吉行淳之介に出会った文学中年は、時の残酷さを知る生と性
主人公はセンチメンタルな中年で頭の中はエロばかりと、僕は他人に思えず、憎めない人物像だった。
これは、私の読書友達。大工こと卍丸くんの最近の記事からの引用である。
卍丸くんは、吉行淳之介の「砂の上の植物群」を読み終え、そう感じた事を記していた。
彼はまだ20代後半だ。
彼の感想が、私の心に囁いたもの。
おいおい待ってくれよ。君はアラサーでこれを感じているじゃないか。彼が今の私の年齢になるまで後10年以上もある。中年はこれからじゃないか。
もう一度載せる。
主人公はセンチメンタルな中年で頭の中はエロばかりと、僕は他人に思えず、憎めない人物像だった。
どういうことだかわかりますか?
羨ましいよ。これをイメージして中年を迎える心構えが出来るということだ。そしたら最強中年だよ。やられたよ。彼のこれからに希望の「性」しか感じられないのだ。
対して私は、現役の中年なのだ。
間に合わないよ。私の中の老いに向かいつつある全部の細胞が告げている。全部の予約中の本や、読んでいる途中の本を放り投げ、現役のセンチメンタルな中年で、頭の中はエロばかりの他人ではない、この私が未だ読んでいない事実を突き付けられたのだ。
私は思慮した。
━━━━━これが厄年かと。
とにかく、読む。読まずにいられない。と、こんなに強く感じたのは、読書人生初めてで、そしてこんなに読む前から手遅れだろうと半ば敗北を意識しながら読むのも初めてであった。
私は、全集から「暗室」と「砂の上の植物群」をあっという間に読んだ。とにかく、急ぎたかった。それが私の中のエロにどんな化学反応を起こすか知りたかった。
吉行淳之介の味わい方は、性に貪欲であるほど楽しめる。それは、性的嗜好の話しや実際の性欲の相関ではなく、性を表現として楽しむのに読んでいる時間だけでも、自分の欲を解放して読むのを強く薦める。
そうするとあらゆる意味で全身で楽しめるはずだ。
先日、ちょうど魅力的な女性に教わった言葉がある。それは私が、
女性が好きで、すぐ寄り道しそうでどうしようもないけどこのまま頑張ります。
と、ろくでもない宣誓をした返事だった。
「それは、しょうがないと思います。生は性ですから」
と、私の根源に突き刺さるような言葉をくれたのだが。
吉行淳之介を心に入れた私は、それを踏まえて今ならこう宣誓する。
「女性」を「女生」だと思うことにしているんです。僕は生まれた所に帰るだけなので、それは、決して寄り道ではありません。
と、好きを言い換える事が出来るくらいだ。
露骨な描写から女性蔑視との意見もあったようだが、女性好き、人間好きじゃないと絶対書けない文章である。
確かに官能要素が強い部分もある、それは谷崎潤一郎が使うような女性への美という表現の追求より、粗暴な感じは否めない。だけど性への一方的な美しさも感じる。
「暗室」を調べた時に、谷崎潤一郎賞の受賞を知る。
なるほど。同じ感覚を感じたのはそういう事かと思った。
そしてこれはおそらく推察だが、
吉行淳之介は、相当モテたと思う。
駆け引きや、女心の機微の描写がほとんど感じられず、男性の一方的な力技が多いのである。
常日頃、女性を口説くための表現が欲しいために、女性にメッセージを送るのに全然相手にされない私は、悔しくてなぜだか目から天使の雫が落ちて来て、感情移入が吉行淳之介に出来ないのである。
これは、一つの段階の成功の喜びの描写が圧倒的にないのだ。大体、女性と近くなるには、少し仲良くなっては心の着物を一枚づつ剥がし、そっとそっと愛でながら交渉していくはずだ。一つ脱がせば3日は宴会が出来る。
そして、私が気になる女性は得てして最後の帯が長い。グルグル引っ張っても長い。
下手すれば帯の下に帯みたいな女性にも遭遇する。それでも愛でる。
簡単にいくことなんてないんだ‼️
いつの間にか心で叫んでいた。
そんな交渉は交渉のうちにも書くにも値しないんだ。と言われているみたいだ。それを否定されたら私はと思うと自然と美しく雫を落とすのだ。
これは、吉行淳之介がほとんど口説く事に重点を置いてなく、ほぼ成功するからであると私は推察する。
主人公どんだけ女性と寝るのよ‼️
と、だんだん怒りにも似る感情が押し寄せて来ます。
卍丸くんは、こうも言っています。
レトロなエロが芸術にまで高められていて良かったです。
私は、中年真っ只中ですが主人公のように、エロに芸術を求めるような事を出来ずに終わる気がしてなりません。
だけど、吉行淳之介が描く表現は、明るいものより、どこか暗い思想を深いところにイメージさせてくれます。
彼の言葉のこだわりが少し分かる文面を残しておきます。「体」という漢字についてです。
私の作品には女体が出ることが多く、また男性の肉体が出る場合はしばしば病んでいたり、病んだ心を包んでいる。どうしても「軀」でなくては、気持が許せない
こういうこと言うとそりゃカッコいいよ。
もっと早く出会えば良かった。吉行淳之介。
なんのはなしですか
そして、最後になりますが、
レトロなエロってなんなんだ‼️私にしたらどれも味わえるならば新鮮だ‼️
これを卍丸くんと20代の性年男女に贈りたいと思います。
私事になりますが、今日私の軀は一日ベッドの上でした。それこそ病気以外だといつぶりか分かりません。
文学中年は今、再びの可愛いぎっくり腰に見舞われ、快楽と変換したいほどの痛さで歩けもせず、吉行淳之介を読み、さらに軀が悶々としております。
━━━━━これが厄年かと。
そして、初めて訪れた整形外科の受付女性がすごくキレイで、指先がしなやかに動く。忙しいのに言葉に刺がなく優しくゆっくり喋る。
通うのも悪くない。
弱っている私は、早くも吉行淳之介になりたい。私は交渉要らず結果だけでもいいからお願いと思いつつある。
━━━━━これが躍年かと。
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