その友人は「じゃ行くよ」と言った。
友人に、ポップと呼ばれる人間がいる。noteの世界には存在しないのに、私を通してポップを知っている人が多い。ポップは、一つも私の記事を読んでいない。長文を読めないからだ。
私とポップとは、ほぼ人生の半分以上の時間を共有している。私は、自分たちの生きた証を面白おかしく記すために表現を続けている。そして、彼の生きた証を記すために、度々彼の記事を書いている。
この日、ポップの仕事を応援しに行っていた。今時、応援しに来てくれと言われて本当に応援するだけの仕事が存在するとは知らなかったが、私の渾身の七色の声援を止め、私は久しぶりに彼に尋ねた。
「最近、君のお気に入りの夜の蝶はキレイな羽をまだ君に魅せてくれているかい?」
ポップは、私のその質問を待っていたかのように作業を止めた。と、同時に私も声援を送るのを止めた。私は、応援しに仕事に言っているので、精一杯声はかけていた。
「まず、空調服のファンを止めよう。そして、俺の声がよく届くようにスタンバイしてくれ」
その場所は、何か分からない大きな機械が大音響でウィンウィン音を鳴らしている場所であり、声を届かせるのにもなかなか苦労する場所だった。言われるがままに私は空調服の電源をオフにした。機械はウィンウィンといまだに大きな音を鳴らしている。
「これ、機械の音だな。外に出よう」
この工場に鳴り響くウィンウィンの大音響が、空調服の音だと思っているところがポップの可愛いところである。そして、ポップ自身は空調服の電源を落としてはいない。
空調服の電源を落とした私だけが、汗を一気に流しはじめる中、私達は外に出て日陰で腰をおろし珈琲を飲み始めた。
当然、私達はブラック珈琲だ。
「まだ、音が残ってるな。俺の敏感な耳の中で鳴り響いてる」
ポップは、残響が敏感な耳の中で鳴り響いてることを私に告げた。
「それは君の空調服の音だろ」
ポップは、私の敏感な指摘には動じずに、パワー全開の空調服の電源を落とした。静かになった日陰で、自分の空調服の音だったことは鈍感に無かったことになり、思いを話し始めた。
「この間、お店に行ったんだ。そこで、お気に入りの彼女は、俺に洋服の写真を見せてきたんだ」
私は、この後の展開を予想はしていたが、ゆっくりと相槌を打ち、話の続きを促した。
「俺は、彼女がお店で一番輝くには、いつも着ているその服は飽きたと言ったんだ。皆がそう思っていると。そして、だから俺が代表してプレゼントするから、アプリで送金をするよ。そう言ったんだ」
令和の足長おじさんがここにいた。確かに、自分のお気に入りの彼女が今以上にキレイになるのはとても好ましいことだ。そして、それでポップが喜ぶのなら私にとっても嬉しいことになる。私は、ポップのその見返りなどあり得ないのに、溢れてしまう優しさに感動して頷いていた。
「それで、君は彼女にその服をプレゼントしてあげたのかい?」
私は、聞いた。
「プレゼントは、したと思う」
普段から曖昧な世界を生きているポップにしても、さらに何とも曖昧な返答だった。
「それは、どういう意味なんだい?」
私は、優しく尋ねることにした。これは、少し面白いことだと期待した。
「そのアプリを持っていないから、現金でちょうだいって言われたんだ。さすがに現金をお店で渡すのは恥ずかしくて悩んだ」
「なるほど。それは正しい悩み方の一つだ」
「そして、会計の時間になったんだ。楽しい時間なんてあっという間なんだ。まるで魔法だよ。会計してお釣りを貰ったらさ、さらに不思議な魔法が起きたんだ。その日の閉店間際の最後の魔法だったのかも知れない。お釣りの金額が、なぜだかその洋服が、ちょうど買える金額だったんだ。これこそ運命だと思ったよ。だから、俺は彼女にお釣りをプレゼントしたんだ」
運命とは、どこに転がっているのか分からないものだなと私は感じていた。例えお釣りを操作されていたとしても、そんなことは微塵も感じさせない男気を魅せるポップに感動していた。そして、そんな魔法をかけてくれる魔法使いがいるのなら、私も会ってみたいと思っていた。
「で、彼女は洋服を買ったんだ」
「買ったのか。で、まだ見てないのか?」
この流れのどこに、彼女が洋服を買っているのか、いないのかの不確定要素があるのか、私には判断は出来なかった。
「ああ。それから、二回ほどお店に顔を出したさ。もちろんその洋服を着ている期待はしていたが、そんなことは全く気にもしていないって装いながらね。でも、会話の手段としては、どうしてもその会話が出てきてしまう。俺も魔法使いだからさ。魔法をかけたくなる。それは、しょうがないことだからね。で、彼女は俺の質問にこう答えたんだ」
