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「省インフラ」でインフラを持続させる〜人口減少時代、日本のインフラをどう守るか〜

「省インフラ」でインフラを持続させる
〜人口減少時代、日本のインフラをどう守るか〜

はじめに
高度経済成長期、日本は道路・橋・上下水道・学校・公民館など、数え切れないほどの公共インフラを整備しました。
しかし現在、それらは一斉に老朽化を迎えています。
一方で、

  • 人口は減る

  • 税収は減る

  • 技術者も減る

という現実があります。
つまり、
「今まで通り全部維持する」ことは、もうできない時代に入ったということです。
今回の講演では、この問題をどう乗り越えるかについて、「省インフラ」という考え方が紹介されました。

① 日本で今、何が起きているのか
高度経済成長期に大量整備
1960年代〜1990年代に、

  • 道路

  • トンネル

  • 水道

  • 下水道

  • 学校

  • 公民館

  • 病院

  • 市役所

などが一気に建設されました。
現在、それらがほぼ同じ時期に寿命を迎えています。

老朽化すると何が起きる?
放置すると、

  • 建物の倒壊

  • 橋の崩落

  • トンネル天井板の落下

  • 水道管破裂

  • 下水道管破損

など、人命に関わる事故につながります。
さらに怖いのが道路陥没です。
地下の下水道管が壊れると、
土が流れ出し、
地面の下が空洞になります。
そしてある日突然、
道路が崩れ落ちます。
つまり、
インフラ老朽化は「見た目」の問題ではありません。
命に直結する問題です。

② なぜ今、一斉に問題が起きるのか
理由は単純です。
みんな同じ時代に造ったから。
例えば、
1970年代には年間約1万本もの橋が建設されました。
橋の寿命を約60年とすると、
2030年代から更新ラッシュになります。
しかも、
橋だけではありません。

  • 学校

  • 水道

  • 下水道

  • 市役所

  • 公民館

すべて同じタイミングです。
これが現在最大の問題です。

③ 財政の現実
昔より公共投資は半分
高度経済成長期
公共投資はGDPの約8〜10%
現在
約5%
つまり、
昔の半分の予算しかありません。

全部更新は不可能
当時造ったものを
全部新しくしようとしても、
予算は半分。
つまり、
単純計算でも
全部は維持できません。

国債では解決できない
「借金して直せばいい」
という意見もあります。
しかし、
公共投資を減らしてきた間も
国の借金は増え続けました。
今後さらに巨額の借金で
全部更新するのは現実的ではありません。
つまり、
使えるお金は
大きく増えない前提で考える必要があります。

④ 「省インフラ」という考え方
省インフラとは、
インフラの量を減らしながら、暮らしに必要な機能は維持する考え方です。
ポイントは、
「建物を残す」
ではなく、
「サービスを残す」
という発想です。

⑤ 公共施設は「建物」と「機能」を分ける
建物が無くても、
サービスは残せます。
例えば…
公民館

学校の空き教室

福祉センター

民間施設

オンライン

図書館

電子図書館

移動図書館

つまり、
「箱」は減らしても、
機能は維持できます。

無料施設にも大きなコスト
例えば図書館。
本を1冊貸すだけでも、
行政負担は約1,000円と言われています。
これは、

  • 建物

  • 人件費

  • 光熱費

  • 維持管理費

すべて含めた金額です。
無料に見えても、
実際は税金で支えられています。

公共施設を減らす6つの方法
① 広域化
複数自治体で共同利用

  • 病院

  • 体育館

  • 清掃施設

② ソフト化
行政が建物を持たない
民間施設を借りる

③ 集約化
施設を統合する
学校統廃合など。

④ 共用化
同じ施設を時間で使い分ける。

学校体育館

夜は地域開放

⑤ 複合化
一つの建物に
複数機能を入れる。

学校+高齢者施設
公民館+福祉センター

⑥ 間引き
利用者が少ない施設を整理する。

⑥ 土木インフラは最優先
道路

上下水道
これらは代替できません。
だから、
公共施設を減らしてでも
守る必要があります。

予防保全
壊れてから直す

壊れる前に直す
へ転換します。
小さな修繕を繰り返すことで、
寿命を延ばします。

現実
橋は5年ごとに点検されています。
しかし、
危険判定でも
修繕費不足で放置される橋が
全国にあります。
つまり、
点検できても
直せない。
これが現実です。

リスクベース管理
全部直せないので、
優先順位を付けます。
優先順位が高いもの

  • 病院へ行く道路

  • 避難路

  • 交通量が多い橋

  • 代替路が無い道路

優先順位が低いもの

  • 利用者が少ない道路

  • 代替路がある道路

こちらは
更新延期や
廃止も検討します。

除雪もランク分け
すべて同じ除雪はできません。
優先

  • 幹線道路

  • 病院

  • 学校

利用者が少ない道路は、
住民協力へ移行していきます。

水道はデータ管理へ
地下は見えません。
だから、

  • 敷設年

  • 材質

  • 地質

  • 漏水履歴

などをAIやデータで分析し、
壊れそうな場所から修繕します。

⑦ 富山市の現状
水道更新率
約0.36%
このままだと、
全部更新するのに
約526年。
耐用年数より
はるかに遅いペースです。

下水道
更新率
約1.4〜2.4%
水道よりは進んでいますが、
安心できる状況ではありません。

ネットワーク型から分散型へ
人口が少ない地域まで
長い下水道を維持するより、
地域単位で
合併処理浄化槽などへ切り替える方が
効率的になります。

サービスを届ける
建物を残すより、
サービスを移動させます。

  • 電子図書館

  • 移動図書館

  • 遠隔診療

  • オンライン授業

  • 行政手続きオンライン化

富山市のコンパクトシティ
富山市では
「串と団子」
という考え方が採用されています。
団子

生活拠点
(学校・病院・スーパー)


