【創作大賞感想】時雨さんの世界は、自然と同じ移り変わりを楽しむもの
夢十夜のようなもの
一章 希望
二章 ノスタルジィ
三章 死と別れ
四章 再生、つながり
と、章で別れてはいるが、ショートショートの連作だ。作者時雨さんが描いている世界観は、ほんとに夢十夜のようなものなのだと思う。そこに必要なのは、結末ではなく不思議な違和感の連続なのだと感じる。
終始文章の奥にある世界を読み手の想像に委ねられる。それが、とても面白い。この物語は、どこに思考を持っていけば良いのかと考えたくなる。
ショートショートであるから、物語単体での感想は書きにくい。もちろん一話は短い。どこから読んでも平気だというのは、作者本人も書いて紹介している通り間違いないと思う。
それなのに、最初から読み始めると、想像力のバトンを渡されて、読み手である私も、この物語を一緒にゴールまで走って届けてくれと言われているように感じる。受け渡されたものが何かは分からないのに、次へ次へと一緒に走りたくなる。
描ききらない余白で、思いっきり遊んでいる気がするが、それを投稿して委ねられる凄さを感じてしまう。どの作品にも共通しているので、なおさら連続して読むと、どこか物語同士の繋がりが存在する、一つの大きな物語のようにも感じてくる。
語り手が話しかけてくるように展開する物語の時は、その冒頭から数行で違和感の世界へ連れ込まれてしまう。没入出来る。作者の中では、きちんと物語の全体像や正解を、本当は用意している気がする。それを描かないことで、あえて遊んでいるのではないだろうか。
普段、結末を読むことに慣れている私は、この話は、何を描いているのだと考え込まされてしまう。言葉一つの奥行きを考えてしまう。そして、作者の誘導の通りに不思議な世界から出られなくなる。
表現の自由を知る。
説明を極端に省いているこの世界観は、読み手にここまで想像させるのかと、新しい楽しみ方を知った気分になる。この連作がどこまで続くのか、ずっと続いて欲しい気がしてくる。
これは、なんだったのだろう。と表現で問いかけさせることが出来るのは、少し羨ましい。私に、その勇気が少しあればもっと違った世界が描けるのかも知れない。
珈琲を片手に、ゆっくりと作者は今日は何を考えている?とページをつい開きたくなってしまう。そういう読書が出来る時間が、とても好きだったと再認識出来た日になった。
本という形で読むことが可能ならば、また世界が変化するのかも知れない。ページを捲る時間も、不思議な違和感を助長させてくれそうだ。そして、一人で少しの時間を毎日使い、好きなだけ読み進め、これはなんなんだ。と感じる時間を味わいたい。そう思わせるには、充分な作者の意図する魅力的な世界が広がっている気がしている。
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