男心のなかに、繊細な乙女心を忍ばせるポップを、私は嫌いではなかった。
「洋服の上は、ピッタリだったんだけど、下がブカブカでお母さんに今、詰めて貰ってるってね」
私は、ポップのお気に入りの彼女は、本当は購入などせず、嘘ではないかとそのはなしを疑ったが、それは口に出さずに、ポップの次の言葉を待っていた。
「彼女さ。よっぽどスタイル良いんだなって嬉しくなったよ。そんなピッタリに仕立てようと準備してくれてるなんてね。少しでも買ってないのではと疑った自分を凄く恥じたよ。だから、まだ見れてないんだ」
「焦らされるのって悪くないよな。きっと一回詰めたんだけど、さらにスタイル良くなって、もう一度調整してるのさ」
私は、ポップにそう告げた。疑問の本当の答えなど延長の延長くらいで分かる方が幸せだ。きっとお気に入りの彼女は、いつか着て現れる。それまで、まだ着てない、まだ見てない、フフフと、私達で会話を弾ませる魔法の時間をプレゼントしてくれてるのだろう。私もポップのお気に入りの彼女に感謝をすることにして、そっと話題を変えた。
「なぁ、私も君に伝えたいことがあるんだ。7月13日に渋谷で、電子書籍の出版記念パーティーやるんだよ。全部で50人位かな」
私は、私に起きたこの半年の出来事を話した。
「じゃ、それ行くよ」
ポップは、「焦らされるのって悪くないよな」と言った私の言葉の直後にも関わらず、何も焦らさずに行くよと私に告げた。
最高だ。
「お前は、全員知っている。俺は、全員知らない。そんな面白いことはない」
こういう時に、同じ感覚を持つ友人がいることを幸せに思う。多くの言葉を言わずとも、私の節目には必ず立ち会ってくれる。
私たちは、自分達なりのエンターテイメント人生を全うすると、高校時代から約束をしている。そして、誰かが何かを起こした時は全力で応援すると決めている。私は、ポップを二十代前半で日本縦断企画に巻き込み、KONISHIKIの元へと一緒に連れて行き、一緒にKONISHIKIの息子と呼ばれるようになり、地元伊勢原市で色んな仲間を巻き込み、イベントを起こし、一緒に企画したりして、同じ濃い時間を過ごしてきた。
そして現在は、K.D.C(小錦・ドッキリ・クラブ)というポップが代表で私がイケメンという二人だけの団体において、スベり倒して来た人生だから、いつかスベらない遊具を寄付しようと話して活動している。
何かを起こすことは楽しいが、楽しい時間は一瞬で終わることを知っている。
だから、お互いの人生の節目には、必ず何も言わずに、すぐ参加表明してきて共に証人となることで生きている。私は、このアホが大好きである。
「じゃ、俺のネームプレートには、なるべく女性とお話ししたいです。と、書いといてくれない?」
と、爽やかに伝えてきた。その気持ちはよく分かる。私だってそうしたいくらいだ。たった三時間しかないからだ。全力で楽しむべきだ。
「わかった。存分に楽しんでくれ」
と、心から伝えた。
なんのはなしですか
私たちは、再び空調服をパワー全開にして、工場に向かい歩き始め、ウィンウィンwin-winと盛大に音を鳴り響かせた。
「それと、もう一つ。ラジオの収録が谷英美さんという方からの紹介で繋がってな。6月29日に川越であるんだ。ON AIR予定は決まっていないから、きっとお蔵入りになるんだろうけど、毎週月曜日の22時からの番組で、活躍しているミュージシャン、画家、映画監督、俳優、作家、脚本家がゲストとして呼ばれる番組なんだ。私は、何枠で呼ばれたのだと思う?」

よろしくお願いいたします。
「遅咲きの俳優だな。待ってたよ。おめでとう」
私は、俳優枠として、出演する覚悟を決めた。
13日には、ポップも参戦します。あと二人で定員です。皆さんと楽しめるのを、本当に心から感謝いたします。
真面目な方↓
はしゃぐ方↓
楽しみ。

過去のポップのはなし↓
有料ですが、小錦と私達のはなし。二十代から現在までの自分達の原点↓↓
セイセイは、ほぼほぼポップ↓↓↓
というワケで、本日月曜日から金曜日。四十通目の裏門開門します。
そして、その次、四十一通目は、創作大賞が大詰めなので、目一杯、感想を書いて楽しみたいので、7月21日からの第四週目のみにします。
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