【創作大賞感想】猿荻レオンを味わえた。

ご馳走さまでした。毎朝一ヶ月かけて、この小説を堪能していた。猿荻レオンの今年の小説を、私は本気で味わえた。毎朝、今日の展開はどうなるのかと、それが当たり前のように読んでいた。
読み手を習慣化させる。毎日小説を読ませる。これをストレスなく読ませるように費やした推敲の時間を考えると、読み手の私は単純に「楽しませてくれてありがとう」とは言いたくなくなる。
次の日に楽しみを持たせつつ、毎朝を終えるように出来るのは、とても簡単に出来ることでない。きっと、この作品を作者である猿荻レオンが本気で、読み手が一番美味しく、楽しく、味わえる方法で提示してくれているのだろうと感じたので、思考を止めてその通りに思いっきり味わうことにした。
最終回を終え、読み終えたすぐあとに感想を書こうかと思っていたのだが、襲ってきていた満足感を、どうせならしっかりと味わい、きちんと消化してから、冷静に感想を書きたくなった。
熱いままだと、単調に面白いで終わってしまいそうだったからだ。
私はもともと、猿荻レオンの食に対する表現や、フードエッセイが好きである。美味しそうだなと思うのはもちろんなのだが、それだけではない。題材にする食事や食材に、どこか物語があるように表現してくれるのが猿荻レオンだと思っている。
その調理の風景をふんだんに盛り込み、小説という物語を創作したのだからこそ、私は毎日味わえて満足だったのだと思っている。リアルに描かれる食事、人間関係、恋愛模様が混ざり合い、料理に華を添える。これだけでもすでに充分に楽しいのだが、本気で猿荻レオンが取り組んだこの作品には、さらにファンタジーの要素が隠し味として入っていた。
どこか不思議。不思議だけどすぐに受け入れてしまった。不思議な世界だとは理解しているのだが、このみずたま亭で起こる一部始終が、料理の現実描写と相対して、ファンタジーな世界を当たり前に受け入れてしまっている自分が出てくる。世界観がハッキリ出ている。だから入り込める。
ファンタジーの要素に「和」を感じるのも好きだ。神社や、地域コミュニティを感じさせてくれて、昔あったはずの日常を気付かせてくれる。
物語という料理を、贅沢なコースで味わえた気分になる。
主人公の香菜が、食材の声を聞けるというのも、読み手が嬉しくなる仕掛けの一つだと思う。
恋愛の機微に一喜一憂しながら、料理をする。葛藤や不安を覗かせながらも、人に喜びを与えることをしている。
朝、読んでいて毎日楽しかった。
日常を描いているのに、日常を忘れさせてくれる物語で、覗ける毎日を味わえた。
猿荻レオンの物語を堪能していた。
クライマックスに向かう大円団には、現実とファンタジーの世界も同じ世界線であり、こういう世界があっても良いじゃないかと思わせてくれる。
人と人との繋がりは、生と死の境界線を越えて、全員に備わっていて、見ようとしないだけなのだと教えてくれた気がする。
毎日展開されるドラマに、舌鼓をさせていただき、喜怒哀楽を味わえた。猿荻レオンの狙い通りに操られている気がしたが、居心地が良かった。
時間をかけてから感想を書いているのだが、すぐにこうして思い出せるのは、しっかりと味わったのだなと感じている。
人物相関図や、人気投票など、どこまでもこの作品を作者自身が、読み手にしっかりと楽しんで貰おうとしている。
これが、猿荻レオンの物語による料理そのものなのだと思います。
ファンタジー部分に触れるのはネタバレ的な要素になってしまうので、隠し味としといて、これから読む人にも存分に味わって欲しい。不思議な世界を、決して不思議にさせない技術で読めるスゴさを感じて欲しいです。
主人公である香菜を心の機微が繊細な女性であることを描いていて、悩む姿を隠しながらも、日常を営む姿に、主人公としての魅力を感じてしまう。
料理描写に関しては、ただ食べてみたくなるの一言で終えてしまえる。それがすごい。多くを語らなくてすむ。
今年も読めて、嬉しかった。日々の創作に対する姿勢もXなどで、よく読む。真っ直ぐに自分を見つめて、少しでも面白くしようと悩んでいる。その欲求をきちんと小説で、しかも演出の仕方まで考えて昇華させてくれるのだから、本気で向き合っているのだと思います。
書き手の不安は、あるかもしれませんが、読み手には、猿荻レオンの小説だと最初から安心感を与えているということを伝えたいです。このまま、この作品がどんどん美味しくなって色々な人に味わって貰えることを願います。
今年も、味わえて満足でした。
冬ドラもお願いいたします。
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