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【創作大賞感想】恋愛は、とてもキレイだと渡邉有に教えてもらった日

 渡邉有さんの作品の空気感が好きだ。冷静な文体で、人間の奥深くある「怖い」部分を描き、その空気感が冷たく伝わってくるのに、描写に繊細さや文学を感じてしまうからだ。

 だけどこの作品には、冷静とは遠い恋の熱を感じた。若い二人の恋の話だ。

 主人公の七瀬夏海と夏目隼人。高校生のその瞬間の生の感情、止められない思考が爆発している。

 ミステリー要素や、タイムリープを含んだ物語は、もっと二人の関係や背景を知りたいと思ってしまう。描かれている二人が、しっかり対比していて「生きること」について、ぶつけ合って惹かれあっていくからだ。

 生きている限り死なないと約束したのは、純粋な気持ちから出たものだったと思う。もしかしたら夏目は何か最初から知っていたのかも知れないとも感じた。

 希望を探していたのかも知れないとは、考え過ぎだろうか。

 普段私は、恋愛しかせずに生きているので、恋愛小説からは遠い日常なのだが、こういう小説を読むと、どうして人間は惹かれるのか、その根底にあるのは、何なのだろうかと考えてみたくなってしまう。

 夏海は、思春期に起こる、大したことではないことを、世界が狭い日常で絶望的に感じて憂鬱になる日々。それがどうしようも出来ないことだと知っているのに、生と死で揺れる。すぐにそこにたどり着くのは、まだ考える術が未熟な思春期をうまく表現している。

 そこに現れるのが、生と死を自分のカラダの病気で、隣に普段から居るように感じて生きているのに、その怖さより、生きることに希望すら感じるように生きている夏目。すごく魅力的な人間だ。ここまで、俯瞰して生きることなど出来ないと、普通なら思ってしまうのだが、夏海が惹かれていく様子を読んでいくと、どんどん夏目は、そういう人間だと納得出来て、好きになっていってしまう。

 女性がどうやって恋に落ちていくのかの説明書みたいに感じて、ドキドキ出来る。

 二人は、反対側にいるようでいて、実は人間は円なのではないかと思う。

 本音をぶつけることであっという間に反対側に居る人間同士が惹かれてしまうのも、そうだよな。そりゃ、惹かれるよな。と納得出来てしまう。現実と虚構はやっぱり表裏一体なのかも知れない。

 本当の感情を精一杯ぶつけて、それでもそれを受け入れられたと感じると、心の距離が近くなるのは、本当なのだと思った。

 それを否定する言葉が浮かばない。

 物語に存在する、多くの謎が未解決で、知りたい。そう思うくらいに感情の交差が楽しいので、もっと欲しくなってしまう。ずっとこの感情です。

 一気読みして、ここで終わるのか。続きが読みたいと願ってしまった。この物語、この二人の関係をもっと知りたい。二人の結末を知りたい。

 そう、思わせる力のある作品は、人にどんどん読まれていくべきだと思う。それが届いて、もっと大きくなるかも知れない。そういうことを願いたくなりました。

 恋愛小説を、今年から好きになりそうな自分がいます。

  

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