アオハル放課後ラボ#26『Over Drive』
ChatGPTにアオハルシリーズ第26話を依頼しました。
イラストもChatGPTへ依頼したものです。
『Over Drive』
月曜日、昼休み。
中庭のベンチに腰かけていた結衣は、手元のサンドイッチを一口かじる前に、視線だけで「ん」と示した。
「……あそこ、ちょっと騒がしいね」
「うん?」
隣でおにぎりの袋を開けていた慎也が顔を上げる。視線の先には、女子生徒の輪に囲まれて、ひときわ明るい声が響いている。
「あれ陽菜だろ? なんかまた盛り上がってるな」
「昨日のレースで、表彰台に乗ったらしいよ。3位だったって」
「……へえ。あいつ、車のレースなんてやってたんだっけ?」
「前に言ってたじゃない。4歳からレーシングカートを始めて、高校一年で全日本カート選手権にも出てたって」
「うそだろ……本格的すぎる……」
慎也が目を丸くする。そのまま口を開いて、余計な一言を放った。
「でもさ、免許もないのにレースって……なんか、不良のやることっぽくない?」
結衣が、あきれたように肩をすくめた。
「それ、あなたの意見?」
「いや、親が言ってたからさ。普通、車って18歳からだろ? 免許とか——」
「……いつの時代よ」
結衣はサンドイッチを置いた。目を細めて慎也を見つめる。
「知りもしないでイメージだけで決めつけるの、やめた方がいいよ。今“競争女子”って注目されてるし、女子だけのレース『KYOJO CUP』も盛り上がってるんだって」
「きょーじょ……?」
「きょう、そう、じょし。略してKYOJO。女の子だけのフォーミュラレース。陽菜はそこに出て、日曜のレースで3位だったの。大人も出てるレースでよ」
「マジで……? それスゲーな」
「明日、陽菜とお昼一緒に食べる約束してるから、よかったらあなたも来る?」
慎也はしばらく考えてから、うなずいた。
「……気になるし、行く」
翌日、火曜日の昼休み。
科学準備室のドアが元気よく開いた。
「やっほー!お邪魔しまーす!」
陽菜だった。トレードマークの高めのポニーテールがゆれている。
「わっ、弁当すご……!」
慎也が思わず声を漏らした。
陽菜が机に並べたお弁当は、カラフルな野菜、ササミのソテー、雑穀米、ゆで卵、豆とナッツ入りのサラダ……栄養バランスの鬼。
「お母さんが管理栄養士でさー。レースの日の次の日は、リカバリーメニューって決まってんの」
「へぇ……プロって感じだ……」
「でしょでしょ?」
陽菜はにこにこしながら箸を構えるが、その前に口の方が動いた。
「いやー、日曜の富士のレース、ほんとに激戦でさ! 予選のとき、1コーナーでオーバーステア出てバランス崩してタイヤにフラットスポットできちゃって。フロントのイン側のキャンバーも読み違えてたからグリップ落ちてさ、ピットでエア圧調整したんだけど、セーフティーカー入ったタイミングでちょうどピットインになって、計算狂ってバースト寸前!」
慎也と結衣は目を見開いたまま、固まっていた。
「それでもラスト2ラップでP4の子がヘアピンでブレーキングミスって、あたしはスリップに入ってストレートで抜いたの! やばかったよーもう!」
「……」
「……」
陽菜がふとふたりの表情を見て、箸を止めた。
「あれ? どうしたの?」
結衣が、少し困ったように微笑む。
「……ごめんね。言葉が、わからなさすぎて……」
「えっ! あーそっかそっか! ごめんごめん、いきなり話しすぎたね!」
陽菜は笑って、少し姿勢を整える。
「じゃあさ、スリップストリームって言葉、聞いたことあるでしょ?」
慎也と結衣は同時にうなずく。
「あるけど、ちゃんとした意味は……」
「OK、じゃあ説明するね!」
陽菜の顔が一気にレースモードに変わった。
「スリップストリームっていうのはね、前を走る車の“後ろの空気の流れ”に入り込んで、空気抵抗を減らすテクニックなの。車ってすごいスピードで走ってると、正面から空気を押しのけて進むでしょ? その後ろには“空気が薄い帯”みたいなのができるんだよ」
「……空気の帯?」
「そう!その帯に後続車が入ると、空気の壁がないからスイスイ進める。だからエンジンパワーを使わなくてもスピードが上がるの。燃費もよくなるし、抜きやすくなるってわけ」
「なるほど……!」
「でね、タイヤってのも重要でさ。走ってると摩擦でめちゃくちゃ熱くなるの。でも冷えてるとグリップしないし、熱くなりすぎてもダメ。だから、タイヤの温度管理が超重要!」
「温度管理って、レース中に?」
「うん。ブレーキングやコーナーの突っ込み方で、温度の上がり方も変わる。だからドライバーは“今のコーナー攻めすぎたな”って感じたら、次はちょっとマイルドに入って、タイヤを労わるように走ったりするの」
「……そんなに考えながら運転してるんだ」
「それだけじゃないよ!車体に付いてる“ウイング”も重要なの。あれで“ダウンフォース”っていう下向きの力を作って、車を地面に押しつけるの。そうすると、タイヤのグリップが上がるからコーナーで速く走れる」
「でも、ウイングつけたら空気抵抗も増えそう……」
「そう!そこがトレードオフなの!ダウンフォースを増やすと最高速は落ちる。でもコーナーで速くなる。だからサーキットによってウイングの角度を変えるんだよ」
「……深すぎる……」
陽菜はうれしそうに続ける。
「レースって、ただ速く走るだけじゃないの。相手の性格、体力、走り方の癖——全部観察して、“ここ!”ってタイミングで仕掛けるの。まるでチェスよ」
「……駆け引きなんだね」
「そう。タイヤの寿命、燃料、天候、セーフティーカーのタイミング……全部を計算して、ベストな戦略を立てるの。科学と心理戦の融合って感じ!」
チャイムが鳴った。
「あ、やば!午後の授業行ってきまーす!」
結衣と慎也は、まだ陽菜の残した熱気に当てられたまま、ぼうっと机の上の弁当を見つめていた。
「……すごいな」
「……本当にね」
慎也がふと、首をかしげる。
「……あれ? 彼女、弁当食べてたのかな?」
結衣はくすりと笑って答えた。
「しっかり食べ終わってたわよ」
「食べる速さも“競争女子”だったな」
「……いえ、私はちゃんと噛んで食べたかが心配」
苦笑いが、静かな準備室に広がった。
アオハル放課後ラボ#26『Over Drive』 ーーー 終

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