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ハマっていた16時間断食をやめた話|間欠的断食のワナ

昔、断食にどっぷりハマっていた時期がある。

きっかけは、海外の健康系ポッドキャストだった。Peter Attia、Rhonda Patrick、Andrew Huberman。健康長寿界の御三家みたいな人たちが、こぞってファスティングの話をしていた。

体脂肪が減る。頭がクリアになる。インスリン感受性が上がって代謝が整う。オートファジーが回って細胞が若返る。長期的にはがんのリスクも下がるかもしれない。

医学的にも筋は通っていた。飛びついた。

12時から20時の8時間枠を2年。最初の1年は確かに調子が良かった。

  • 体重と体脂肪率が安定した

  • 夜の暴食が物理的に消えた。意志力を使わなくて済む

  • 食事の段取りで悩む時間がほぼゼロになった

  • 消化器の調子がよくなった気がした

でも、ハマりすぎた。

2年目の後半から、トレーニングの回復が遅くなった。夜中3時にぱっと目が覚めるようになった。午後3時から5時の集中力が続かなくなった。ある日、顔がこけてて疲れてそうって家族に言われた。

「これ、たぶんやりすぎているな」

その日のうちに16時間断食をやめた。

やめた後、論文を読み直した。

すると、自分が信じていた「効くと言われる根拠」が、思っていたより薄いことが見えてきた。


自分を16時間断食に乗せた3人の、その後

Peter Attiaは2020年末に、四半期に1回の7日断食と月1回の3日断食をやめている¹⁾。理由は3年で約4.5kgの除脂肪量を失ったこと。

除脂肪量は筋肉そのものではない。水分も臓器も結合組織も含む。それでも、運動を続けていても断食中は除脂肪量を保てなかったと本人が話している。

いまは日々の時間制限食をゆるく続けながら、タンパク質を体重1kgあたり2g確保することを最優先にしているらしい。

Rhonda Patrickは、朝食抜きの16時間断食をやめた²⁾。朝を抜くと1日のタンパク質量が目標に届かないからだ。8時間から10時間の食事枠は、時間制限食の基本として勧めている。やめたのは、朝を抜くほうだった。

Andrew Hubermanは2021年の回で、16時間の断食を長年続けていると話していた³⁾。その回でも、筋肉を保ちたいなら午前10時前にタンパク質を入れることを勧めていた。

3人とも、断食をやめたわけじゃない。ただ、

  • タンパク質の量をしっかり確保することが大事。

  • 断食が長すぎると、タンパク質の確保が難しい。

  • だから、断食はゆるめのほうがいいかもしれない。

そういうニュアンスになってきていた。自分はその頃、朝はコーヒー、最初の食事は12時、ジムも空腹のまま。 タンパク質がいちばん入らない形で、16時間という長さだけを守っていた。

「断食は効かない」じゃない。効くからこそ、長さを間違えると壊れる。

ホルミシス:少量の毒は薬、過量の薬は毒

これは古典的なホルミシスの原則の話だ。

少量の毒は薬になり、過量の薬は毒になる。

ホルミシスについては「正しい毒」が体を強くする──ホルミシスの科学で詳しく書いた。筋トレ、断食、冷水浴、献血。負荷を入れて回復させるとき、量が適切なら体は強くなる。量が過ぎると壊れる。

これが正解かは分からない。ただ、自分は「16時間断食もホルミシスの一例なんだな」と思うようになった。

16時間断食が「効く」と言われる根拠を、読み直してみた

そもそも16時間断食、なぜ効くと言われていたのか。

最初によく引用されるのが、肥満のある23人が8時間枠で12週間暮らした小さな試験⁴⁾。1日の摂取カロリーが自然と341kcal減って、体重も2.6%減った。

「カロリーを数えなくても勝手に減る」

これが時間制限食の強い売り文句として広まっていった。

ただ、この試験には同じ時期に比べた相手のグループがいない。時間制限食のおかげなのか、試験に参加して食事への意識が変わっただけなのか、分けられない。「効きそう」レベルだ。

決定打になりそうだったのが、一流の医学誌に出た12か月の比較試験⁵⁾。肥満のある139人が対象で、「時間制限食はカロリー制限と差がなかった」と紹介されることが多い。ここに、多くの解説記事が誤読しているポイントがある。自分も最初は読み違えていた。

実はこの試験、「時間制限食とカロリー制限の比較」じゃない。

「時間制限食+カロリー制限」と「カロリー制限のみ」の比較だった。

両方とも食べる量は減らしていて、片方にだけ8時間枠を上乗せした形。12か月後、体重の減り方に確かな差はつかなかった。 カロリー制限を真面目にやっている人に、8時間の時間制限を足しても、追加で痩せる効果はなかった。

別の1年間の試験では、カロリーを数えずに8時間枠だけ守ったグループと、カロリーをきっちり25%減らしたグループを比べている⁶⁾。減った体重は、ほぼ同じだった。

時間制限食で体重が減るのは、食事枠を絞ることで自然に食べる量が減るから。 タイミングそのものに、体重を動かす特別な魔法は、たぶんない。

オートファジーで若返る、がんのリスクが下がるかもしれない、という話も同じだった。ヒトで寿命やがんの発症まで確かめた試験は、読んだことがない。 いちばん惹かれた話ほど、確かめずに信じていた。

ただ、「タイミング」自体に意味がないわけじゃない(血糖への効果)

「時間制限食は無意味」とまで言うと、それはそれであまりにも雑なまとめになってしまう。体重以外の指標を見ると、タイミングは確かに効いている。

たとえば、糖尿病リスクの高い肥満男性15人に、9時間の食事枠を「朝寄り(8時から17時)」と「夜寄り(12時から21時)」で各1週間ずつ試してもらった試験がある⁷⁾。

  • 食後の血糖の上がり方:どちらでも改善

  • 朝の空腹時血糖(CGM=持続血糖モニターで測定):朝寄りでのみ低下、夜寄りでは下がらない

つまり、同じ9時間でも、朝に寄せるか夜に寄せるかで、体の中で起きていることが違う。

自分の食事枠は12時から20時。朝の空腹時血糖が下がらなかった夜寄りの12時から21時と、ほぼ同じだった。

もちろん15人が各1週間ずつ試しただけの小さなクロスオーバー試験で、朝に寄せれば血糖が下がると約束するものではない。それでも、自分が2年間ずっと数えていたのは「16時間空いたかどうか」という長さだけだった。同じ8時間をどこに寄せているかは、一度も確かめていなかった。

これに加えて、自分が2年やってきて感じた「時間制限食が確実に役立つ場面」はこんなところだ。

  • 夜の間食を物理的に止める手段として役立つ:意志力じゃなく「ルール」で止まる。経営者外来で一番多用するメリット

  • 自然なカロリー減が起きる:試験では1日341〜425kcal減った⁴⁾⁶⁾。意識せずカロリーが落ちる

  • 早い時間帯(朝寄り)の食事枠は、朝の空腹時血糖を下げる:さっきの試験で下がったのは朝寄りだけだった⁷⁾。食後の血糖の上がり方は、どちらの枠でも改善している

  • 食事タイミングの判断疲労が減る:「いつ食べるか」を考えなくていい時間が、1日のうち16時間ある

  • 消化器が長時間休める:胃酸逆流や朝の腹のはりが減る人がいる

体重への効果は思っていたほど強くない。でも、これだけのメリットが揃うのは事実だ。ホルミシス的に言えば、これは「適量ゾーン」の話だ。

体重は安定していた。なのに3つだけ悪くなっていた

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