公共交通
(鉄道・バス・路面電車)
これで
複数の生活拠点を維持する考え方です。

小学校シミュレーション
現在
59校

将来
約28校
まで集約する試算が紹介されました。

⑧ 再編を進める3原則
① 全体計画を示す
どこを、
いつ、
どうするのかを最初に示す。

② 客観的基準を作る
例えば

  • 児童数

  • 学校規模

  • 通学時間

など。

③ 公平に運用する
声の大きい地域だけ
残すことはしない。
同じ基準を全地域へ適用する。

さらに、
廃校後は
民間利用
福祉施設
地域拠点
起業支援施設など、
次の活用まで同時に決めることが重要です。

総まとめ
日本は、
高度経済成長期に整備したインフラが
一斉に老朽化しています。
しかし、
人口・税収・技術者は減っています。
そのため、
全部を維持することはできません。
これからは、
公共施設は
建物ではなく
機能を残す。
道路や上下水道は
予防保全と優先順位で守る。
そして、
生活拠点を公共交通で結ぶ
「省インフラ型社会」への転換が必要になります。

私が感じた「講演では語られなかった視点」
今回の講演は、
「どう支出を減らすか」
という視点が中心でした。
一方で、
私はもう一つ重要な視点が必要だと感じました。
それは、
地域の収入を増やし、担い手を育てることです。
例えば、

  • 地域企業を増やし、工場や事業所のインフラ使用量を増やす

  • 地元企業の利益がインフラ維持へ循環する仕組みをつくる

  • 市民・企業による基金など、新しい地域財源を育てる

  • 民間から直接修繕工事を依頼できる仕組みを整える

  • 地元の建設会社や土木会社の事業承継・技術者育成を進める

インフラを守るためには、
「減らす」だけではなく、
地域で稼ぎ、地域で守る仕組みも同時に考えていくことが重要だと感じました。

おわりに
人口減少時代において、
「全部残す」ことは難しくなっています。
だからこそ、
何を残し、
何を変え、
どう地域で支えていくのか。
行政だけではなく、
企業・地域・市民も一緒になって考える時代に入っているのだと感じました。

⚠️私たちが向き合うべき「真の問い」

ここまで見てきた内容を踏まえると、私たちは一つの大きな問いに向き合うことになります。

ハコモノを増やし続けているのは、一体誰なのか。

少子高齢化と人口減少が進むことは、何十年も前から分かっていました。
それにもかかわらず、新たな公共施設(ハコモノ)の建設計画が進み、予算が配分されるケースがあります。

一方で、道路や橋、上下水道など、暮らしの基盤となるインフラは老朽化が進み、「維持するお金が足りない」という現実があります。

講演でも示されたように、これからの時代は「省インフラ」という考え方のもと、限られた財源の中で優先順位を付けながら、生活に必要な機能を維持していくことが求められます。

だからこそ、市民として考えたいのは、
「限られた予算が、どのような優先順位で使われているのか」
という点です。

住民の努力と行政の選択
多くの県民・市民は、

  • 税金を納め、

  • 家計を見直し、

  • 無駄を減らしながら暮らしています。

その一方で、行政の予算配分は、本当にインフラ維持という優先度に沿って行われているのでしょうか。

もし既存インフラの修繕や更新よりも、新たな公共施設や費用対効果の十分な検証が行われていない大型事業に多くの予算が配分されているのであれば、その妥当性について市民が関心を持ち、情報を確認することは重要です。

私たちが確認していきたい3つの視点
① 予算配分は適切な優先順位になっているか
「財源がない」という理由で、

  • 道路修繕

  • 橋梁補修

  • 上下水道更新

  • 住民サービス

などが縮小される一方で、他の事業には十分な予算が配分されていないでしょうか。
講演で紹介された「リスクベース・マネジメント」の考え方に沿って、危険性や必要性に応じた予算配分が行われているかを確認していくことが大切です。

② 決定プロセスは十分に説明されているか
講演では、再編を進める上で、

  • 全体計画を示すこと

  • 合理的な基準を設けること

  • 公平に運用すること

が重要だと説明されていました。
同様に、新たな公共施設や大型事業についても、

  • なぜ必要なのか

  • 他の選択肢は検討したのか

  • 将来の維持費はどう考えているのか

といった点が、市民に分かりやすく説明されているかが重要になります。

③ 地域経済へどれだけ還元されているか
インフラを守るためには、お金を使うだけではなく、そのお金が地域の中で循環することも重要です。
例えば、

  • 地元の土木会社

  • 建設会社

  • 職人

  • 技術者育成

  • 事業承継

こうした地域の担い手につながる投資になっているか。
地域の経済循環という視点からも、予算の使われ方を見ることが必要ではないでしょうか。

【結び】
講演では、「省インフラ」という考え方を通して、限られた財源の中で何を残し、何を見直していくかという方向性が示されました。
その一方で、市民としては、

「限られた税金が、どのような優先順位で使われているのか」

という点にも目を向けていく必要があります。

私たちが支払った税金は、
未来の安心な暮らしを支えるインフラの維持に使われているのでしょうか。

それとも、将来の維持費も含めた十分な検討が必要な事業へ配分されているのでしょうか。

こうした問いに対して、
市民一人ひとりが予算や計画を知り、行政と対話しながら地域の将来を考えていくことが、持続可能なまちづくりにつながっていくのではないでしょうか。


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