朝の血圧が下がらない人の、夜の犯人リスト
自分の普段の血圧は、110/65くらいだ。低めで、筋トレも17年続けている。血圧で困ったことは、正直あまりない。
でも先日、それが一晩で大きく動いた。
ある料亭みたいなところに連れて行ってもらって、出てきたのは塩分がっつりのフレンチ。岩塩をたっぷり振ったフランスパンがうますぎて、気づいたら2メートルくらい食べていた。締めにエスプレッソまでいただいて、その夜は目が冴えて、なかなか眠れなかった。
翌朝、家で血圧を測ったら135/75。普段より、上が25、下が10も高い。
たった一晩だ。減塩を怠ったわけでも、運動をサボったわけでもない。一晩の「塩・締め・カフェイン・夜更かし」だけで、自分の血圧はここまで動いた。血圧は固定値じゃない。前の晩の過ごし方が、翌朝の数字にそのまま表れる。
だから外来で「先生、朝だけ高いんです」と聞くと、自分はまず前の晩を疑う。昼や夜は落ち着いていて、健診も130台。でも朝に測ると145、ときには150近くまで出る。本人は減塩の本を読み、サプリを調べ、血圧計まで買い替える。たいてい、血圧計のせいではない。
前回の記事では、血圧130台を「ギリギリセーフ」で終わらせず、まず家庭血圧を測るところまで扱った。今回はその続きだ。家庭血圧を測り始めたあと、前夜のどこから疑い、どこから先は医者に任せるか。外来で踏んでいる順番のまま書いた。
ある経営者の、朝だけ高い血圧
仮にAさんとする。40代後半、体格は大きめ。仕事量が多く、会食は週2〜3回。健診では毎年「血圧が少し高め」と言われていた。週末はジムにも行くし、塩分もそれなりに気にしている。
それでも、朝の家庭血圧だけが下がらない。持ってきてもらった記録を見ると、夜の数字は悪くないのに、特定の日の朝だけ上がっていた。そこが気になった。
- 会食なしの日:朝132〜138
- 会食ありの日:朝145〜152
- 飲酒なしで寝不足の日:朝140前後
- 休日に長く寝た日:朝128〜134
本人は「塩分ですかね」と言った。もちろん塩分は関係する。ただ、自分が見たのは塩分だけではなかった。
会食の日は、終了が22時半を過ぎていることが多かった。飲酒量は本人の感覚では「普通」。ハイボール2〜3杯、ときどき日本酒。問題は、そのあとだった。
帰宅して、仕事のチャットを確認する。返信が必要なものだけ返す。気づいたら0時半。風呂に入って、スマホを見ながら寝る。睡眠時間は6時間弱。
この流れを聞くと、朝の血圧が高い理由を塩分だけで説明するのは難しい。夜が長い。酒が残る。交感神経が活性化したまま。そして朝、血圧が跳ねる。朝の血圧高値は、夜の終わり方から見たほうが早い人がいる。
血圧の話になると、どうしても「塩分」「体重」「薬」に目が行く。どれも大事だ。でも、朝だけ高い人では、前夜から起床までのどこかに数字を動かしている要因がある。そこを見ないままサプリや減塩食品を足しても、順番が違う。
「下がらない」には、型がある
血圧が下がらない人を、一括りにしない。朝も夜も高いのか。夜は低いのに朝だけ高いのか。会食翌朝だけ跳ねるのか。平日だけ高いのか。型を分けないまま「生活習慣を改善しましょう」と言っても、たぶん動けない。
家庭血圧は、いい手がかりだ。ただし、家で朝だけ高い人を「家で測ったら高いだけ」と軽く見ないほうがいい場合もある(いわゆる仮面高血圧)。夜間血圧の細かい型まで家庭で決めることはできない¹⁾²⁾。最終の評価は医療機関の領域だ。
もちろん、「生活を整えれば薬はいらない」と伝えたいわけではない。180/120mmHgを超える高値、胸痛や麻痺などの症状がある場合は、夜の犯人探しで粘らず医師に相談してほしい。糖尿病・腎臓病・心血管疾患がある場合、すでに降圧薬を使っている場合も同じだ
ここから扱うのは、その手前の話だ。自分が確認したいのは、最後に食べた時刻、最後の一杯、締め、帰宅後の仕事、いびき、口渇、夜間尿、朝の頭痛、翌朝の体重。そこまでたどると、「血圧が下がらない」ではなく、「特定の夜のあとに下がらない」に変わる。
🚩メンバーシップ限定パートです。無料記事の入口は「まず測る」でした。ここからは、夜の犯人を、外来で疑う順番のまま、ひとつずつ確かめます。
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