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アオハル放課後ラボ#25『栄光の架け橋』

ChatGPTにアオハルシリーズ第25話を依頼しました。
イラストもChatGPTへ依頼したものです。


『栄光の架け橋』


昼休み、グラウンド裏のベンチで、慎也はパンをかじりながら体育会系の友人たちの雑談を聞き流していた。

「吹奏楽部、金賞だったのにさ、全国行けなかったんだって」

「マジ? ウチの吹奏楽部、いつも行ってたろ?」

「ダメ金ってやつ。賞は金賞だけど、上に行けないらしいよ。よくわかんねぇけど」

「それって、結局ダメじゃん」

「だからダメ金っていうんじゃね」

悪意はなさそうだったが、それでも、慎也は小さく眉をひそめた。

(…ダメ金?)



放課後の科学準備室。

結衣は一人、試薬の在庫整理をしていた。窓の外では吹奏楽部の練習の音が、かすかに聞こえている。

「なあ、結衣」

「なに?」

「“ダメ金”って、知ってる?」

結衣は作業の手を止めずに答えた。

「金賞をもらっても、全国大会に進めないこと。審査員によって選ばれる“代表”から漏れたってことね」

「え、金賞もらってんのに?」

「吹奏楽コンクールではよくある話よ。特に強豪が多い地区ではね」

「でもさ、毎年全国に行ってたんでしょ?うちの吹奏楽部って」

慎也が問うと、結衣はほんの少しだけ黙った。

「さあ……どうしてかしらね」

その言い方が、結衣らしかった。



翌日、昼休み。

結衣は、吹奏楽部に所属するクラスメイト・藤井に声をかけた。クラリネットパートの2年生で、普段は目立たないが、楽譜を見つめる目はいつも真剣だ。

慎也も、後ろで黙って聞いている。

「…岩田先生のせいじゃないと思う。誰もそう言ってない」

彼女は言った。まっすぐな声だった。

「久保先生が倒れて、急に代わりを務めることになって…あの日、きっと焦ってたんだと思う。本番前にいつも何をやってたかとか、色々聞いて無かったと思うし」

「……私たちも、すっかり流れで動いちゃって…」

少し迷ってから、続ける。

「あとで、3年の先輩たちが気づいたの。“ベー、やらなかったよね”って」

「…“ベー”?」

「基準音。B♭のこと。普通、オーボエが出すの。それに全体が合わせて、全員の音程を揃えるんだけど……チューナーがあるから各自は合せられるから大丈夫だよなって。声に出さないけどみんなそう思ってたと思う。

……控室で、みんなで一度、合わせの演奏はしたの。曲を通した。でも、皆で“B♭”を出さなかった。つまり、合わせる意識が足らなかったのかもって。

……音程自体は多分そんなにズレてなかった。でも…“合わせた”っていう気持ちが大事だったんだろうなって…」

結衣は黙って耳を傾けていた。

「…あれ、私たちが言わなきゃいけなかった。誰かが“ベー出そう”って、一言言えばよかったのに」

藤井の目が少し潤んでいた。

「指揮を代わってくれた岩田先生に、何も言えないよ。むしろ、私たちが責任を持って、あの日の演奏を作るべきだった」



放課後。科学準備室。

結衣はタブレットに表示した図を見ながら、慎也に向かって静かに語り出した。

「吹奏楽って、単なる“音楽”じゃないの。ものすごく複雑で、繊細な科学に支えられてる」

「まず、気温。たった1度上がるだけで、空気中の音速は変わる。音程も微妙に高くなるの」

「金属製の金管楽器は熱で膨張する。気温が高いと、音程も上がる。リード楽器も湿度や乾燥で鳴り方が変わる」

「オーボエが基準音を出す理由は、他の楽器と違って、チューニングスライドで微調整ができないから。だから基準として安定してるの」

「で、問題は――本番前のチューニングの環境」

結衣は画面を切り替え、ホールと控室の図を見せた。

「オーケストラではステージ上でチューニングするわ。でも吹奏楽コンクールでは、それができない。全部、控室で済ませなきゃいけないの」

「でも、控室とステージの環境はまったく違う。控室はエアコンが効いていて、涼しくて乾燥している。ステージは照明で暑くて湿気もある」

「だから、控室で完璧に合わせても、ステージに出た時点で“ズレている”可能性があるのよ」

慎也が思わず口を挟む。

「じゃあ、どうすんの?」

「だからこそ、“ベー”が大事なの」

「一音でいい。オーボエの“B♭”に全員が合わせる。体も、耳も、心も。たとえズレてても、“今この場の空気”で、息を合わせるために。皆が同じ気持ちなるために」

「吹奏楽は、吹くことで音を出す。つまり、息で作る音楽。“息が合ってない”ってことは、気持ちが合ってないのと同じ」

「目に見えない微細な不安が、演奏全体を揺らすの」

結衣は、ふうっと息を吐いた。

「チューニングって、たかが一音。でも、たった一音で“今日の音楽”を作る準備が整う。あの日、その一音が、なかった」





下校途中の夕暮れ。グラウンド脇の道を歩く2人。

ふと後ろから聞こえたのは、サッカー部の男子たちの話し声だった。

「やっぱあれだよなー、顧問が変わったからミスったんだろ」

「金賞もらっといて全国行けないとか、吹部って案外たいしたことねーのかもな」

その瞬間、慎也は立ち止まり、声低く唸るように言った。

「……お前ら、吹奏楽ナメんなよ」

振り返ったサッカー部の男子たちは、一瞬たじろぎ、そのまま気まずそうに去っていった。

横で結衣は黙っていた。目を閉じて、耳を澄ますように。

――今日も、遠く四階の音楽室から、吹奏楽部の演奏が聞こえていた。




アオハル放課後ラボ#25『栄光の架け橋』 ーーー 終




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