮は外界と接する最前線で、植物はそこに自分を守るための化学物質を集中配備する。人間の目からは「栄養素」だけど、植物の目からは「毒」。

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